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Bear(クマ)〔a[rktoV

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ケルト〕 ケルトの世界では、クマは、〈戦士階級〉のエンブレム、またはシンボルである。その名詞(共通のケルト話語〈artos〉、アイルランド語〈art〉、ウェールズ語〈arth〉、ブルトン語〈arzh〉)は、神話の君主アーサー王(〈アルトリス〉)の名やアイルランド語のMathgen(「クマから生まれたmatugenos)の人名に見られる。対照的に、祭司階級のシンボルであるイノシシと対立する。ウェールズの『キルフーフとオルウェンの物語』で、アーサー王は、トゥルフ・トルイスとその子供たちを追放する。ところで、この動物は、白イノシシであり、(9日9晩の)長く続く戦いは、「教会と国家」の争いを表現する。しかしながら、アイルランドの『トウイレンの子供の 死』の物語では、争いは逆である。そこでは、王の領地を荒らすのは、もはや祭司のイノシシではなく、ドルイド僧のブタに変身して、ルフ神の父親、キアンを暗殺する戦士階級を代表する。ガリアには、女神アルテイオ(ベルンでは、その名は、いつもクマの名だが)がいて、象徴的には、戦士階級の〈女性的性格〉を一層よく示している。ウェールズ人が、「アーサー王の戦車」〈カルビド・アルスイル〉と名づける大熊座と小熊座の極の象徴的意味のある星座を注目することもできる(GUES、177-183;CELT、9、331-332)。

対立〕 インドで、クシャトリヤ(王族)が、ブラーフマナ(僧職)に対立するように、ケルト人にとって、クマは、イノシシに対立するか、あるいは結びつく。イノシシの〈陽〉に比べて、相対的に、〈陰〉である相のため、実際、クマには、頻繁に女性に関連があったことの説明がつく。

日本・アイヌ民族〕 世界のもう1つの果てである、日本のアイヌ民族では、クマが祖先である。アイヌ民族(日本の北部、北海道に住む古くからの人種グループ)は、クマが〈の神〉であり、あらゆるものの中で、至上だと考える。12月にクマ祭りを行う(この祭りをアイヌは、「カムイ・イオマンテ」と呼ぶ)。そのとき、神は、地上にやって来て、人間に迎えられる。彼らにさまざまな贈り物をして、神は、自分の世界へ帰る。

中国〕 反対に、中国では、クマは、男性のシンボルであり、男の子の誕生を予告し、〈陽〉の表現である。クマは、自分のすみかのと関係があり、ヘビ(水に対応する〈陰〉)と正反対である。世界の組織者である大南は職務を果たしているとき、クマの姿をしていた。この姿は、シンボルを本当に反転したものではなく、せいぜい、雄のクマを雌のクマに相対的に対置させたことを表す。中国語の〈王〉は、2つの権力を合わせ持つ。宇宙の建築家の務めは、〈クシャトリヤ(王族)〉の権力に属するからである。

インド〕 クマ(リクシヤ)には、ヨーギニー(ヨーガ行者)のリトサマーダーが乗る動物であることが付け加えられる。

イスラム〕 イスラムの秘教主義では、クマは、時折、卑しい不快な動物とされている(BELT、CORT、GRAD、GRAR、GUES、MALA)。

〕 シベリアとアラスカでは、クマは、冬とともに消え、春に再び現れるので、と同一視される。クマが、〈植物の周期〉とつながりがあり、それも、に支配される。

先祖〕 他の場所では、クマは、人類の先祖と考えられる。「なぜなら、人間は、と似た生を持ち、実体そのものが、生きた現実の球体の魔力だけで造られたに違いなかったからである」(ELIT)。カナダのアルゴンキン族は、クマを「おじいさん」と呼ぶ(MULR、229)。彼らの信仰から、クマに育てられ、自分を誘拐した者と夫婦のように暮らした女性の神話が生まれる。それは本当らしく、非常に広まっている。「シベリアの北東部のコリヤーク族、ギリヤーク族、トリンギット族、トンガ族、ハイダ族にとって、旧石器時代の儀式で重要な役割を演じたように、クマは、秘儀伝授の儀式に供せられる。(カリフオルニア南部の)インディアンのポモ族の場合には、志願者は、ハイイログマから秘儀伝授を受ける。ハイイログマは、彼らを殺し、爪で、彼らの背中に穴を開ける」(ELIT、158)。

中国・碑文〕 古代中国で、L・C・ホプキンスは、商代の碑文と周代初期の他の碑文に、「クマの仮面と皮を身につけたシャーマンの踊り手」を見つけたと信じている(ELIC、397により引用)。

ヨーロッパ・暗さ〕 ヨーロッパでは、クマの不思議な息吹は、ほら穴から出てくる。それは暗さと闇の表現である。錬金術では、物質の原初の状態である果さに対応する。禁忌と関連がある暗さと不可視が、「秘儀伝授者」としてのクマの役割を強める。

ギリシア・神話〕 ギリシア神話では、クマは、残酷な祭儀の女神アルテミスと一緒である。クマは、女神がしばしば現れるときの姿である。の動物は、の神話と結びついた論理体系の2つの面の1つを具現する。クマは、怪物か生贄、供犠者が犠牲者になりうる。この意味で、クマは、野ウサギと対立する。野ウサギは、この神話の中の怪物のように、残酷な供犠者の典型的な相を表す。

精神分析〕 そこで、ユングの精神分析に基づく解釈が生まれる。の祭司全員と同じく、クマは、本能と関係がある。ユングは、力を得たクマを無意識の危険な相のシンボルと考える。

北米・地下〕 プェプロ・インディアンの地下の神殿(キヴァ)には、「クマ」という名の儀式の家があり、この動物は、地下の力と結びついている(H・レーマン)。

シベリア〕 シベリアのヤクート族にとって、クマは、すべてを理解して、「すべてを覚えていて、何も忘れない」。アルタイのタタール族は、クマが「大地の仲介で理解すると信じ、ソヨート族は、「大地はクマの耳である」ろいう。クマのことを表現するのに、シベリアの大部分の狩猟民族は、「年寄り、黒い老人、森の王」のような慣用的な名称(HARA、281以下)や、「おじいさん、大伯父、おばあさん」などの親族関係の用語をかなり頻繁に使う。足や爪や歯などの身体の部分は、魔術で保護するために用いられる。ツングース族、ショール族やミヌシンスクのタタール族では、家やテントの戸口に釘で打ちつけたクマの足は、悪霊を遠ざける。ヤクート族では、揺り籠に置いた足は、赤ん坊を守る。テレウート族にとって、戸口の精霊は、クマの皮を着て現れる。その爪には、治療する力がある。ショール族にとって、家畜の下痢を治し、アルタイのタタール族にとって、頭痛を予防する。要するに、アルタイの多くの民族は、クマを誓いに立ち会う証人にする。ヤクート族は、クマの頭蓋骨の上に座って誓う。ツングース族は、「もし、私が罪を犯したなら、クマが、私をむさぼり食いますように」、などといいながら、毛皮をかじる。「夜がとどまる小屋の反対側に、クマはいるが、その現世の知識は、医学の知識と同じく、大きい」(ALEC、44)。

 クマ狩り全体に関して、シベリアや北米の狩猟民、またラップ人の場合には、女性は、非常に厳しく、似たような禁忌にほとんど常に従う。ゴリド族では、女性には、クマの顔を見る権利さえない(HARA、286)。ラップ人では、クマの足跡を消すことは、女性には禁じられている。トムソン川の岸辺のインディアンは、シベリアの極北と同様に、クマの皮を掛けた戸口を通って、家屋やテントに入るようなことは決してない。「それは、女性が戸口を使うからである」(同書、287)。ウノ・ハルヴァによれば、この伝承は、魔術ですべてを保護することに属する。女性は、まさに「その性の」ために、獣の精霊に襲われる危険がある。この著者は、クマ狩りから帰ってきたときのフィン族の歌を引用する。

「よく注意しなさい、哀れな女性たちよ、
あなたたちのお腹によく注意しなさい、
あなたたちの小さな子種を守りなさい!」(HARA、288)

 あらゆる巨大な獣と同じように、クマは、冥界、夜のシンボルの一部であり、地母神の内面の様子を際立たせている。アルタイの2〜3の民族が、クマを先祖とみなしたのは、非常にうまく説明がつく。「アムール川渓谷に、トラやクマを起源とする部族が、いくつか存在するが、彼らの先祖が、夢でこの獣と性的関係を持ったからである、とシュテンペルクは言及する」。このウノ・ハルヴァの指摘(HARA、322)には、あらゆる意味がある。少し以前まで、シベリアには、クマの墓地があった。

錬金術〕 錬金術の用語では、クマは、本能と進化の最初の相に対応する。その色は、第一質料の黒である。原始の力のように、力強く、荒々しく、危険で、支配できないクマは、伝統的に残酷さ、野蛮さ、荒々しさのエンブレムである。しかし、ここでシンボルの別の相が現れる。ある程度、クマは、飼い馴らせる。ダンスや曲芸をする。クマは、大好物のハチ蜜で引き寄せられる。クマが、その汁を好むミツバチの軽やかさ、そのステップを真似る女性のダンサーの軽やかさと、クマの生来の鈍重さとは、何と対照的なのだろう。結局、クマは、基本的な力を象徴し、漸進的な発展は可能だが、恐るべき退行の可能性もある。
 (『世界シンボル大事典』)


[画像出典]
Wikipedia「Brown_bear」
ギリシア語でクマを意味する"a[rktoV"は、Brown bearをさすと考えられているが、種類が多く、特定は難しい。