「女予言者」、すなわち、「月から啓示を受けた者」の意で、古代テーバイにおいて神託を告げた巫女たちの称号。父権制の神話では、マントーはテーバイの賢人テイレシアースの「娘」になった。これは、アダムの母親だったイヴがアダムの娘に逆転させられた物語からもわかるように、父権制時代の神話にあっては、母権制時代の母親を娘に置きかえるのが普通だったからである。テイレシアースにまつわる神話は、男性が、まず異性装と去勢(または、そのどちらか一方)によって仮の女性となり、その上で女たちから魔術と予言の機能を奪ったことを示していた。テイレシアースは女になり、神殿娼婦として7年間を過ごし、その結果、予言の能力を得たのだった[1]。やがて、マントーたちの中に男性の聖職者が含まれるようになり、ついには、男性の聖職者だけで構成されるに至った。マントーのように魔力を持っていた人物の霊魂は、再び人間となって生まれ変わるまで、昆虫の姿をとると考えられていたのであり、そこから、「カマキリ」praying mantisの名が生じた。ギリシア語の語根mantisは、降霊術necromancy、土占いgeomancy、夢占いoneiromancy、火占いpyromancyなどの例からもわかるように、「占いの方式」を意味していた。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)