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テイレシアース( TeiresivaV)

teiresias.jpg テーバイの見者で、両性を経験した。女神は奇跡を行い、テイレシアースを女に変えた。テイレシアースは7年間、神殿娼婦として暮らし、大いなる洞察力と予言力を獲得した。彼の神話は、女神の神官団の一員となった男たちに要求された、女装または去勢儀礼にさかのぼるかもしれない。へルメースもまた自らを擬似女性であるへルマプロディートス+ErmafrovditoV〔ヘルメース+アプロディーテー〕に変え、女装し、人工の乳房をつけて、妻アプロディーテーの神殿を管理することによって魔術をわきまえる神となった[1]

 ヒンズー教にもテイレシアースに相当する、魔術神トリシラスがいるが、トリシラスの力は、自在に男から女へと変身できる能力にもとづいていた[2]

 テイレシアースの「娘」はマントーという名であった。これは「女見者」を意味したが、実のところは、男たちがテーバイの巫女たちの職務をやっとのことで奪い取る前の巫女たちの添え名であった。


[1]Graves, G. M. 1, 73.
[2]O'Flaherty, 70.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 「テイレシアース」――というのは予言者に対する普通の呼び名なのだが――が、伝説的なギリシア史を通じていたるところにあらわれるという事実は、彼が、ゼウスからおそろしく長い生命を授かっていたということを示唆している。

 インドの南部ではいまでも、つがっているを見るのは不吉なことと考えられている。その目撃者は「女性病」(とヘーロドトスは呼んでいる)、つまり同性愛によって罰せられるというのがそのいいつたえなのだが、ギリシアの物語作家はここで女性を嘲笑するためにその話をさらに一歩おしすすめたわけである。(グレイヴズ、p.538)


[画像出典]
Samothrace Museum