「万物を与える者」を意味し、大地女神レアーの添え名。ヘーシオドスの反フェミニスト的寓話では、彼女は最初の女性として擬人化された。ヘーシオドスは、戦争、死、病、その他すべての悪を女性の責任に帰そうとしたのである[1]。
パンドーラーの容器は箱ではなくて、蜜のかめpithosであり、女神はこのかめから祝福を注ぎ与えた。このかめは、コルヌコピアイ(豊穣の角)のような子宮のシンボルで、古代では死と再生の容器として用いられた[2]。「パンドーラーのかめ」は、中世にいたって、エラスムスがpithosをpyxis(化粧道具入れ小箱)と誤訳したときから、「パンドーラーの箱」となった[3]。
ヘーシオドスは、ゼウスがパンドーラーを地上に送って、ゼウスを怒らせた人間たちに罰を与えるのだと主張している。パンドーラーは、祝福ではなく呪い、すなわち戦争、苦痛、死、病気その他すべての苦難で満ちた瓶を持っていった。ゼウスの予想どおりに、パンドーラーは好奇心からかめを開け、苦難は解き放たれて、人間の間に広がった。残酷さの総仕上げとして、ゼウスはまやかしの「希望(elpis)」をも人間に与えた。彼らが絶望のあまり、天界の父の意志によって自分たちに課せられた苦難の報酬から逃れようと、自殺をはかるのを阻止するためであった[4]。この神話の基本的な主題はイヴEveの神話においてもなじみのものである。
ヘーシオドスの物語はまた、ソロモン王の伝説にもあてはまる。王はかめの中に悪魔の群れをしまっておいた。王の死後、貪欲な人々が、かめを割って宝を取り出そうとしたが、その結果、悪魔たちを世界中に放つことになってしまった、と言う[5]。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)