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パッライナ(favllaina)

 ギリシアの「女性の霊魂」に対する添え名の1つ。パッライナの食い尽くす相はプシューケーとしても知られていた。字義的には女陰(男根を食い尽くすもの)である[1]。同じ語が夜のガにも適用された。夜のガは、プシューケーの昼の相を表す太陽を好むチョウの、神秘的な闇の姉妹である。パッライナはエロースと一体となったプシューケーであった。ギリシア・ローマ神話によれば、彼らは闇の中でのみ交合を行うととができた。プシューケーを光の中で見たときに、彼らの結婚は解消された。


[1]Lindsay, A. W., 131.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 「プシューケーの昼の相を表す太陽を好む蝶の、神秘的な闇の姉妹」すなわち蛾のことである(とバーバラ・ウォーカー)。


 ギリシア語の"phallaina"は、第一に鯨類〔あるいはマッコウクジラ〕を意味する〔Arist. HA. 489b4, 521b24, 537a31〕。そこからの連想であろう、貪欲に飲み尽くす怪物にたとえられる〔Ar. V. 35, 39〕。そして第二に、"psyche"が霊魂と同時に蝶を意味するように、"phallaina"には蛾の意味がある。
 コロポンの教訓詩人ニカンドロス〔c. 258-c. 130 BC〕は次のように歌っている —
汝、心せよ、破滅をもたらすエジプトの大地が育てるは
野獣たち、そは"phallaina"にも似て、黄昏の食事時
燈火のまわりを馳せかいて襲いかかる。
その薄膜も綿毛もみな、触るれば
ほこりか、あるはまた灰にも見ゆるところの。
 (Theriaca, 759-763)