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back.gif第4巻・第6章


Xenophon : Hellenica



第4巻






第7章



[1]
 さて、冬が過ぎると、アカイア人たちとの約束どおり、春になるとすぐ〔BC 388〕、再びアカルナイア攻撃の動員令を発令した。彼ら〔アカルナイア人たち〕は、察知して、自分たちの都市は内陸にあるゆえ、穀物を壊滅させようとする連中に攻囲されては、〔軍隊の〕包囲陣によって攻囲されるも同然だと考え、使節団をラケダイモンへ派遣して、アカイア人たちとの和平、ならびに、ラケダイモン人たちとの同盟を実現した。アカルナイアに関する一件は、かくのごとくに落着したのであった。

[2]
 そのうち、ラケダイモン人たちにとっては、アテナイ人たちやボイオティア人たちに対して出兵するのは、ラケダイモンと国境を接して背後に敵国を、それもアルゴスというすこぶる強大な都市をひかえており、安全でないと思われ、アルゴス攻撃の動員令を発令した。そこでアゲシポリスは、動員部隊を自分が嚮導することになり、供犠すると、越境の生贄も〔吉と〕現れたので、オリュムピアに赴いて、託宣を乞うて、自分がアルゴス人たちの条約を受け入れない――期限切れになる時ではなく、ラケダイモン人たちが侵入しようとする時、この時にこそ祭月〔ドリス系諸都市は、8/9月頃、アポロン・カルネイオスの祭典が祝われることになっていた〕を楯に〔休戦条約を申し出る〕であろうから〔アルゴスには先例がある(前419年)トゥキュディデス、第5巻54〕――〔受け入れない〕としたら、神法に悖るのかどうか、その神にお伺いを立てた。しかし神は、不正に楯にとられた条約なら、彼が受け入れなくても神法に悖ることはないとの徴を表した。さらに、彼はそこからすぐにデルポイにまわり、アポロン神に、かの神も条約に関して父神と同じことをよしとされるかどうか、再度おうかがいをたてた。するとこの神も同じ内容のことを答えた。

[3]
こういうわけで、アゲシポリスは軍隊をプレイウウスから――彼が神域に出向いている間に、彼によってこの地に集結させられていたから――上陸させ、ネメア経由で侵入した。対してアルゴス人たちは、阻止不可能とさとって、伝令官二人を、いつものように、花冠をかぶせ、〔神聖〕条約を楯にとって、派遣した。しかしアゲシポリスは、不正に〔条約を〕楯にとることは神々に嘉されないと答えて、条約を受け入れず、侵入し、地方でも都市でも多大な困窮と恐慌を来させたのである。

[4]
 ところが、アルゲイアで最初の夕刻、彼は夕食をとっていたが、夕食後の献酒が捧げられたとき、神が地震を起こしたもうた。そこでラケダイモン人たちは、幕僚たちをはじめとして、全員でポセイドンに対する賛歌を唱えた。そして、その他の将兵たちは、アギスも、かつて地震が起こったとき、エリスから引き上げた〔 第3巻 第2章 24節〕のだから、撤退するものと思った。ところがアゲシポリスは言った、――もしも自分が侵入しようとしているときに地震が起こったのなら、自分を阻止なさっているのだと考えたろう。しかるに、すでに侵入してしまった後なのだから、督励なさっているのだと信ずる、と。

[5]
かくして、次の日、ポセイドンに生贄を捧げたうえで、さらに領地深く嚮導した。最近、アゲシラオスがアルゴスに出兵したときのことは、――アゲシラオスはどれくらいまで城壁の方へ引率したか、どれくらいまで領土を荒らしたかを――、アゲシポリスは将兵たちから聴いて、あたかも五種競技者のように、あらゆる点で〔彼を〕はるかに凌駕せんとつとめた。

[6]
したがって、時には、櫓の上からの飛び道具攻撃を浴びながら、城壁のまわりの壕を渡り返すことさえあった。また、大多数のアルゴス人たちがラコニケ領に出払っているときに、あまりに城門近くまで接近したため、城門のところを固めていたアルゴス人たちが、ボイオティア人たちの騎兵たちが入ろうとしているのも閉め出してしまったこともあった。ラケダイモン人たちまでが城門をいっしょに通過するのではないかと恐れたためである。そのため、騎兵たちは、まるで蝙蝠のように城門の胸壁の下にくっついていなければならなかったのである。もしも、クレテ人たちが ナウプリア劫略に抜け出してしまうということが起こらなかったら、人馬ともども多くが射とめられていたことであろう。

[7]
しかし、このあと、彼が囲い地に宿営していたとき、雷が陣地に落ちた。何人かの者たちは〔雷に〕撃たれて、また何人かはショックのあまりに、死んだ。このあと、 ケルウサ山からの入口を番所のようなもので城塞化することを望んで生贄を捧げた。ところが彼に現れた卜兆(うらかた)は肝臓不全のものであった。こんなものが現れたので、軍隊を引き上げて解散したが、アルゴス人たちには多大な損害を与えた。彼らにとって予想だにできぬ仕方で侵入したからである。
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