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3 土地区画整理事業


〈事例262728)〉

 土地区画整理事業は、 土地区画整理事業法に基づき、 土地の交換分合と減歩により、 街路や公園などの都市基盤施設用地を確保するとともに、 計画的街区の造成と宅地の整形化を行うものである。 事業地域内の各土地所有者の土地は、 できるだけ従前地の位置・形状を考慮して、 再配置(=換地)される。 従前地から減歩により、 各権利者の土地面積が減少しても、 基盤整備と街区形成により、 従後地の不動産評価が増大するため、 従後も従前の資産価値が維持されることが事業の前提となっている。

 被災地の復興においては、 震災復興土地区画整理事業地区と呼ばれ、 多くの特例措置が講じられている。 その主な区域を表-1に示す。


震災復興土地区画整理事業における特例

 通常、 土地区画整理事業は、 主に基盤整備と宅地の整形化を行うもので、 換地後の建物建設については関与しない。 しかし、 被災地では、 このような特例措置を活用し、 地域の事情に応じて、 換地後の土地利用、 建物計画、 まちづくりをふまえた事業計画・換地計画が検討された。 共同化による再建を前提に、 飛び換地を行い、 短冊換地により土地を集約化しているのは、 その一例である。


2段階都市計画決定

 表1の地区おいて、 当初の都市計画決定が震災後2ヶ月という短期間で行われた理由として、 (1)住民の生活再建資金のために、 希望者の用地買収を行う、 (2)従前居住地での居住を希望する者へ事業仮設住宅の確保、 (3)1日も早い復興という3点があげられている。 3この対応に対し、 震災後の住民不在の中で、 計画決定が行われたこと、 公共施設の計画の内容や減歩率などについて、 様々な議論が出された。

 こうした状況を踏まえ、 今回の震災復興土地区画整理事業では、 平成7年3月17日の都市計画決定において、 (1)施行区域、 (2)道路や近隣公園といった骨格となる都市施設について第1段階の都市計画決定を行い、 より身近な生活道路(区画街路)や街区公園等については、 住民の要望や意見を踏まえて協議を行い、 事業計画を詰めていくなかで、 第2段階の都市計画決定を行った。 結果的には、 「2段階都市計画決定」が採用されたことになり、 一部の地区では、 第2段階の決定時に、 公共施設の計画変更も行われた。

 第1段階の都市計画決定後、 それぞれの事業地区では、 まちづくり協議会が結成され、 住民・行政・まちづくりコンサルタントの協働による、 事業内容の協議・検討がすすみ、 現在、 ほとんどの地区で事業計画の決定が進んでいる。

 また、 今回の土地区画整理事では、 換地後の再建まちづくりが事業計画の協議のなかで議論されており、 まちづくりに関する地区独自のルールを決める手法として「地区計画」を適用する地区もみられる。 このように個々の住宅再建の促進とともに、 住環境形成の誘導も図りながら、 市街地再建を進めようとしているところが注目される。


減歩と換地

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表-1 主要な震災復興土地区画整理事業区域4
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土地区画整理事業の仕組み
 減歩とは、 市街地整備に必要な道路・公園等の基盤整備用地や保留地を確保するため、 事業地域内の権利者の共同負担を原則に、 従前宅地の一部を供出するしくみである。 このとき基盤整備により、 従後の土地評価額が増進するため、 宅地面積が減少しても資産価値は減らないことが原則であるが、 既成市街地では、 土地利用が進み、 既に地価が上昇しており、 原則の維持が難しい。

 また、 換地とは、 基盤整備と街区形成後の土地に、 従前所有地の位置・形状を考慮し、 「照応の原則」に従って、 各権利者の所有地を再配置することである。

 被災地の区画整理事業地区は、 密集市街地であったところが多く、 狭小宅地に対する減歩の扱いや、 現歩率と公共施設規模、 建物再建の方法を前提とした換地の対応など、 多くの議論が積み重ねられた。

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