e-mail 版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第8A冊[71号〜75号]
通巻071号 2004.02.10発行 通巻076号  2004.10.12発行
通巻072号 2004.03.30発行 通巻077号 2004.12.07発行
通巻073号 2004.05.03発行 通巻078号 2005.01.20発行
通巻073.5号 2004.05.29発行 通巻079号 2005.03.21発行
通巻074号 2004.06.20発行 通巻080号 2005.05.24発行
通巻075号 2004.08.13発行     
※各号の最終版を一部修正して掲載しました
  ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報[071]
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2004/02/10[06-01-71]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 071号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「封を切ると」多田智満子   書肆山田田
 ◆「土方巽の舞踏世界:中谷忠雄写真集」心泉社
 ◆「(歌集)火太郎」梅内美華子 雁書館
 ◆「磁力と重力の発見(全3巻)山本義隆 みすず書房
 ◆「深淵(上・下)」大西巨人 光文社
 ◆「神も仏もありませぬ」佐野洋子 筑摩書房
 ◆「みすず 513号:読書アンケート特集」みすず書房

 ◆「Niche(ニッチ)別冊:9.11/3.20以降の世界史と日本の選択」批評社
 ◆「ならずもの国家異論」吉本隆明 光文社
   昨年の「全詩集」以来、それでなくとも多かった<吉本>本の刊行
   が加速しつつあります。売れ行きもかなりよくなっていて、12月
   刊の「異形の心的現象」が70冊弱、1月下旬に出たばかりの「なら
   ずもの国家異論」が50冊強売れてます。1昨年あたりですと1ヶ月
   で30冊、3ヶ月で40冊程度が平均でした。「現代詩手帖」をはじめ
   とする雑誌類にインタビュー記事などが掲載されることも増えてい
   ます。とくに1月上旬に出た「ニッチ別冊」は吉本氏のインタビュー
   がメインでしかも500円と安いので60冊以上売れてます。
   この〈ブーム〉をチャンスと見たらしく、突然「全集」を出すと言
   いだした出版社があって驚きましたが、これは〈ブーム〉以前から
   取り組んでいる別の出版社の「全集」企画とまともに衝突するので、
   たぶん無理なような感じです。いずれにしろ「全集」というのは、
   「埴谷雄高全集」のように、没後に出すのが本筋でしょう。いまは
   中途半端な「全集」よりも、絶版で読みにくくなっている主要な著
   作を、筑摩文庫の「ハイ・イメージ」論とか、思潮社の「母型論」、
   あるいは猫々堂の「資料集」のようなかたちで復刊してくれるほう
   が便利と思います。とくに「反核異論」の増補版が出るとよいと思
   うのですが。あのころ「吉本はボケた」とか「脳軟化症」だとか言っ
   ていた多くの人たちは、ちかごろどうしているのでしょうか?
      
 
[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「笑う吸血鬼(2)ハライソ」丸尾末広 秋田書店
 ◆「栞と紙魚子 何かが街にやってくる」諸星大二郎 朝日ソノラマ
 ◆「山之口貘 沖縄随筆集」平凡社
 ◆「京都人の秘かな愉しみ」入江敦彦 大和書房 ※入荷済み
 ◆「香月泰男 一瞬一生の画業」小学館
 ◆「人生とは何か」吉本隆明 弓立社
 ◆「別冊文藝:吉本隆明」河出書房
 ◆「日本近世の起源」 渡辺京二 弓立社

 
[#03] 「2003年の出版社別売上げ冊数TOP10」その他

  1 [01](01)岩波書店 ↓
  2 [02](02)筑摩書房 ↓
  3 [03](03)講談社 ↓
  4 [05](05)新潮社 →
  5 [04](07)小沢書店 ↓
  6 [07](06)平凡社 ↓
  7 [09](09)河出書房新社 ↑
  8 [08](08)中央公論新社 →
  9 [06](04)ペヨトル工房 ↓
  10 [13](10)小学館 ↓

   ※[ ]内は2002年の順位
   ※( )内は2001年の順位
   ※↑は前年比増加、↓同減少、→同ほぼ横ばい

   前年10位だった京都書院が小学館と入れ替わった以外は大きな変動
   はありません。小沢書店は倒産から3年が過ぎ、いよいよ売れ筋の
   在庫が切れつつあるので落ちつつあります。ペヨトル工房も在庫切
   れが増えていますが、昨年途中から他店の過剰在庫が回ってくるよ
   うになって少し回復傾向です。ここにはパラボリカ発売の「夜想復
   刊号」と「金子国義富士見ロマン文庫コレクション」が含まれてい
   ませんが、それらを加えると前年並みかそれ以上の成績だったはず
   です。小沢やペヨトル並に売れる「消えた出版社」がなかなか現れ
   ないのが残念ですが、こればかりはどうしようもありません。いそ
   がしくて全部の集計が終わっていないので、11位以下は不明です。
   
   なお前号でもっとも売れた本のTOP3を、「Yaso 復刊1号」、
   「樹が陣営25号」、「原型:斎藤史追悼号」の順と仮発表しました
   が1位と2位が間違ってました。1位「樹が陣営」105冊、2位
   「Yaso」103冊、3位「原型」68冊が正確な数字でした。忙しくてま
   だそれ以下は確定してませんが、4位は「夜想02号」で5位以下は
   〈吉本〉本がぞろぞろという感じです。
   
   いそがしくて昨年のデータ集計が進んでないと言い訳ばかりしてい
   るのも何ですから、まとまった分から少々紹介しておきますと、
   「新本特価」の売上げは冊数で17%、金額で9.7%の増加とまずは
   順調でした。しかし、仕入金額が11%の減少となっていて、やや伸
   び悩みの傾向です。社会思想社の商品が出てくるのを期待している
   のですがどこへ行ったのでしょうか。
   「ネット通販」は件数で22%増、金額も21.9%増とますます好調で
   した。今年で5年目になりますが、いまどき右肩上がりは貴重です。
   ネットの人気商品は、正確な統計はありませんが、1番が「新本特
   価」、2番が「〈吉本〉本」、3番が「ペヨトル関係」でしょう。
   
   
[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その37)

  ○昨年8月にゼスト御池から撤退されたばかりの紀伊国屋書店さんが、
   河原町三条あたりで出店予定との噂を聞きました。東京の某出版社
   の営業の人からの情報ですが、ブックファースト京都店(元・駸々
   堂京宝店)の裏あたりにテナントとして400坪程度でということ
   でした。そこでさっそくその近所の書店に聞いてみたり、休みの日
   に徘徊したりしてみましたが、それらしいとこは確認できませんで
   した。しかし、その後ある筋から、まだ公表の段階ではないものの、
   たしかにそのような予定があるらしいと教えてもらいました。建築
   中の某ビルに来春出店予定なのだそうです。しかしゼストよりはは
   るかに人通りの多い場所とはいえ、1000坪ならともかく400
   坪程度だったら、ブックファーストと競合するだけのような気がし
   ます。
   
   ところで「出版ニュース2月中旬号」の青田恵さんのコラムにて、
   「京都の紀伊国屋書店御池店はレベルの高い店であった。一冊一冊
   を丁寧に選ぶという品揃えの原点を死守していた」と絶賛されてい
   るのを読みました。退屈な店だったという記憶しかないのでちょっ
   と意外でしたが、いつも言ってますように、小生は大型書店の品揃
   えについてはまったくの素人なので、専門家がそうおっしゃるのな
   らそうなのだろうというしかありません。「資格試験とその関連書
   を同じ棚に揃えたこと」をほめられても、そんな本にはまったく関
   心がないので判断不能です。紀伊国屋さんとか旭屋さんとかジュン
   ク堂さんについては、これらの大型店のおかげで、うちが棲息でき
   るスキ間が成立しているのだから、せいぜいがんばってちょうだい
   と言うのみです。
   
  ○五条通西大路西入るに建設中のショッピングセンター「ダイヤモン
   ドシティ・ハナ」が3月3日にオープンします。核店舗のジャスコ
   と140の専門店が入る店舗部分の総床面積は2万2千平米。この
   SCのサイトによりますと書店は大垣書店ですが、面積等の詳細は
   不明です。
    http://hana.diamondcity.co.jp/html/shop_all.html
   国道9号線沿いで、日販京都支店の西数100メートルのあたり、
   京都の西の郊外のはじまるところです。このあたりでは初めての大
   型店ですから、近隣の人たちには喜ばれるでしょうが、市内全域か
   らの集客はあまり期待できないでしょう。ファッション店や飲食店
   の顔ぶれがよいのかどうかはぜんぜんわかりませんが、CD店が
   JEUGIA(十字屋楽器店)ではまったく魅力がないので、このコラム
   のために一度見学に行けば、2度と行くことはなさそうです。「ま
   んだらけ」とか「ヴァージンメガストア」、あるいは「ブックオフ」
   でもあれば、たまには行く気になるはずですが。


[#05] 雑、雑、雑、…

  ○うちもやっとクロネコのメール便と契約しました。1月中旬から利
   用してますが快適です。冊子小包よりも、30〜140円安いこと
   はもちろんですが、重量が自己申告制なので、少々オーバーしてて
   も気にせずにすむのが助かります。郵便局だと1グラム越してても
   上のランクの料金を取られるので、きわどい目方の梱包をするとき
   は気を使う必要がありました。それに、局まで行かずとも毎夕引き
   取りに来てくれるし、土日も発送できるのでたいへんに便利です。
   唯一の欠点は上限1キログラム及び厚さ制限2センチということで
   すが、これも自己申告制なので少々の融通はききます。
   ネット通販はあいかわらず好調で、1月は170件台と過去最高の件
   数でしたが、その7割以上でメール便を利用しました。残りは冊子
   小包(1〜3キロ)、郵便小包、エクスパック500、そして宅配便
   などを使いわけてます。あまり知られていませんが、冊子小包の代
   引きとか、冊子小包の簡易書留は全国共通料金なので便利です。こ
   の2種類の郵送方法には専用の用紙すらないぐらいなので、一種の
   裏技といえるかもしれません。新顔のエクスパック500も、全国一
   律500円の速達簡易書留小包で、しかも土日でも引き取りに来てくれ
   るので、サイズさえ合えば遠距離にはたいへんに得です。それから
   ごく一部の雑誌は第3種郵便で送れます。

  ○一月初め、「新文化」のサイトに、「日販の鶴田社長が書店の粗利
   を30〜35%にしたいとし、委託制度の改革に伴う収益構造の改善を
   目指す方針を打ち出した。正味に関わる微妙な問題に返品率の許容
   枠を決め、臨む考えだ。」と載ってました。返品ゼロの買い切りな
   らそれほど難しくなさそうですが、返品許容率とかいうことになる
   と難しい問題が多そうです。「出版ニュース」のコラムを続けてい
   たら、このネタで無理矢理1回分書き上げたとこですが、今回はこ
   の程度にしておいて、もう少し詳しいことがわかるのを待ちたいと
   思います。
   
   
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「わいせつコミック裁判」長岡義幸著 1700円 道出版

   詳細は道出版のサイトをごらんください
   http://www.michishuppan.com/

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   無料で掲載していただいてます。
   
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三月書房販売速報[072]
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2004/03/30[06-02-72]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 072号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「リヒアルト・ヴィルヘルム伝」新田義之 筑摩書房
   自由価格本。半年ほど前から扱っていたが、やや専門的かつ高価格
   かつ低割引率のためか、あまり売れ行きはよくなかった。ところが、
   1月頃にどこぞのサイトの主宰者が推薦したとかで、そこの人たち
   が買ってくれて、瞬く間に20冊弱を売り切った。過去にもペヨトル
   のCDとか山本タカトの旧トレヴィル本などで何回かそうい経験を
   したが、同じ趣味の人たちが集まっているサイトの掲示板の威力は
   ほんとうにすごい。しかし残念ながら、この「ヴィルヘルム伝」は
   いかなる「趣味」の人たちが集まっておられるサイトで人気なのか
   は不明。4月にこの主宰者が初版数万部の本を出版されるとの情報
   を購入客からもらったが、その本でもこの「伝」が紹介されている
   らしいので古書価が上がるかもしれません。(主宰者の名前も出版
   社の名前も不明)。ちなみにうちは元本体価格5631円の40%引きに
   て完売済み。
   
 ◆「久坂葉子全集」鼎書房
   1セット15000円の3巻本。もともと関西ローカルで細々と売れてい
   ただけの人だったはずだが、ちかごろ回顧展がどこかであったり、
   それが新聞記事になったりと、ささやかなブームらしい。その最中
   に出たためか予想以上によく売れている。鼎書房は八木書店扱いで
   流通しているのだが、多くの取次の扱い出版社リストに載っていな
   いらしくて、よその書店からの問い合わせが多い。(これはあくま
   でも推測だが、間に別の取次が入ると仕入れ正味が高くなるのに、
   この種の本を仕入れる可能性が高い大書店には一本正味で卸さねば
   ならないから、逆ざやを避けるために、なるべくなら注文して欲し
   くないということか?)。他書店からの問い合わせが多いのは、グー
   グルで検索したら鼎書房も久坂葉子も、うちのサイトが5番目以内
   に出て来るからと思われる。鼎書房にはサイト自体がないようだし。
   
 ◆「山之口貘 沖縄随筆集」平凡社
   貘も先日のNHKの番組以後急に売上げが伸びている。ちなみにこ
   の人もグーグルで検索するとうちのサイトが7番目位に出てきます。
   思潮社から30年ほど前に出た4巻本全集の古書価は、以前から高
   値安定ですが、同社では今回のブームに合わせて再刊するそうです。
   増補される可能性もありますから、あわてて高い古本を買わないよ
   うに。山之口泉著「父・山之口貘」も同時に重版されるそうです。

 ◆「人生とは何か」吉本隆明 弓立社
 ◆「別冊文藝:吉本隆明」河出書房
 ◆「我自由丸」遠藤ミチロウ マガジン・ファイブ
   吉本本はあいかわらずの勢いで、1月に出た「ならずもの国家異論」
   は70冊を越えたし、2月に出た「人生とは何か」と「別冊文藝」
   も50冊を越えている。これは数年前に比べると20%程度の加速
   という感じだ。「我自由丸」は昨年末に出ていたCD付き写真集だ
   が、吉本宅に於けるミニライブと対談が掲載されていることを、2
   月に来店された某販促屋氏から教えて貰うまで見落としていた。あ
   らためて吉本関係本として宣伝したところ10冊ほど売れた。
   
 ◆「香月泰男 一瞬一生の画業」小学館
 ◆「京都人の秘かな愉しみ」入江敦彦 大和書房 
 ◆「日本近世の起源」 渡辺京二 弓立社
 ◆「ぼくたちは 何だかすべて忘れてしまうね」岡崎京子 平凡社
 ◆「栞と紙魚子 何かが街にやってくる」諸星大二郎 朝日ソノラマ 
 ◆「別冊文藝:武田百合子」河出書房
 ◆「森茉莉:贅沢貧乏暮らし」神野薫 阪急コミュニケーションズ
  

[#02] これから売れそうな気がする本
 ◆「伊太利亜」岡井隆 書肆山田 ※入荷済み
 ◆「桂東雑記2」白川静 平凡社
 ◆「徴候・記憶・外傷」中井久夫 みすず書房
 
   
[#03] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その38)

  ○3月3日オープンのショッピングセンター「ダイヤモンドシティ・
   ハナ」(西大路五条西)は今のところ予想以上の開店景気のようで
   す。9日にちょっと見学してきました。全体の雰囲気はなかなかよ
   くて、吹き抜けのモールを歩く気分は悪くありません。ただし、興
   味の持てない売り場ばかりでぜんぜん面白くありませんでした。中
   心的な来店客を、小さな子どもがいる家族に置いているらしく、そ
   のあたりは、おもちゃ売り場、子供服、そしてゲームコーナーまで、
   かなり充実しているようでした。(うっかり子どもを連れて行くと
   かなり高くつきそうですから該当者はご注意ください)。市内の中
   心街は少子化の影響が顕著で、子ども対象の売り場は減少の一途で
   すが、周辺部はまだ比較的児童人口が多いのでしょうか。大垣書店
   は80坪で、児童書と学参の割合がかなり大きいように見えた他は、
   雑誌とペーパーバックスとコミックと新刊のみで、もしうちの店の
   隣にあったとしても、97%位は競合しそうにないような品揃えに
   見えました。
   
  ○「K-ITE LAND」という小冊子は、25年も続いているらしい月刊の
   フリーマガジン(京都市内のカルチャーガイド)ですが、その3月
   号の「京の本屋特集」に載せて貰いました。うちとアスタルテと紫
   陽書院は珍しくありませんが、(記者の話では一乗寺恵文社は有名
   過ぎるから外したとのこと)、「ガケ書房」、「トランスポップギャ
   ラリー」、「書肆砂の書」、の3店は比較的新しい店です。3店と
   も見学に行ったことがないのでよくわかりませんが、共通している
   のは本の他に雑貨とかCDとか服とかを売っていたり、ギャラリー
   があったりするらしいことです。本そのものも洋書だったり、古書
   だったりするようで、ふつうの新刊本はあまり扱っていないようで
   す。今回の記事には出てきませんが、縄手通り三条下るに昨年?オー
   プンしたらしい「スフェラ・アーカイヴ」というとこも、行ったこ
   とがないので何屋さんというべきなのかよくわかりませんが、建築
   関係の本や雑誌や洋書を売ってるようです。
   http://www.ricordi-sfera.com/top2.html
   比較的大きな店舗に、新本と雑貨をごちゃまぜに並べて売るスタイ
   ルを始めたのはヴィレッジ・ヴァンガードですが、今回紹介された
   ように、比較的小さな店舗で、専門を絞り、古本とグッズなどを混
   ぜて売る店(書店?)が増えつつあるようなのは、誰が始めたとい
   うわけでもないように思えます。
   しかし、なにはともあれ、取次に取引口座のあるふつうの書店が、
   猛烈な勢いで減少しつつあるときに、そういう統計とは関係のない
   ところで、趣味のよい書店が増えているらしいのは、とてもけっこ
   うなことだと思います。 
   「K-ITE LAND」のサイトがありますがhttp://www.kiteland.co.jp/
   これはあまり役に立ちません。
   
  ○「京古本や往来」が100号で休刊されました。近年はそうでもな
   いようでしたが、原則として年に4回発行でした。「古書通信」と
   同様に前半が古書関係の書誌や情報やエッセイなど、後半が会員店
   の目録というスタイルで、古本好きには発行が楽しみな冊子でした。
   「往来」休刊の直接的な理由は、定期購読者数が回復する見込みが
   なさそうだからのようです。「モクローくん通信」という月刊紙を
   読んでいる分にはぜんぜんそういう気がしないのですが、やはり紙
   の古書目録という形態は終わりつつあり、徐々にネットに移行しつ
   つあるということなのでしょう。
   この100号は通常号よりも分厚くて、読み物豊富でしたが、とく
   に「会員お店探訪記」は、21世紀初頭の京都の古書店の状況報告
   として、きっと将来は貴重な資料となることでしょう。
   小生も79号に雑文を載せてもらったことがありますが、新刊業界
   紙誌からの原稿依頼よりも、よほど光栄に思った覚えがあります。
   ただし、お礼にいただいた「お米券」をうちの「御台所」に買いた
   たかれて半分に目減りしたのがちょっと何でしたが…。(新刊屋に
   図書券は失礼ではと、編集長がやや余計な気をつかってくれたそう)
   その時の雑文はここにて、まだ読めますのでおひまならどうぞ。
   http://www1.kcn.ne.jp/~kosho/koshoken/ourai/ourai79.html
   「100号」は編集長のご厚意により、三月書房店頭にて無料配布
   中です。商品ではないので通販はいたしかねます。あしからず。
   
   
[#04] 雑、雑、雑、…
   
  ○いよいよ4月から、馬鹿くさくて、面倒くさくて、極端に再販商品
   と相性の悪い総額表示が義務づけられることになった。罰則はない
   らしいし、当局も本との相性の悪いことは承知しているらしいから、
   新刊業界はいままで通りに本体価格を基本として、言い訳程度にス
   リップに総額を表示するだけですませられることになったので、と
   りあえずは絶版続出という最悪の事態は避けられそうだ。しかし、
   3%消費税の時の総額表示本は、たいへんに紛らわしいので、大多
   数の書店に嫌われて、急速に姿を消すことになるのではないかと予
   想される。うちの店にはまだかなり残っているが、後になると返品
   出来なくなる可能性があるので、返せる本はよほど必要でない限り
   返品してしまうことになるだろう。これは3%での導入時に本体価
   格表示にしなかった、業界首脳の判断ミスがいまだにたたっている
   からだ。
   
   店頭販売分は取次から来たお客向けの言い訳文のポスターを貼った
   ので、他店と横並びということで問題はないが、ネッ上の在庫リス
   トの表示を訂正するのはめんどくさいからほったらかしである。日
   販のサイトは先日一斉に税込みに変わったが、自動変換ソフトがあ
   るのだろうか。いちいち手作業だとめんどうな上に、また税率が変
   わればその度に変更するのは考えたくもない。どっちみちうちのサ
   イトは、「通販はしないこともないけれど、とりあえずはメールで
   連絡をください」というスタンスなので、在庫の問い合わせがあれ
   ばそのときに税込み価格を知らせるという、いままで通りのやり方
   でもさほどトラブルはないだろう。
   
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三月書房販売速報[073]
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2004/05/03[06-03-73]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 073号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「戦争が遺したもの」上野千鶴子/小熊英二/鶴見俊輔 新曜社

   数年前、「だれが『本』を殺すのか」という本が業界内でかなり話
   題になりましたが、5月の新潮文庫に入ることになりました。その
   際、少し増補されるそうで、うちの店のことも出てくることになっ
   たようです。それはよいのですが、著者は取材に来られたことはな
   く、東京で仕入れたうわさ話を元に書いておられるようなので、か
   なりいいかげんな内容になってるかもしれないとやや気がかりです。
   担当編集者(新潮社ではなくプレジデント社)からの電話によりま
   すと、新曜社の社長及び営業氏らと雑談中に、三月書房は吉本隆明
   の本が強いので、吉本を批判した小熊英二の本は売れていないとい
   うような話を聞かれたとのことでした。うちはたしかに吉本氏の本
   はたくさん売ってますが、小熊氏の「〈民主〉と〈愛国〉」も刊行
   以来在庫を切らしたことはなく、6615円と高価にもかかわらず、す
   でに15冊ほどは売っています。うちの店の場合、10冊以上売れる本
   というのは、ごくわずかしかないことを考えれば、これはけっして
   悪い成績ではありません。もともとうちの店では、「単一民族神話
   の起源」の刊行以来、小熊氏の本には注目しており、同書や「〈日
   本人〉の境界」はロングセラー商品として今も棚に並んでいます。
   うちがいくら〈吉本〉本をたくさん売っているとは言っても、全売
   上げの数パーセントに過ぎません。吉本氏を批判した本は売らない、
   というようなケチな「セクト主義」では商売が成り立つわけがあり
   ません。小熊氏の著書のようなまともな本ではなく、吉本氏に悪意
   を持っているとしか思えないような記事を最後まで載せ続けていた
   あの「噂の真相」も、うちではずっと目立つ場所で売り続けていま
   した。こんなネタが読者に受ける思っておられるのならちょっと残
   念なことです。電話で確認してきた編集者に、「ちゃんと売れてま
   す」と答えたら意外そうでしたが、確かめてよかったとおっしゃっ
   てました。はたしてうまく訂正されるでしょうか? 
   発売日(5月末)をお楽しみに。
   
   「戦争が遺したもの」は平積みにはせず、3名の著者の棚それぞれ
   に1冊づつ並べてあります。小熊氏の棚から売れることが一番多い
   ような気がしないでもありませんが、それについてはデータがない
   のであまりあてにはなりません。
   

 ◆「新編 吉本政枝 拾遺歌集」編集・発行責任者 宿沢あぐり

   これは吉本隆明氏の若くして亡くなったお姉さんの拾遺歌集。編者
   が短歌雑誌のバックナンバーから拾い集められた労作です。本来は
   非売品で、発行を知らなければそれまででしたが、知ってしまった
   以上は、〈吉本〉本に強い書店としてはぜひとも仕入れたい本です
   から、無理をお願いして卸していただきました。編者お手製のワー
   プロ・コピー、袋とじ、製本テープ貼りという本です。当店の頒価
   は800円+税也。
   政枝さんは大正11年生まれ(中城ふみ子、河野愛子と同年)で、
   昭和23年没。歌人としての評価は不明(※先日来店された某有名歌
   人氏に押し売りしましたから、そのうちどこかで評論してくださる
   かもしれません。)ですが、当時なかなか有力だったらしい短歌雑
   誌「瀧」の常連投稿者で、同誌に追悼記事も載ったらしいので、あ
   る程度は有望な人だったのでしょう。なお、その号に吉本氏が寄稿
   された「姉の死」という文章は、氏がはじめて公的に発表された文
   章とのことです。(後に試行出版局「初期ノート」に所収〈※絶版〉。
   現在はちくま文庫「追悼私記」にて読めます)
   

 ◆「『忘れられた日本人』を読む」網野善彦 岩波書店 
 ◆「伊太利亜」岡井隆 書肆山田
 ◆「抵抗論」辺見庸 毎日新聞社
 ◆「傷痕に咲いた花」金芝河 毎日新聞社
 ◆「岸上大作の歌」高瀬隆和 雁書館
 ◆「年を歴た鰐の話」ショボー作/山本夏彦・訳 文藝春秋

 
[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「ものづくりの原点」今野裕一・編 ステュディオ・パラボリカ

   4月25日に入荷済み。実のところ「売れそう」か「売れなさそう」
   かまだよくわからないというか、ひょっとしたら、ぜんぜん売れな
   い可能性もありそうというのが正直なところです。
   これはうちがここ数年圧倒的に売っている〈ペヨトル〉本の最新刊
   ですが、京都造形芸術大学通信教育部の教科書(おしゃれな本で、
   教科書臭さはまったく感じられませんが…)なので、従来のファン
   が買ってくれるかどうかがいまいちわかりません。
   〈ペヨトル〉本の購買客のアドレスは、確実に有効な分だけでも、
   百名から2百名くらいはあり、新刊のお知らせやバックナンバーセー
   ルのお知らせをメール送信するといつも少なくない反響がありまし
   た。最近ですと、「夜想復刊1号」と「金子国義ロマン文庫カード」
   は、それぞれ最初の案内メールに対して30冊位と10冊位の注文を受
   けました。今回も送料無料とのお知らせを送信したのですがぜんぜ
   ん注文がありません。いまのところ、地べたで1冊売れただけです。
   この本の詳細はこちらでどうぞ。

   
   
 ◆「短歌があるじゃないか」穂村弘・東直子 角川書店 
 ◆「不成仏霊少女」花輪和一 ぶんか社
 ◆「米沢時代の吉本隆明」斎藤清一 編著 梟社(新泉社・発売)
 ◆「辻まこと全集(5)」みすず書房
 ◆「加藤治郎歌集」砂子屋書房 ※入荷済み
 ◆「長沢節」内田静枝 河出書房 ※入荷済み
 ◆「武」甲野善紀・井上雄彦 宝島社 ※入荷済み
 ◆「カレルチャペックのごあいさつ」チャペック著 青土社
 

[#03] 短歌本の売上げtop9 2003/04〜2004/03   

 01 72冊 「原型:斎藤史追悼号」原型の会
 02 30冊 「風位」永田和宏 短歌研究社
 03 27冊 「夏のうしろで」栗木京子 短歌研究社
 04 23冊 「茂吉を読む」小池光 五柳書院
 05 21冊 「渾円球」高野公彦 雁書館
 06 19冊 「ニュー・エクリプス」加藤治郎 砂子屋書房
 07 16冊 「銀耳」魚村晋太郎 砂子屋書房
 08 13冊 「過客」小中英之 砂子屋書房
 09 11冊 「海量/東北」大口玲子 雁書館

   近年、有力歌集の発行は8月から10月あたりに集中しているため、
   売上げデータをまとめるときに1月〜12月にすると、売れ行きが
   落ちる前に年を越す本が多くて、結局どちらの年でも上位に来な
   いということになりがちですから4月〜3月にしてみました。秋
   口に多く出るのは、「読書の秋」とはまったく関係がなくて、ど
   うもこのあたりに出しておくと、一年を代表する歌集として取り
   上げられたり、賞をもらったりしやすいからではないかと邪推し
   てます。なお上の表では02、03、05、06、07が新歌集で、その他
   は01が結社雑誌の特集号、04は評論、08と09は旧作の再編本です。


[#04] パターン配本について

   パターン配本は原則としてすべて断っていますが、売上げカードを
   送ると出版社のほうで勝手にランク付けしてパターン配本してくる
   ことがあります。とはいえうちの場合は、文庫や新書を出している
   大出版社の本でも500冊くらいしか売れてないことが多いので、
   いままでは最低ランクに届いていないために、パターン配本されな
   いことがふつうでした。ところが、最近になって書店が減ったため
   か、全体に売れ行きが落ちているためかは知りませんが、多くの出
   版社が最低ランクをかなり下げたらしくて、あちこちの出版社から
   新刊配本されることが増えてきました。
   ところがパターン配本というのは、うちでは売れないものばかりが
   来て、欲しい本はぜんぜん来ないことがことが多くて、返品が増え
   るばかりです。
   たとえば中公文庫だと白川静とか井筒俊彦とか野尻抱影とか折口信
   夫とかを売って何百枚かの売上げカードを送ると、うちでは即返品
   するしかない西村京太郎とか田中芳樹とかが3冊とか5冊とか来る
   わけです。もし白川静などの新刊が出ても1冊来ればよいほうです
   が、どっちみちこれらは1冊や2冊来たところでぜんぜん足りない
   ので、追加注文するしかないわけです。新潮文庫や小学館文庫も似
   たようなもので、かろうじて5割以上有効なのは、講談社の学術文
   庫と文芸文庫くらいのものです。ちくま文庫は無理を言って全点各
   1冊という配本にしてもらいましたが、これだと比較的無駄があり
   ません。しかし大部分の文庫は、毎月10点出たとしても必要なの
   は1点か2点しかありませんから、この手もほとんど効きません。
   現在、うちの店の書籍の返品率は20%未満ですが、むだなパター
   ンが来なくなればさらに数パーセントは下がるでしょう。そこで、
   日販に頼んで不要なパターンはすべて止めてもらいましたが、今後
   売上げカードを送るとせっかく止めて貰ったのに、次年度からまた
   復活することになりそうですから、もう送るのを止めようかと考え
   ているところです。売上げカードを送ると1枚1円ないし数円の割
   で販売報償金をくれる社が多いのですが、うちなんかだと全社合わ
   せても1万円以下ですから、返品を減らす方が作業効率がよくなる
   はずです。


[#05] 雑、雑、雑、…

  ○ちかごろうちの店はほとんど万引きの被害はありません。1960年代
   はかなりのものだったようですが、その後減少の一途のようです。
   理由は不明ですが、昔は本代の乏しい人が読みたくて盗ることが多
   かったとか、岩波とかみすずの本は古書店が高く買い取ったので小
   遣い稼ぎになったが、ちかごろは安すぎて割に合わないとか、新古
   書店で高く買ってくれるようなコミックをほとんど置いてないとか
   いうようなことなのでしょう。あるいは昔に比べると、店が閑散と
   していることが多くて盗りにくいのかもしれません。しかし、その
   気になって数人で組めばいくらでも盗めるはずですから、やはり万
   引きにとってはリスクに見合うおいしい本が少ないのかもしれませ
   ん。無理に小さい店で盗らずとも、盗り放題のように見える大型店
   がたくさんあることですし。
   
   先日、久しぶりにまとめて盗られましたが、これが実にマニアっぽ
   くて、東京創元文庫の「中井英夫全集」の「帯」だけ全巻という被
   害でした。「帯付き完品」としてプレミアをつける古書店ならとも
   かく、新刊屋では実質的な被害額はゼロとしかいえないでしょう。
   帯なしだと売れ行きはやや落ちるかもしれませんが、返品も可能な
   商品ですから。しかし盗みといえば盗みですから、もし、犯人を現
   行犯で捕まえて警察に突き出したらどうなったのでしょうか。被害
   額を聞かれてもゼロとしか言いようがないのに、被害届が出せるの
   でしょうか?

  ○「<天に唾する>京都の書店のうわさ」は何もネタがないので休載
   です。
   

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三月書房販売速報 臨時増刊号[073.5]
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2004/05/29[06-04-73.5]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 臨時増刊号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 新潮文庫版「だれが『本』を殺すのか」について

   前号にて、「はたしてうまく訂正されるでしょうか?発売日(5月
   末)をお楽しみに」とお知らせしましたが、昨日、新刊入荷(著者
   からもメール便で受贈)したのを見たところ、ちゃんと訂正されて
   いるように思えました。

   今回の文庫版は上下2分冊で、全体の3分の2位が3年前にプレジ
   デント社から刊行された同名本の文庫化で〈捜査編〉、残り3分の
   1が今年になってから書かれた〈検死編〉となっています。したが
   いまして、元版をお持ちの方はとりあえず下巻のみを買われるなり、
   立ち読みされるなり、図書館で借りられるなり、ブックオフに並ぶ
   のを待たれるなりされるとよいでしょう。
   
   三月書房は下巻の「file4 『本』の復活を感じさせる小さな予兆」
   の第2節「『本』は死なない」の最初のあたり「『〈民主〉と〈愛
   国〉』のエンターテイメント性」という部分に出てきます。新曜社
   の営業氏の「小熊さんの本は京都の三月書房さんではほとんど売れ
   ないのですよ。(中略)吉本隆明の本に力を入れてましてね」の発
   言を受けて、著者が「ああ、吉本隆明のシンパとして知られる(中
   略)。それじゃ売れない(笑)。というより売らない(笑)。(中
   略)でもいい話ですね。書店の主義主張がはっきりしてて。」と答
   えます。
   
   どちらかと言えば暗い話題の多い本の中で、(笑)にあふれたいい
   話だと思われたのでしょう。「売らない」なんて、世の中には敵と
   味方しかいないという、旧左翼的な寂しい思考法というしかありま
   せんが、前号に記しましたように、書きっぱなしではなくて、「念
   のため、京都の三月書房に電話を入れ」てくださったので、うちで
   もよく売れていることと、「うちは別にセクトじゃありません」と
   いうこちらの意見も載せていただけたので、よほど間抜けな読者で
   ない限りは、へんな誤解をされることはないでしょう。
   
   しかし、せっかくの(しょーもない)筋書きが成立しなくなって、
   「セクト意識にとらわれているのは、むしろ新曜社なのだろう」と
   書かなくてはならなかったようでは、わざわざ三月書房を話題にし
   ていただいた意味がほとんどなく、どちらかといえばなくてもよい
   エピソードになってしまったような気がします。
   
   せっかくうちをとりあげてくれるのだったら、こんなスカタンなネ
   タでなくて、消えてしまった小沢書店やペヨトル工房や博品社や京
   都書院の本をガンガン売っていることとか、新刊書店としては珍し
   いと、あの八木書店の社長がほめてくださったくらい、新本特価を
   たくさん売っているとかいうようなネタで出していただきたかった
   ものです。というのも、うちのことはともかく、〈検死編〉に載っ
   ている出版業界の最新情報がどれもなかなか面白かったからです。
   
   文芸社/たま出版の自費出版の話とか、ブックオフの話やレンタル
   書店の話もたいへんに面白かったですが、とにかく一番カッコよかっ
   たのが、トランスビューの話でした。うちは売上げこそわずかなも
   のですが、グーグルで「トランスビュー」を検索すると、トランス
   ビュー本社とジュンク堂の次に出て来るくらい相性がよいので、新
   曜社の件よりもこちらのほうで取材してほしかったくらいです。
   
   とはいえ、もはや出版業界は臨終寸前という著者の見解にはまった
   く異論がありませんし、業界内ではまたまた大きな話題になるに違
   いない本にて、わざわざ店名を無料で宣伝していただいて、とても
   得したような気分です。
   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  〔再掲〕「三月書房 販売速報(仮題) 073号」より
    
   数年前、「だれが『本』を殺すのか」という本が業界内でかなり話
   題になりましたが、5月の新潮文庫に入ることになりました。その
   際、少し増補されるそうで、うちの店のことも出てくることになっ
   たようです。それはよいのですが、著者は取材に来られたことはな
   く、東京で仕入れたうわさ話を元に書いておられるようなので、か
   なりいいかげんな内容になってるかもしれないとやや気がかりです。

   担当編集者(新潮社ではなくプレジデント社)からの電話によりま
   すと、新曜社の社長及び営業氏らと雑談中に、三月書房は吉本隆明
   の本が強いので、吉本を批判した小熊英二の本は売れていないとい
   うような話を聞かれたとのことでした。うちはたしかに吉本氏の本
   はたくさん売ってますが、小熊氏の「〈民主〉と〈愛国〉」も刊行
   以来在庫を切らしたことはなく、6615円と高価にもかかわらず、す
   でに15冊ほどは売っています。うちの店の場合、10冊以上売れる本
   というのは、ごくわずかしかないことを考えれば、これはけっして
   悪い成績ではありません。もともとうちの店では、「単一民族神話
   の起源」の刊行以来、小熊氏の本には注目しており、同書や「〈日
   本人〉の境界」はロングセラー商品として今も棚に並んでいます。

   うちがいくら〈吉本〉本をたくさん売っているとは言っても、全売
   上げの数パーセントに過ぎません。吉本氏を批判した本は売らない、
   というようなケチな「セクト主義」では商売が成り立つわけがあり
   ません。小熊氏の著書のようなまともな本ではなく、吉本氏に悪意
   を持っているとしか思えないような記事を最後まで載せ続けていた
   あの「噂の真相」も、うちではずっと目立つ場所で売り続けていま
   した。こんなネタが読者に受ける思っておられるのならちょっと残
   念なことです。電話で確認してきた編集者に、「ちゃんと売れてま
   す」と答えたら意外そうでしたが、確かめてよかったとおっしゃっ
   てました。(2004/05/03)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
*****[受贈御礼広告]*************************************************

  文庫版「だれが『本』を殺すのか」佐野眞一著 
  
        上巻667円/下巻667円      新潮社
        
    ※文庫化にあたり、新たに〔検死編〕を追加。

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三月書房販売速報[074]
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2004/06/20[06-04-74]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 074号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「アナキズム」浅羽通明 筑摩書房
   この新書は従来の運動関係者による入門書に比べて幅広く柔軟に紹
   介されていてたいへんに便利です。松本零二の「キャプテン・ハー
   ロック」はアニメもコミックも縁がありませんでしたが、レンタル
   屋でビデオや主題歌のCDを借りたくなりました。またなぜ黒色戦
   線社から「権藤正卿著作集」が出ているのかもよくわかりました。
   強いて言うならば故藤山寛美に代表される「浪花アナキズム」も取
   り上げていただきたかったところですが、それはさておき、近年は
   「南天堂」とか「黒旗水滸伝」(※早く重版するように)などがよ
   く売れたように、アナキズムがやや見直されつつあるようです。し
   かし、残念ながら紹介されている書目の大部分が品切れで、新刊屋
   としてはあまり商売にはなりません。最近届いた「月の輪書林古書
   目録十三」にはその手の本が大量に載っていますが、まだ安価なよ
   うな気がしました。古書価が上がらないと、復刻版や新版が出しに
   くいでしょうから当分は期待薄かもしれません。
   ただし、アナキズムとインターネットは組織論的にみても抜群に相
   性がよいため、早い段階から世界的に利用が進んでいるようで、著
   作権が切れている大杉栄とか辻潤をはじめとする著作が大量に無料
   公開されていますから、古典に関してはもはや印刷物は必要がなく
   なっているかもしれません。
   一例として「アナキズム図書室」を紹介しておきます。
   http://www.ne.jp/asahi/anarchy/anarchy/library.html


 ◆「今氏乙治作品抄」編集・発行責任者 宿沢あぐり
   今氏氏は吉本隆明さんが小学校5年から工業学校4年ころまで通わ
   れた私塾の先生で、この塾には田村隆一さんや北村太郎さんも通っ
   ていたとのこと。吉本氏の「少年」(徳間文庫)に収録の「今氏先生
   の私塾」には、「この塾通いの日々は、生涯の輝いた時代だとおも
   える」とあります。
   今氏氏は早稲田高等学院時代は尾崎一雄と一緒に創作活動していた
   そうで、今回の収録作のいくつかは同校の「學友會雑誌」からの再
   録です。早稲田大学文学部英文学専攻の卒業とのことですから、こ
   のあたりに詳しそうなEDIの「サンパン」あたりが、さらに調査
   して遺作及び経歴を探索していただくとよろしいかと思います。
   このパンフは「吉本政枝遺歌集」同様、編者お手製の非売品ですが、
   今回も無理をお願いして卸していただきました。
   
 ◆「徴候・記憶・外傷」中井久夫 みすず書房
 ◆「(歌集)朝の水」春日井建 短歌研究社
 ◆「シュタイナー・ホメオパシー医学講座(1)」ホメオパシー出版
 ◆「現代語訳 徒然草」佐藤春夫 河出文庫
 ◆「米沢時代の吉本隆明」斎藤清一 編著 梟社(新泉社・発売)
  
 
[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「現代随想集 青い兎」杉本秀太郎 岩波書店
 ◆「思想としての『幼年』」吉本隆明・芹沢俊介 彩流社
 ◆「網野善彦」 中沢新一、赤坂憲雄 講談社
 ◆「残光のなかで 山田稔作品集」 講談社文庫※入荷済み
 ◆「市民と武装」小熊英二 慶應大出版会
    
 
[#03] 「三月書房販売年報(仮題) 第03号(通巻61号)」発行のお知らせ

   紙の「販売年報(仮題)」をやっと発行しました。一昨年が3月、
   昨年が4月で今年が6月ですから、どんどん遅れていますが、速報
   性は必要がなく、記録として残すのが目的ですから、急ぐこともな
   いでしょう。

   主な内容は
   ○「2003年の概況」(略)

   ○「2003年出版社別総合売上冊数☆TOP50」
     このメルマガの71号にて上位10社は速報済みです
     11位以下には直仕入れの出版社や特価本の出版社がますます増
     えつつあります。
     
   ○「新本特価について」
     2002年と2003年を比べますと、売上冊数は2700冊→3171冊
     (17.4%増)とまだ伸びてはいるものの、前年の(65.9%増)に比
     べると完全に伸び悩みです。売上げ金額は10%増でしたが、冊
     数に比べて率が低かったのは、「学研文庫」とか「is」のよう
     に単価の安いものが多かったからと思われます。
     このように伸び悩んだのは、売れ筋の小沢書店、リブロポート、
     博品社など「消えた出版社」の在庫が底をついてきたにもかか
     わらず、それらにかわる出版社があらわれなかったからです(そ
     のこと自体はむしろオメデタイといわねばなりませんが…)。
     その結果、仕入は4011冊→3480冊(13.2%減)と減少してしまい
     ました。おかげで年末在庫も2639冊→2948冊(11.7%増)と前年
     の(98.7%増)から比べると伸び率は大幅なダウンです。仕入れ
     が減って売上げが増えたわけですから、昨年だけを考えれば、
     利益率は大幅に向上していますが、いくら売れても重版があり
     得ない商品ですから、先行きはちょっと弱含みです。
     
   ○「2003年の日販帳合返品率」
     書籍の返品率は17.3%とまずまずでした。これに常備を加えて
     も21.9%ですから世間の平均の半分程度です。今年は、前号に
     書きましたように、不要なパターン配本を断わりつつあるので、
     さらに下がるかもしれません。しかし、最近とてもくだらない
     ことがわかりました。文庫や新書のパターンを止めることは簡
     単ですが、うちではぜんぜん売れない「世界の真ん中で、愛を
     さけぶ」だの「冬のソナタ」だのといった世間の売れ行き良好
     書の指定配本を止めることは無理なのだそうです。こういう商
     品はうちのように返品率が低く、入金率が高い書店に特別サー
     ビスのつもりで送って来るのだそうですが、これでは誉められ
     てるのではなくて懲罰を受けているような気分です。
     ところがコンピュータにそういう配本を止めるように指示する
     と、うちが出版社にわざわざお願いして指定配本してもらう新
     刊配本も一緒に止まってしまうのだそうです。これはうちの生
     命線ともいうべき最重要な仕入れですから、絶対止めるわけに
     はいきません。特別サービスのみ止めてもらうためには、返品
     率を上げるか、支払い率を下げるしかないというのはたいへん
     おかしな話ですが、さすがにそんなことはできません。今のと
     ころ、うちの地域は送品も返品も運賃無料ですから、不要商品
     はさっさと返品するしかなさそうです。
               
   ○「2003年のネット通販」
     冊数でも金額でも約22%の増でしたから、順調だったといえる
     でしょう。ちなみに2002年は金額で約12%増でした。いいかげ
     んなジャンル分けですが、ネットでの一番人気は特価本、次が
     吉本本、以下ペヨトル本、短歌関係、人智学関係といったとこ
     ろです。今後は右肩上がりに一直線とは行きそうにありません
     が、おおむね増加傾向がしばらくは見込めそうです。理由とし
     ては、まだネットの普及率及び利用率が伸びる余地があること、
     そして、うちのネット通販の人気商品は、アマゾンなどの大型
     ネット書店とはほとんど重複しないスキマ商品であることです。
     
   ○「2002年の現代短歌の本」
     『出版社別』ランキングは砂子屋書房→短歌新聞社→雁書館→
     短歌研究社→本阿弥書店→ながらみ書房→小沢書店→柊書房→
     不識書院→青磁社。全体としてはやや低調だったようです。
     もっとも多く売れた本は「原型:斎藤史追悼号」の68冊でした。
     
   ○「〈吉本隆明〉本、〈三木成夫〉本、〈人智学関係〉本、
     たくさん売れた本2003年、その他」(略)
          
   ※この「年報」は出版社様にのみ、何らかの機会に送付しています。
    書店の方は出版社の営業さんにコピーをもらってください。
    「無断複写&配布大歓迎。無断転載は不可」です。


[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その39)

   ○今回もたいしたネタはありませんが、「BRUTUS」の7月1日号が本
    の特集号「本好き50人、400冊ハンティングの旅!」でした。
    京都の旅は「書肆 遅日草舎」がメインで、ほかに「アスタルテ書
    房」、「書肆 砂の書」、「山崎書店」、「Green e Books」、そ
    してちかごろ評判の「ガケ書房」が紹介されてます。「ガケ書房」
    のみ新刊屋でその他は古書店系です。行ったことがあるのはアス
    タルテのみで、その他はまだ見学に行ったことがありません。
    「Green e Books」だけは初耳でしたが、京都に住む外国人を対象
    にした中古洋書店で、英独仏書のほかアジア関連書籍(新古不明)、
    輸入雑貨なども扱っているそうです。川端丸太町東とありますか
    ら、うちの店から徒歩10分位でしょう。「ガケ書房」については
    「本のメルマガ 06/15」に、南陀楼綾繁センセの報告が載ってい
    ましたから引用させていただきます。

    「噂には聞いていたが、ホントにガケがあるとは!
     しかも壁からは車が突き出てる。ナカのレイアウトも全体に無
     骨な(あまりつくり過ぎない)感じがイイ。店内から客が気に
     入った本を置いてつくる『ガケの本棚』というのも、無意識の
     意外性が楽しめる。今回は買わなかったが、CDもいいところが
     揃っていて、近所にいたら毎日一枚買ってしまいそう。」
     
    ちかごろ、独立系の新刊書店の新規開店は極めて困難な状況で、
    全国的にみてもほとんど皆無といわれていますが、なぜこんな余
    裕たっぷりな新店が出せたのでしょう。本よりももっと落ち目な
    音楽CDとの併売は、足を引っ張られるだけではなかろうかと思
    うのですがどういう成算があるのでしょう。何かほかの事業で景
    気のよい会社が採算度外視でやっておられるのでしょうか。ちょっ
    と知りたいものです。
    
    なお、三月書房は佐野史郎さんのページに載せていただきました。
    
    
[#05] 雑、雑、雑、…

   ○いよいよ紙の図書券の発行を来年秋に中止して、図書カードのみ
    にすると、図書普及が発表したようです。お客にとってはほとん
    どメリットがなく、書店には余計な経費がかかる図書カードに、
    無理矢理一本化しようとしているのは、よほど経営が苦しいので
    しょう。各地の書店組合も反対決議をされているようですが、と
    ことん反対していただきたいものです。
    この件に関しては、2年前に「出版ニュース」に書いたコラム
    ありますので、ぜひお読みください。

    
   ○日本雑誌協会が公表する雑誌の発行部数を、従来の「公称部数」
    から雑誌の印刷実数に基づく「年間平均印刷部数」に変えること
    になったと新聞に載ってました。押紙が2割から5割もあるとい
    われる新聞が何をえらそうにということはさておいて、印刷部数
    というのをいくら正確に公表したところで、返品を差し引いた実
    売数を公表しなければたいした意味がないと思うのですがどうな
    のでしょう。例えば、公称30万部、印刷20万部、返品10万
    部だと実売10万部です。30万部ということで広告料金を決め
    ていたのなら、今後は30万部印刷して10万部は即破棄すると
    か、あるいは30万部を無理矢理書店に送りつけて、返品率を6
    割6分6厘にしてしまったりするのではないでしょうか。こんな
    いんちきくさいことをもっともらしく発表するくらいなら、
    「年間平均実売部数」を発表すべきでしょう。
    
    
====[著者からの戴き本/勝手に広告(その1)]=======================

「出版をめぐる冒険:利益を生み出す〈仕掛け〉と〈しくみ〉全解剖」
  長岡義幸 著
  アーク出版 刊
  A5判・280頁・税込み2310円
  
   第1部「オンリーワンを目指せ!小出版社の挑戦」
   第2部「常識を捨てろ!中堅出版社の生き残り戦略」
  
  ※「本コロ」とだぶりますが、やはりトランス・ビューが一番カッコ
   よいような気がします。大創出版も面白いですが、この100円ショッ
   プの一番の傑作はCDでしょう。100円本は内容からみても価格差
   はせいぜい5倍がいいとこですが、志ん生や円生の落語CDなら、
   ジャケットのダサさを差し引いても10倍以上お買い得です。
  
  ※詳しくは発行所のサイトへhttp://www.ark-gr.co.jp/shuppan/
  
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====[著者からの戴き本/勝手に広告(その2)]========================

『ナンダロウアヤシゲな日々 〜本の海で溺れて〜』
  著者 南陀楼綾繁
  装丁/挿画 内澤旬子
  無明舎出版 刊 
  四六判・268頁・税込み1680円
  
 ※もちろん文も面白いですが、何と言ってもイラストのおかげで3倍
  くらい面白い本になってるような気がします。どこかの古本雑誌で
  唐沢俊一&ソルボンヌK子組と、タッグマッチの選手権をやってみ
  たらいい勝負になるのでは。弟さんを入れた3人タッグだと勝負に
  ならないかもしれませんが…

  詳しくは発行所のサイトへhttp://www.mumyosha.co.jp/

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====[勝手に御礼広告]===============================================

 「Bookish 本の遊覧 第7号  特集 書店の記憶」
        定価700円+税 発売・ビレッジプレス 
 
  ※この号掲載の深澤久雄さんの文章によって、なぜ北冬書房は電話も
   FAXもうまく通じないことが多く、葉書で注文するのが一番確実
   なのかがややわかりました。(完全に納得したわけではありません)
     
  ※1号からずっと三月書房の「売れてる本/売りたい本」のリストを
   無料で掲載していただいてます。
   
 「Bookish」のサイトへhttp://www.sutv.zaq.ne.jp/ckabb202/

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お断り:このメルマガで「勝手に広告」させていただく本は、原則として
    出版業界本に限らせていただいてます。
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三月書房販売速報[075]
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2004/08/13[06-05-75]  (c)SISIDO,Tatuo      *転送歓迎*

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 075号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「漱石の巨きな旅」吉本隆明 日本放送出版協会
 ◆「戦争と平和」吉本隆明 文芸社
 ◆「網野善彦を継ぐ。」中沢新一、赤坂憲雄 講談社
 ◆「水鏡綺譚」近藤よう子 青林工藝舎
 ◆「不成仏霊少女」花輪和一 ぶんか社
 ◆「コロポックル(完全版)」花輪和一 講談社
 ◆「江戸という幻想」渡辺京二 弦書房
 ◆「私の昭和史」中村稔 青土社
 ◆「別冊歴史読本:歴史の中のサンカ・被差別民」新人物往来社
 ◆「(歌集)遐年」竹山広 柊書房
 ◆「(歌集)滴る木」吉野亜矢 ながらみ書房
 ◆「(歌集)エウラキロン」真中朋久 雁書館
 
 
[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「(歌集)龍笛」今野寿美 砂子屋書房※入荷済み
 ◆「(歌集)午後の音楽」紀野恵 砂子屋書房※入荷済み
 ◆「小野庵保蔵集」藤枝文学舎を育てる会※入荷済み
 ◆「スカトロジア」山田稔著(挿絵・富士正晴) 編集工房ノア※入荷済み
 ◆「現代詩手帖別冊:春日井建特集」思潮社※8月中旬刊予定
 ◆「歌集:実生の檜」清原日出夫 雁書館※入荷済み
 ◆「京都学派の誕生とシュタイナー」河西善治 論創社※入荷済み
 ◆「超恋愛論」吉本隆明 大和書房※9月刊
 

[#03] 青山ブックセンターの破綻は突然だったので少し驚きました。直接
   的には親会社が不動産関係か何かで行き詰まったからとのことです
   が、書店そのものも以前に比べるとやや不調だったようです。日経
   BPビズボードによりますと、平成10年4月期に約30億円だった売
   上げが、15年同期には約19億円に落ちていたそうです。この間出版
   業界全体も年率数%の低下を続けていますが、青山の落ち込みは平
   均よりもかなり大きかったといえるでしょう。ただし、これは「新
   宿店」「ルミネ店」「天王洲店」「自由が丘店」の4店分のみで、
   「六本木店」など3店は、同時に破綻した別会社の経営のため数字
   は不明です。
   
   青山ブックセンターには一度も見学に行ったことがないので噂でし
   か知りませんが、主としてアート系の洋書や直取引の出版社の商品
   が充実しているとの評判でした。(一説によると取次の栗田とその
   他の仕入れ比率は6対4くらいだったらしい。比較的直仕入れが多
   い紀伊国屋とかジュンク堂でも1割程度とのこと)。青山の破綻で
   ひとつ心配されるのは、出版社が直取引を避けたがるようになるの
   ではないかということです。ちかごろはうちあたりでも直が増えつ
   つあるのですが、青山の破綻処理の行方によっては、もう懲り懲り
   という出版社が増えるかもしれません。数年前に京都書院、光琳社、
   リブロポートなど美術系出版社の廃業が相次いだとき、多くの出版
   社がアート系の出版企画を没にしたことが思い出されます。
   
   青山BCの一部の店はすでにブックファーストが代替して営業して
   いますが、六本木店などは取次の洋販が子会社にして営業再開する
   方向で話がすすんでいるようです。店が再開されるのはけっこうな
   ことですが、取次が書店を直接経営するのは独占禁止法とかにひっ
   かからないのでしょうか?先に日販がリブロの経営を引き受けた時
   にも、表だった異議はなかったようでした。連結決算の対象子会社
   ではあっても、何らかの形で経営を遮断しておけば、おそらく法律
   上は問題がないのでしょう。もし再販制がなくなって値引き競争を
   することになれば、取次の子会社書店は「素人さん歓迎」の現金問
   屋みたいなことになって圧倒的に優位になりそうですが、現状では
   阿吽の呼吸で売れ筋を優先的に配本したりするとか、支払い条件を
   有利にする程度のことしかできないでしょう。
   それよりももっと問題なのは、このように堂々と子会社にするので
   はなくて、実際には破綻している書店を、取次が管理経営している
   ところが大量にあるらしいことです。それらのゾンビ書店は歴史が
   古くて、地域でもトップクラスだったような有名書店が多く、ほぼ
   全国の都道府県に各1グループ以上はあるだろうといわれています。
   これは書店業界に限ったことではありませんが、ゾンビ企業を整理
   しないと、健全な同業者の経営も足を引っ張られ続けて、業界全体
   がいつまでたっても元気になりません。自力でがんばっている不振
   書店には援助が必要でしょうが、脳死状態で取次管理になっている
   ゾンビ書店には、ぼちぼち退場していただきたいものです。
   なお、ゾンビ書店か否かの見分け方の一つとして有効そうなのは、
   直取引商品が店頭に並んでいるかどうかに注目してみることでしょ
   う。経営を管理している取次が、外部に資金が流れる直取引を認め
   るとは考えにくいからです。もちろん健全な書店であっても、リス
   クやコストの面から直取引を一切しないところも少なくありません
   が。
   

[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その40)

  ○ちかごろ、知ってる範囲ではたいした事件は何もありません。
   静かなものです。
   
  ○ミーツリージョナル別冊「三度目からの京都通本」の「本屋」の紹
   介頁では、萩書房2、書肆 砂の書、恵文社一乗寺店、アスタルテ書
   房、水明洞、ガケ書房が載ってました。おなじみの店ばかりですが、
   共通しているのは古書店または古書も扱っている新本屋だというこ
   とです。従来の古書店業界の景気はあまりよくなさそうなのに、一
   方では間違いなく古本の人気が増えているのはなぜなのでしょう。
   新刊本にも古本愛好系の出版物が増えていますが、やはりブックオ
   フとかヤフオクとかネット古書店とかの影響が大きいのでしょうか。
   うちは通行人には古本屋と間違えられることが多いですが、まだ一
   切扱ってません。しかしこのように古本人気が続くようなら、もと
   もと相性は悪くなさそうなので、いずれは何らかのかたちで手を出
   すことを考えたほうがよいかもしれません。
   なお、三月書房はこの「三度目本」には載ってませんが、同じ別冊
   シリーズの「世界遺産をあそぶ京都本」の「街的世界遺産」という
   コーナーに、鴨川とか御所とか鯖寿司とか豆もちなどと一緒に載せ
   て貰ってます。なんかあまり居心地がよくありませんが、無料で宣
   伝していただいているのですから贅沢は言えません。使用されてい
   る写真は5年位前のものの使い回しで、今は亡き小沢書店の「前川
   佐美雄全集」のちらしを貼ってあるのが目立ちます。「遺産」なの
   で少々古い写真でも問題なかろうということなのでしょう。

  ○青山BCに関して「2チャンネル」としては比較的まともなスレが
   数本立ちましたが、それを読んでいると駸々堂が倒産したときのこ
   とを引き合いに出す人が少なくありませんでした。駸々堂は大阪に
   本社があって、店舗数も大阪方面が圧倒的に多かったのですが、な
   ぜか京都の書店と思い込んでいる人が多かったようです。それだけ
   駸々堂京宝店は優秀な店だった(そして、大阪や神戸の各店はそれ
   ほどでもなかった)ということでしょう。(もっとも、当時の京宝
   店を当時の大阪へそのまま持って行ったとしても、はたして受けた
   かどうかどうかという疑問はあります。例えば京都で人気のメディ
   アショップも、アメリカ村への出店では1年も持ちませんでした。)
   青山BCといえば、90年代後半に京都駅ビルが新築中のとき、メ
   インテナントの伊勢丹百貨店の書籍売り場に進出してくるという話
   がありました。これはデマではなかったようですが、伊勢丹は書籍
   売場なしでオープンして今に至っています。この伊勢丹の売上げは
   オープン以来すっと右肩上がりを持続中という、今時驚異的な好調
   さですが、書籍売場とCD売場を無視したということも、きっとそ
   の原因のひとつなのでしょう。
   
       
[#05] 雑、雑、雑、…

  ○ちかごろやっとヤフーオークションに手を出してみつつあります。
   今のところ私物のLPやCD、そして古本や古雑誌を処分するのが
   目的ですが、業者に払い下げるよりはよい値段で売れることが多い
   ようで、なかなか面白いものです。むかしたしかにうちにあった、
   アンクルトリスの木製の楊枝入れは、驚いたことに数万円で売れる
   らしいのですが、どこへしまったのかまだ見つかりません。
   それはともかく、このヤフオクの代金の決済は、イーバンクとかジャ
   パンネット銀行(略称JNB)などのネット専門銀行が幅を利かし
   ていることがわかりました。イーバンク口座間だと送金手数料は無
   料、JNB間だと52円という安さです。口座開設もネットで簡単
   にできますし、口座維持費もイーバンクは残高0円でも無料、JN
   Bは月間平均残高10万円以上なら無料です。イーバンクはこれでど
   うして商売が成り立つのかよくわかりませんが、1円でも10円で
   も無料で送金できますから、一部のサイトが提唱している「投げ銭」
   システムもこれなら可能でしょう。
   うちの店のネット通販の代金は、後払いにしろ先払いにしろ郵便振
   替がメインでしたが、先月半ばからイーバンクとJNBの利用も可
   能としました。いまのところ10件に1件程度の利用がありますが、
   今後はもっと増えそうです。
   
  ○ちょっと「トリビア」なネタですが、現在、取次ルートでふつうに
   流通している書籍雑誌のなかで、もっとも定価が安いのはいくらで
   しょうか?「図書」とか「波」あたりのPR雑誌でも100円前後
   していています。
   さて、この正解は税込み定価21円也。
   (これ以下のをご存じでしたらお教えください)
   1999年の発行でISBNもちゃんとついてます。今年の6月に日販
   から仕入れました。
      財団法人日本エスペラント協会発行
   「エスペラントでインターネット」
   ISBN4-88887-009-8 C0300 ¥20E
   A5版6頁(表紙を入れると8頁、ようするにワープロ打ちの両面
   コピー2枚を二つ折りしただけ。同サイズのダンボールに輪ゴムで
   とめてあった)
   ちょっと忘れましたが仕入れ正味もごくふつうの8掛けだったはず
   です。しかし、よくこんなものを日販も流通させてますね。まこと
   に「文化的産業」の鏡と言えるでしょう。この本を流通させる取次
   の粗利益2円しかありません。書店の粗利益は4円です。他の出版
   社がこんな新刊を持ち込んでも受け入れられるのでしょうか?
   今回は話の種にとこれ1冊だけ仕入れてみましたが、「ポント双書」
   としてほかにも何種か発行されているようです。なおこの本は日本
   語表記のみでした。(勝手を言ってすみませんが、この本の受注は
   辞退させてください。全国どこの書店でも取り寄せてもらえるはず
   です)
   
  ○ノースランド出版発行の「KOKOCHINO(ココチノ)」という雑誌の第2
   号に三月書房が大きく載せてもらってます。カラー写真つきで4頁
   分です。ライターは晶文社から「子どもの本屋はメリーゴーランド」
   という本も出している、三重県の児童書専門店の増田喜昭さん。こ
   の方の店は編集者の取材にて、創刊号で紹介されてました。3号は
   筆者がどこかの書店へ取材に行かせてもらえる「尻取り形式」かと
   少し期待してましたが、どうもそうではなかったようです。増田さ
   んは学生時代から、うちのお客さんだったそうで、たいへんけっこ
   うな記事を書いてくださいました。
   この雑誌のコンセプトは「心地よい暮らしをしたい。」ということ
   のようです。うちはもともとこの手の雑誌はほとんど売れないので
   よくわかりませんが、世間では売れているのでしょうか?
   定価980円也です。
   
  ○光村推古書院刊行の「キョウト自転車生活」という本にも少し載せ
   ていただきました。本屋は他に恵文社一乗寺と丸山書店北白川店が
   載ってます。実際のところ、京都は道が狭くて駐車場も少ないので、
   雨さえ降らなければ自転車が一番便利です。統計はありませんが、
   うちの店のお客さんも自転車で来られる方の割合がかなり多いよう
   です。クルマは前の通りに一時駐車は可能ですから、繁華街のブッ
   クファーストやジュンク堂よりもその点はやや有利ですが、ちかご
   ろは取り締まりもきつくなりつつあるのであまりおすすめはできま
   せん。
 

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