三月書房HOME販売速報総目次三月書房販売速報[091]


e-mail 版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第10冊[91〜100号]
通巻091号 2007.01.23発行 通巻096号 2007.12.14発行
通巻092号 2007.04.10発行 通巻097号  2008.02.13発行
通巻093号 2007.06.05発行 通巻098号 2008.04.16発行
通巻094号 2007.08.14発行    
通巻095号 2007.10.18発行    
※各号の最終版を一部修正して掲載しました
  ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報[091]
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2007/01/23[09-01-91]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 091号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 今年もよろしく。

   うちの店の昨年の売上げは前年比0.1%程度の増だったようですが、
   これはほぼ誤差の範囲ですから、完全に横這いでした。ここ数年続
   いた下降が止まったのはけっこうなことですが、今後も下降傾向は
   続くでしょう。売上げが落ちつつあるのは、長年の常連客の高齢化
   が一番の原因と思われます。大量の本を買い続けてくださった方々
   が、退職して帰郷されたり、購入意欲が低下されたり、病気になら
   れたり、お亡くなりになられたりすることが増える一方です。新し
   いお客も人数的には見合う程度に増えてはいるのですが、60代以上
   の人々とは買い方がかなり違うようです。ようするに、可処分所得
   の許す限り、最優先で本を買うという人が、一部のマニアを除くと
   下の世代には少ないように思えます。1960年代なら、ごくふつうの
   大学生でも、専門外の文学全集や哲学講座などを無理してでも揃え
   ようとされたものでしたが、ちかごろは必要なときに必要な本しか
   買わないのがふつうなようです。
   ちかごろ古書価の大幅な下落が目立ちますが、これもネットの影響
   よりも、高齢者が買う側から売る側に回りつつあることが大きいは
   ずです。とくに岩波の全集類などの驚くほどの値下がりは、間違い
   なくこれが原因でしょう。1960年代には女の子がいる家には軒並み
   ピアノがありましたが、大部分の家では上にレースを敷いて、人形
   かなにかを飾る〈家具〉としての利用がふつうだったようです。こ
   れと同様に文学全集や百科事典も〈家具〉化することが多かったよ
   うですが、こういう〈家具〉に囲まれて育った世代は、そういう無
   駄なことには、お金やスペースを使わないという智恵が身について
   いるに違いありません。
   ところで、岩波などの全集は、新刊屋なら単に売れなくなったです
   みますが、古書店は売れない上に、在庫まで値崩れしますからダブ
   ルパンチでしょう。百科事典は無料でも引き取れないというのはか
   なり以前からですが、「漱石全集」の揃いなんかも、ぼちぼちそう
   なっているのではないでしょうか?
   それはさておき、うちの店はネットのおかげで「他店ではあまり見
   かけない本」がよく売れるようになったので、なんとか潰れずにす
   んでますが、以前のように人文書がメインだったら、売上げ半減で
   とっくに潰れていたでしょう。なお、いうまでもありませんが、
   「見かけない本」はネットだけで売れてるわけではなく、またネッ
   トでは「見かけない本」だけが売れているわけでもありません。
   
   
[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

 ◆「杉浦茂傑作選集 怪星ガイガー・八百八狸」青林工藝舎
 ◆「スノウホワイト」諸星大二郎 創元社
 ◆「火打ち箱」高野文子/赤木かん子 フェリッシモ出版
 ◆「秋の日は釣瓶落とし」岡崎京子 双葉社
 ◆「マンガ童話」長新太 トムズボックス
 ◆「真贋」吉本隆明 講談社インターナショナル
 ◆「わかりやすい現代短歌読解法」岡井隆 ながらみ書房
 ◆「(歌集)虚音集」高橋睦郎 不識書院
 ◆「(歌集)夏羽」梅内美華子 短歌研究社
  
   昨秋から年初にかけての歌集では「虚音集」のほか「(栗木京子)
   けむり水晶」、「(高野公彦)甘雨」、「(花山多佳子)木香薔薇」が
   たいへんよく売れています。

   
[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

 ◆「岡井隆の現代詩入門(新書)」思潮社 ※入荷済
 ◆「(歌集)家常茶飯」岡井隆 砂子屋書房
 ◆「なぜいま人類史か(新書)」渡辺京二 洋泉社 ※入荷済
 ◆「間章クロニクル」愛育社 ※入荷済
 ◆「加能作次郎作品集(文庫)」講談社 ※入荷済
 ◆「空を引き寄せる石」蜂飼耳 白水社 ※入荷済


[#03] 「2006年の出版社別売上げ冊数TOP10」

 1 <01>[01](02)筑摩書房 
 2 <03>[03](03)講談社
 3 <02>[02](01)岩波書店 
 4 <06>[04](07)河出書房新社
 5 <04>[05](04)新潮社
 6 <07>[07](08)中央公論新社
 7 <05>[06](06)平凡社
 8 <10>[10](12)文藝春秋
 9 <09>[08](05)小沢書店 
 10 <10>[11](11)朝日新聞社

   ※< >内は2005年の順位
   ※[ ]内は2004年の順位
   ※( )内は2003年の順位

   小沢書店がまだかろうじて9位に残っている以外は、とくにどうと
   いうことありません。ペヨトル工房も売り切れ本が増加して15位あ
   たりまで落ちてしまいました。比較的好調に順位を上げているのが
   河出書房ですが、ここの書店用受注サイトはたいへん出来がよく、
   仕入れがスムースなのも一因でしょう。
   

[#04]「恵文社冬の大古本市」(2006.12.26-2007.1.15)

   今年も恵文社さんの「冬の大古本市」に混ぜてもらいました。詳し
   いことはブログ「三月記(仮題)」の「2006年11月12日」、「12月2日」、
   「12月20日」、「12月22日」、「2007年1月17日」をお読みください。
   古書価が下がりつつあることは重々承知していましたから、昨年よりは
   値下げしたつもりでしたが、成績は量も金額も昨年より1割程度落ちま
   した。売れ残りはアマゾンのAMPが古書のデータベースを拡充したので、
   そちらに出してみようかと研究中です。
   
   ところでこの「古本市」のことが京都新聞に載りましたが、いまい
   ちズレた内容で、いささか誤解を招きそうなところもあって、ちょっ
   と残念でした。いまならこの記事は同新聞社のサイトで読めます。

   うちも取材を受けたので、三月書房や恵文社のような新刊書店が古
   本を売るということの意味について力説したのですが、記事では古
   書店が古本市の新しい方向を見つけたようになってました。この記
   事にある小生のコメントでは、まるで古書店主としか思えないでしょ
   う。蛇足ながら、三月書房は古物商の資格は持っていません。恵文
   社さんは持っておられますから、うちは委託した中から売れた分だ
   け買い取ってもらうシステムです。ほかの出品者もプロの古書店は
   少数で、残りは沼田元氣さんなど個人の方々が大部分です。
   

[#05] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その53)

  ○みすず書房と東大出版会が公表している、書店別売上げランキング
   には、全国順位と売上冊数が掲載されています。そこから京都の書
   店を抜き出して、両社の売上げ冊数を合計してみました。末尾の数
   字は1位の京大生協の冊数を100とした100分比です。
   ※みすず書房は2005/12〜2006/11、東大出版会は2005/10〜2006/09
  
   1 京大生協ルネ  100
   2 立命生協存心館   71
   3 ジュンク堂京都店  46
   4 旭屋書店京都  35
   5 同志社生協今出川 31
   6 ジュンク堂BAL店 25 ※2006/02開店
   7 アヴァンティBC 19 
   8 大垣書店烏丸三条 15
   
   どちらの出版社もすべてが専門書というわけではありませんが、比
   較的固い本が多いことは間違いありません。また、売上げカードを
   定期的にきちんと送らない書店もありますから、あくまでも上のリ
   ストはちょっとした参考にしかならないであろうことは、ことわる
   までもないでしょう。
   大学生協が目立ちますが、これはとくに東大出版会の本が授業に必
   要なことが多いからと思われます。「丸善」や「ブックファースト」
   が消えた分、生協が盛り返してるといううわさもありますが、東大
   出版会の過去3年のデータが併記されているのを見ると、どこもむし
   ろ減ってますからなんともいえません。京大がダントツですが、立
   命館は数割が滋賀県に、同志社は半分が田辺市に、移転してますか
   ら、合計すればもっと増えるはずです。今年の2月で閉店する「旭屋」
   は、売場面積が半分以下の「ジュンク京都」にすらやや負けてます
   から、やはりもうひとつだったのでしょうか。「ジュンクBAL」は8ヶ
   月分位であることを考慮しても、まだまだいまいちのように見えます。
   「大垣三条」は東大出版会のデータによれば前年比160%ですから、
   やはりうわさの通りよく伸びているようです。
   なお、全国順位は計算してませんが、「京大生協」はみすずで13位、
   東大出版で10位です。みすず書房の売上げデータは30年以上前から
   同じスタイルで公表されていますから、全部ファイルしておけば、
   全国の書店の消長がよくわかったはずなのですが、残念ながらぜん
   ぜん残っていません。ここの全国1位は常に「紀伊國屋新宿本店」だっ
   たと思いますが、今回は6304冊の売上げになってます。記憶によれ
   ば、20年以上前は1万冊を超えていたはずですから、みすず書房の本、
   そして人文書全体の売上げは、やはり数割程度は全国的に落ちてい
   ると見てもよいのではないでしょうか?
   

[#06] 雑、雑、雑、…

  ○ISBNの13桁化はしかたがないこととはいえ、やはりいろいろ面倒で
   す。従来の10桁の頭に978-とつけるだけで済めばよいのですが、末
   尾1桁が違ってきますから簡単ではありません。そのことの意味が
   わかっているサイトは10桁でも13桁でも両方使えたり、末尾省略で
   も使えるようになっているのでほぼ問題はありません。問題なのが
   手書きの注文票につける1SBNのほうです。新しい用紙は未着ですが、
   すべて13桁になるようです。従来の10桁のものを13桁化するには、
   いちいち検索しないとわからないことが多いので面倒そうです。計
   算式をパソコンに入れておけば少しは速いでしょうが、それも面倒
   なことにはかわりがありません。現物にバーコードがついているも
   のは、13桁も併記されているのでよいのですが、売上げスリップや
   目録類には10桁しか記入されていません。末尾一桁の記入を省略で
   きるようにしてくれると楽な上に間違いも減るはずなのですが。
   
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜90号)」はHPにて公開中です。
    
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