「誘拐された月-男」。月の女神セレーネーの魔法によって、永遠の眠りにつかされたギリシアの英雄。エンデュミオーンは神の息子で、エリス(ギリシア西部の古代都市)の王だった。この男は古代の英雄によく見られるように、前王を追い出したが、「エンデュミオーンの治世が終わったとき、正式に生贄にされ、オリュムポスに英雄の神殿を与えられた」[1]。これが女神セレーネーによって「エンデュミオーンに与えられた眠り」で、セレーネーは永遠に山腹に横たわっている恋人に夜ごとに接吻した。
Kingship.
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
エンデュミオーンの名前は、エンドウェインejnduvein(ラテン語では inducere)の派生語で、月がまるでエムプーサたちの一員であるかのように、王を誘惑することを示しているわけである。しかし、古代の人々はそれをsomnum ei inductum「彼に送りこまれた眠り」のことを言っているものと解釈していた。
エンデュミオーンの神話は、アイオリス人の族長がどのようにしてエーリスに侵入し、月の女神ヘーラーに仕える50人からなるペラスゴイ人の水の巫女たちの長 エンデュミオーンの妻の名前はすべて月の称号である と結婚するような仕儀になったか、そのいきさつを記録しているのである。その統治期間が終わると、彼は定められたとおり生贄にされて、オリュムピアに英雄をまつる神殿を与えられた。ピーサは オリュムピアはその市の中にある リュディア語(あるいはクレータ語)で「人目に触れない休息所」、つまり月の休息所の意味であったといわれる(セルウィウスのウェルギリウス評注・第十書・179)。(グレイヴズ、p.302-303)