口腔機能と健康のかかわりについて

目次 なぜかみ合わせが悪いと良くないの? 赤ちゃんからの咬合誘導 咬合誘導の効果 歯並びが悪いと抜歯するの? 健康のために何をすべきか 顎関節症 たばこについてもっと知ってみませんか 作者紹介 リンク

 口腔の機能については、咀嚼(そしゃく・ものをかみ砕く)、嚥下(えんげ・飲み込む)、発音などの機能のほかにも、いろいろな役割があることが知られています。例えば、咬み合わせは口腔の機能だけに止まらず、体のいろいろな部分に関わりを持っています。かみ合わせは体の中で運動する器官の中で一番上位にあり、かみ合わせのバランスが崩れることにより、下位の部分でバランスを取るために、体にいろいろな影響が出てきます。例えばかみぐせによって顔の左右のバランスが変わったり、それによって肩のラインや脊柱が湾曲して肩凝りや腰痛を引き起こすことが知られています。さらに、横寝やうつ伏せ寝などの寝癖によっても、歯列の変形や顎関節の障害を起こすことがあります。また、呼吸器の一部としての役割もあり、気道を十分に確保出来なければ、口呼吸の原因にもなり、さまざまな免疫病を引き起こすといわれています。このことについては、東京大学の西原克成先生のページに詳しく述べられています。

かみぐせによる変形 西原克成著『呼吸健康術』より転載

頭の重さの歯と関節への影響 (西原ワールドより転載)

 かむことは口腔の大きな役割の一つですが、ここでもよくかむことによって大切な働きがあります。よくかむことによって、唾液が食物と混ざり、消化を助けるだけでなく、唾液中のぺルオキシダーゼという酵素が、発癌物質の発癌性を、1/10から1/100に押さえてしまうという働きがあります。このことは、一口30回位(30秒唾液と混ざって)かむことによって達成されます。さらに、かむことによって、脳の血流量が10%増えるという報告もあり、よくかむことにより、頭の回転が良くなり、お年寄りの痴呆を防ぐという効果もあります。

 かみあわせがしっかりしていることは、運動能力にも影響します。重量挙げなどで力を入れる際には噛みしめる力がかかり、うまくかめるかどうかが力を発揮できるかどうかに大きく影響してきます。歯並びが悪く、上下の歯の接触点が少ない場合、十分にかめず力が発揮できないことになります。若い頃によい成績を上げていたのに、ベテランになると急に成績が落ちてきた選手をみてみると、歯並びが非常に悪くかみしめる力が落ちていたり、奥歯を抜いて咬み合わせのバランスが悪くなったりといった場合が多いものです。少し古い話になりますが、衝撃的なデビューを飾った巨人軍の呂選手が、奥歯を抜いたために成績が急降下したというのは有名な話です。 また、典型的な口呼吸顔貌を持つ99年のセリーグ新人王、巨人の上原投手がどのようなキャリアを辿るか興味深いところです。新人時代目覚しい活躍でしたが、このところムラのある成績というのも、関連がありそうですね。2007年にNYヤンキースに入る井川慶選手も、顔貌から見てかなりの口呼吸のようなので、選手寿命の点では若干心配があります。


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