たばこについてもっと知ってみませんか?

目次 口腔と健康の関わり なぜかみ合わせが悪いと良くないの? 赤ちゃんからの咬合誘導 咬合誘導の効果 歯並びが悪いと抜歯するの? 健康のために何をすべきか 顎関節症 作者紹介 リンク

 現在健康影響が懸念され喫煙率が下がっているたばこですが、30年前には20歳代の男性喫煙率は80%以上とたばこを吸うのがあたりまえの時代がありました。

 筆者が20歳の頃は、大人の仲間入りにたばこを吸うのはあたりまえという感じで、煙たくて不味いたばこを無理して吸っている青年の姿がありました。そして肺まで吸って、クラクラしてニコチンの魔力にノックアウトされるという構図でしょうか。たばこの本質を知らされていない頃の不幸な出来事です。

 現在はたばこの健康影響についても、いろいろな情報が入手できるようになり、正しい情報が分かるようになっています。しかし喫煙者の多くは、そのように喫煙に都合の悪い情報には、目を向けられないうちに習慣付けられ、目をそらして喫煙を続けようとしています。これこそニコチンの魔力なのですが、教養のある社会の指導的立場にある人々でさえ、なかなかそれを認めようとせず、たばこから逃れられないというのは残念なことです。

 また、厚生労働省で行われている、健康日本21での喫煙率の低減数値の目標は、タバコ業界の反対でまたしても盛り込むことが出来ませんでした。健康に対しては明らかに悪であるたばこも、その大株主である財務省の近視眼的な金銭感覚からか、なかなか対策が進みません。たばこについては政府の中にもアクセルとブレーキが混在しているのでなかなか進まないのは仕方の無いことなのかもしれません。

 「タバコとは、人間を殺す前に一生涯喫煙者にすべく、ニコチンを適切に投与するように如才なく巧妙に作られた製品です」

グロ・ハーレム・ブルントラント博士(WHO長官) 2001年5月15日

 たばこに含まれる化学物質は4000、有害物質は200発癌物質は60といわれています。中でも大きなものはニコチンタール一酸化炭素といわれています。

 ニコチンはたばこ煙の粒子相に含まれる精神作用物質、「毒物及び劇物取締法」の毒物。薬理作用により中枢神経系の興奮と抑制が生じ、心臓・血管系への急性影響をもたらします。体内に吸収されたニコチンは代謝されてコチニンを生じるほか、最強の発がん物質を生成します。たばこを反復使用すると生じる依存性は、ニコチンの精神及び身体依存によるものです。米国ではたばこは依存性薬物ニコチンの供給源であるとして、食品医薬品局(FDA)によりが、未成年に対する販売・広告を規制しています。最近のライトたばこではアンモニアが添加されることによって、Free-basing nicotineと呼ばれる形態に変化し細胞膜を通過しやすく、人体への吸収が非常に早くなり、中枢神経系への作用も極めて強くなります。そしてfree nicotine はタバコ煙のガス相に含まれることが明らかになり、測定器では測定できないため実際より見かけ上は少ない量しか検出されなくなります。

 タールはたばこ煙の粒子相の総称で、ニコチンや種々の発がん物質、発がん促進物質、その他の有害物質が含まれます。低タールたばこに用いられる有孔フィルターでは、主流煙中の有害物質は希釈されて減りますが、副流煙中ではかえって増加するといわれています。また低タールたばこは深く吸う傾向にあるため、肺がんでも以前多かった気管の幹にできる扁平上皮がんから、転移しやすくより厄介な気管支末梢の腺がんの出現が問題になっています。

 一酸化炭素は、気相に含まれる有毒物質で、赤血球のヘモグロビン(Hb)と強力に結びついて一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)を形成し、血液の酸素運搬機能を妨げます。血液中の一酸化炭素濃度と呼気中の一酸化炭素濃度はよく相関し、呼気中の一酸化炭素を簡便に測定する機器も開発されています。呼気中の一酸化炭素濃度(ppm)は、非喫煙者では1桁台ですが、喫煙者では数十ppmになります。一般的に1日に吸った本数と一酸化炭素濃度(ppm)は相関するといわれています。

 

「たばこは、定められた使用法により殺される唯一の製品です。」タバコ会社が販売する食物は食品に関する法律(食品衛生法)で規制されています。しかし、タバコは規制がありません それどころか、タバコ事業法という法律で保護されている厄介な代物です。有害物質が入っていても、タバコ製品というだけで規制の網を逃れて堂々と販売ができるのです。依存性が強く、自分が中毒患者であるという自覚のない人々が、タバコ増税反対署名に650万人を超える署名をしたという事実は恐るべきことです。財務省とJTをはじめとしたタバコ会社が、事実から国民の目を遠ざけてきた結果といわざるを得ません。

たばこによる健康被害

 人の体は、大人で60兆個の細胞で出来ており、それが2ヶ月で新しい細胞に置き換わるといわれています。すなわち1日に1兆個の細胞が作り変えられ、そのうち100万分の1の確率で突然変異が起こるため、1日100万個の変異細胞が出来ることになります。そのうちの多くは消えてしまいますが、3000〜5000は良性腫瘍やガンになっていきます。

そのような細胞を消化して無害化するのがヒト白血球細胞(HLA)であり、免疫システムの正体は細胞レベルの消化吸収などの代謝システムということが出来ます。その要が、のどのワルダイエルリンパ輪ということが出来ます。口呼吸が常習化すると、口から入る有害物質も消化しなければならなくなるため、細胞レベルの消化力が不足して有害物質が残ってリンパ組織を介して体中に廻ってしまい、免疫病が発症してしまいます。口呼吸は通常でもアレルギーやガンの原因になるのですが、タバコは通常口から吸うので、大気汚染よりはるかに悪い毒物を吸っていることになります。

まず、口腔関連のタバコのサインから触れてみます。タバコは口から吸うので、主流煙はまず口腔にあたり、口腔にはさまざまな影響が出てきます。口腔関連で見えるサインはつぎのようなものです。 (福岡歯科大学埴岡教授による)

1.歯周病の歯肉

2.メラニン色素着色歯肉

3.前癌病変の口腔粘膜

4.歯石・歯の着色

5.口臭

タバコと歯周病、歯肉着色

タバコによる歯周病のリスクは研究データによって幅があるのですが、大体2〜9倍といわれています。喫煙者の歯周病の特徴は次のようなことが挙げられます。(福岡歯科大学埴岡隆教授による)

@歯石が多く歯周ポケットが深く、歯周ポケットの部位数も多い

A歯槽骨の吸収が大きい

B歯根幕の破壊が進んでいる

C歯周組織の破壊程度に比べて歯肉の炎症程度は非喫煙者と同程度かそれ以下

Dプラーク(歯垢)の蓄積程度は非喫煙者と同程度である

これらのことは、主にニコチンの血管収縮作用による血流の阻害と、一酸化炭素の作用によって血液中のヘモグロビンの酸素供給能力が失われ治癒が阻害されることにより起こるといわれています。このことから歯肉のメラニン色素の沈着も かなりの相関で起こります。またBoston大学のKrallらの疫学的研究(1997)によると喫煙者は非喫煙者と比べ、10年間で歯の抜ける本数が2.4倍(男性)〜3.2倍(女性)という結果が出ています。本人喫煙はもちろんのこと、家族の喫煙によっても子どもたちの歯肉に影響が出てきます。また両親が喫煙者の場合子どもが喫煙する確率が高いことも報告されています。

46歳男性、1日30本喫煙、歯肉着色と歯周病進行

7歳男子、受動喫煙による歯肉着色

 

タバコと口腔癌

 口腔はタバコの煙が最初に入るところです。タバコには60種もの発癌物質が含まれていますが、口腔には唾液が満たされかなりの防御になっていると思われます。しかし、喫煙行動時は口呼吸ですし、タバコを吸う行為が口呼吸を誘発することも否定できません。口呼吸による免疫力の低下とタバコの有害物質のため、喫煙が緩やかな自殺行為であるという事実は隠しようがありません。さきの免疫病について触れたように非常に健康に悪いものを非常に効率的に体の中に摂り入れるシステムになっているのは疑いようがありません。

 先頃、元貴の花の双子山親方が口腔底癌で亡くなられましたが、これなど喫煙していなければほとんど起こらない病気です。ご冥福をお祈りするとともに、タバコのない世の中を実現したいと考えているこの頃です。口腔癌だけをとってみても、喫煙者の死亡リスクは1.4〜2.9倍になり、30倍以上リスクの上がる喉頭癌、そして肺癌、咽頭癌に次ぐリスクといわれています。

口腔癌の病態については豊田加茂歯科医師会のページ東京医科歯科大学のページあたりを参考にしてみてください。

 

タバコと口臭

 口臭については、タバコ臭自体はそれ程強いものではありません。しかしヘビースモーカーは舌に独特の舌苔を発生させ歯周病を誘発しやすくなります。また歯周病のある喫煙者は、歯周病の口臭とタバコ臭が重なって非常な悪臭になります。また喫煙によるニコチンの唾液分泌抑制によって、口臭は更に助長されます。自分では気づかないうちに、口臭で相手に不快感を与え、ビジネスチャンスを逃した喫煙者の方も少なくないのではないでしょうか。欧米では喫煙することや肥満は自己管理が出来ていないとして、一流のビジネスマンとは認められないそうです。 日本でもそう遠くない将来に起こることでしょう。

 

タバコ病で死んだ有名人

 喫煙有名人がたくさん亡くなっています。一部の例を挙げれば、石原裕次郎、松田優作、いかりや長助、コロムビア・トップ、勝新太郎、室田日出男、川谷拓三、星セント・ルイス、 ユル・ブリンナー、 オードリー・へプバーン、ジョン・ウェイン、スティーブ・マックイーン 、双子山親方(元貴乃花)と枚挙にいとまが無いほどですし、喫煙のため肺がんやその他の病気になった生存有名人もかなりに上ります。残念ながら悪いと分かっていても、ニコチン依存のため止められず、自分だけは大丈夫といった自己暗示を掛けてしまうのが、たばこの怖いところです。

 

健康のために何をすべきかindexへ作者紹介