健康のために何をすべきか

目次 口腔と健康の関わり なぜかみ合わせが悪いと良くないの? 赤ちゃんからの咬合誘導 咬合誘導の効果 歯並びが悪いと抜歯するの? 顎関節症 たばこについてもっと知ってみませんか 作者紹介 リンク

 ここでは、私達が日常生活での、体の使い方に誤りがないかについて、考えてみたいと思います。

生活習慣のチェックを
 咬み合わせが悪いと、姿勢が悪くなっていき、体のバランスが崩れることがある、ということは今までにもいろいろな先生からも指摘されてきました。しかし、口呼吸や片側噛みが、非常に体に悪影響をもたらす、といった考えは最近になってかなり注目されています。矯正や咬合誘導で、歯列・咬合を治しても、寝癖(うつ伏せ寝や横寝)・噛み癖(片側ばかりで噛むくせ)・口呼吸といった悪い生活習慣が直らなければ、また内側の舌筋と外側の筋肉のバランスがうまくとれるようにトレーニングしていなければ、そのかたちは元のわるい状態に後戻りしていき、十分な効果は得られません。それどころか年とともに、歯列は力のかかる方へ変形していき、若い頃よりその症状は進んで行きます。本来よく噛めるように、また健康になるために矯正を行なっても、その行為が無駄になりかねないということになります。

 さらに人類特有の問題として、直立2足歩行を始めたことから体に大きなストレスがかかり、十分な休息をとらなければ、体にいろいろな悪影響が出てくるといわれています。骨休めという言葉があるように、一日の1/3(8時間)の睡眠時間をとることは、体にかかったストレスをとる意味でも、また免疫系を守るためにも重要です。免疫に関わるリンパ球はそれ以外にも体細胞の更新(老化した細胞を新しいものに置きかえる)という大切な働きを担っています。免疫系に負担を掛けすぎると、細胞レベルの消化がうまくいかなくなり、いろいろな障害が起こってくるといわれています。体には一日に100万回位の突然変異が起こっているといわれますが、その細胞がガンなどにならないように、守っている免疫系が十分に働くためにも睡眠は大切です。

そこで、健康のために是非していただきたい習慣を5つ挙げておきます。

  1. 鼻呼吸をする 
  2. よく噛んで食べる。
  3. 左右を均等に使う。
  4. 枕を使わず仰向けに寝る。
  5. 十分に睡眠をとる。

逆にいえば、これらのことが守られなければ健康を損ねることになります。その他、いつも横向きになってテレビを見ていたり、頬杖をついたり、ハイヒールを履いたりといったことは体のバランスを崩す原因になります。

また、健康の大敵である口呼吸を防ぐためにその危険サインについて少し述べてみます。

  1. 自然な状態にしていると口が半開きになって、しまりのない表情になる。
  2. 前歯が飛び出したり、歯にすき間が多い。
  3. 上下の歯の咬み合わせが逆になっている(受け口)。
  4. いつも片側の歯でかむくせがあり、歯の咬み合わせも悪い。
  5. 下唇が上唇より分厚い。
  6. 唇がカサカサに乾燥する。
  7. 朝起きると、のどがヒリヒリ痛い。

このようなサインがあれば口呼吸を行なっている可能性がありますので、鼻呼吸に変える必要があります。起きているときは鼻呼吸をしている方でも、寝ているときは口呼吸になっていることは多く、イビキをかいているときは100%口呼吸です。下の写真は口呼吸の人の鼻と、鼻呼吸が出来ている人の鼻を比べてみたものです。口呼吸者は、鼻の穴も小さく小鼻の部分が厚くほとんど動きません。鼻呼吸を行っていると小鼻がよく動き、酸素の交換も行われやすくなっていきます。それにより免疫系も活性化が期待できます。しかし激しいスポーツをしているときは、当然鼻では呼吸が追いつかず口呼吸を行うことになりますが、これが免疫系を傷める原因になっているといったこともいわれています。スポーツのトップ選手のなかには口呼吸顔貌の選手をよく見かけます。例えば巨人の上原投手や阪神の井川投手、スピードスケートの清水選手、またシンクロナイズドスイミングの選手なども、競技の性質上仕方のないことかもしれませんが、選手の今後のキャリアや、健康のことを考えると健康のことを考えると心配になります。また選手の中に花粉症の人が多いのも気になるところです。このことに対しては、いくつかの対策が考えられています。例えば、例えば、最近スポーツ選手がよく使っている鼻腔拡張テープ(ブリーズライトやアクティブマックスという商品名で販売されている)、ノーズクリップなどを使用するのも鼻呼吸を促進するために効果的ですし、少し濡らしたマスクを口だけにして寝るとか、大阪の中谷紀之先生が考案された、口呼吸防止法として口に逆ハの字にテープを貼るのも効果的ですが、最近の研究ではテープだけ張った場合、口呼吸は防げるものの舌の位置は低位のままで、根本的な解決には口唇の自力閉鎖が必要になってきます。また、元東京大学の西原先生が開発された「ノーズリフト」という鼻呼吸改善装置ですが、大変素晴らしい効果がでているようです。私の症例でも睡眠時無呼吸症候群の患者さんが、一般によく使われるマウスピース(下の写真)で睡眠時無呼吸は改善したものの、口唇を閉じることが出来ないため口呼吸を誘発し大変苦痛になっていたのを、生活習慣の改善(睡眠姿勢の改善、片側咀嚼の改善、鼻呼吸への転換)とノーズリフト、スプリント(顎関節症参照)との併用で大変改善した症例があります。また、最近西原先生の考案されたものに大人のおしゃぶりとも言うべきブレストレーナーがあります。これは非常に薄いシリコーンで出来ており、口呼吸を防止するのに効果的なアイテムです。特にこれらの方法を、無意識に口呼吸してしまい、また口呼吸が長時間に及ぶ睡眠時に試みられれば効果的でしょう。ただ口呼吸を防止するための手だては、必ず鼻呼吸が出来ることを確認して行なうことが大切です。また花粉症などでくしゃみが出やすい場合、テープを貼るのは注意が必要です。鼻呼吸が十分に出来るようになって、アレルギー症状がある程度改善してから行うことが大切です。そうしないと、くしゃみのために鼓膜にダメージが及ぶことがあります。ただ、舌の位置とその筋肉の強さは睡眠時無呼吸にはかなり大きく関係していると考えられ、上記の方法で必ずしも全ての改善が得られるとはいえません。睡眠時無呼吸の場合やはり過食と体重オーバーには充分注意し改善することが必要ですし、舌の位置が低く筋肉の発達が充分でない場合そちらの改善をすべきでしょう。ただ、口唇閉鎖と舌の位置はかなり関連しているようで、口唇が閉鎖することによる舌の落ち込みの防止効果はありえます。これに対しては秋広良昭先生考案の「パタカラ」によるトレーニングが効果的です。パタカラについては別項で記載しています。また、冷たいものを食べることによって、腸管が冷やされ免疫系をいためることが報告されています。鼻呼吸で改善したアレルギー症状が、アイスクリームを大量に食べたために免疫機能が低下し症状がぶり返したといったことも起こっています。体を冷やすことの弊害について改めて考える必要があります。<⇒口呼吸を治すトレーニングへ > <⇒生活習慣チェックリストへ>

口呼吸者の鼻(左:成人 右:11歳)

鼻呼吸者の鼻(9歳、呼吸により小鼻が膨らむ)

鼻腔拡張テープ

ノーズクリップ

テープ貼りつけ法

ノーズリフトk18(左:長型、右:短型)

西原克成著 『呼吸健康術』より(下の図左より3枚)

睡眠時無呼吸症候群で

よく使われるマウスピース

ノーズリフト(長型)使用例 大人のおしゃぶりブレストレーナー
マウスピース装着時 スプリント(上顎型)装着時 ブレストレーナー装着例

腹式呼吸のすすめ
 
呼吸法についてですが、横隔膜を十分に動かす腹式かつ深い呼吸を行なうことが重要です(もちろん鼻呼吸で)。内臓筋は平滑筋であり、腹腔内の圧力変化によって刺激を受け、内臓の活性化が大変促進されます。それにより糖尿や便秘などの予防にも効果があるといわれています。姿勢が悪かったり、ストレスがかかったりしていると呼吸が浅くなりがちになってきます。そして、横隔膜を動かさない胸式呼吸になりがちです。このようになると、内臓筋に圧力変化が乏しくなり、内臓の活性化が阻害されます。簡単なことですが、試しにストレスがたまってきたと感じたとき、深呼吸をしてみて下さい。少し楽になってくるはずです。この呼吸法を1日5回、15分ずつ位やれば相当の効果が得られるといわれています。

ガム療法
 
横寝やうつ伏せ寝、片側噛みを常習的にやっていると、体のバランスを崩し姿勢の変化や肩こりなどを起こしてきます。ひどい場合、顎関節症で神経を病んでしまうことさえあります。そこでガムを使った簡単な噛み癖の矯正法を御紹介しましょう。まず、姿勢を正して、口唇と肛門を閉ざし、ウエストをゆるめた状態にして、鼻呼吸をしながら、顎を引いてまっすぐにコンコンコンと早く噛みます。そして、その噛んだ顎の位置で噛み癖でないほうで2、噛み癖の方に1の量のガムを噛みます。噛み癖がひどいようなら噛み癖でないほうだけで噛んでもいいでしょう。ただ、口唇を開けたり、横を向いて噛むとまったく意味が無くなります。必ずしもその咬み合わせで、歯が当たる必要はありません。特に痛みのある時には力を掛けてはいけません。顎の楽な位置で顎の開閉訓練をしているという感覚でしていく感じです。1回15分ぐらいから慣れるにしたがって30〜45分かけて噛みます。これを1日数回続けると、1ヶ月もすればかなりバランスが改善してきます。このことを続けることにより、免疫系を大変活性化していくことができます。実例を示します。患者さんは20歳の女性です。咬み合わせの悪さ、前歯の前突、頭痛肩凝り、イライラ、滑舌が悪い、よく口内をかんでしまうという主訴で来院されました。鼻呼吸のトレーニング、スプリント(『顎関節症』参照)とノーズリフトを併用しガム療法を行いました。右噛みの矯正によって、顔貌の非対称、脊柱の湾曲が矯正され、口呼吸も改善したため、側貌から見られる口呼吸特有の姿勢が消失しまっすぐ立てるようになっています。

 
トレーニング開始時 2週間後 5週間後 2ヶ月後
       
 

パタカラ

 最近話題になっているパタカラですが、この器具を使ったトレーニングはかなり目に見える効果が上がっています。パタカラは口輪筋を鍛えて開発者の秋廣良昭先生がいわれるように口唇閉鎖力と舌の位置の関係が大きいように思います。ただ本人がトレーニングを続けてくれるかどうかが大きいと思います。口唇閉鎖力は哺乳時の口腔周囲筋のつき方も大きく、また60歳を過ぎると急速に衰えるといわれ、この器具のトレーニングは有力な手段ということができるでしょう。

症例1

 脳梗塞でリハビリ中の患者さん(70歳代)です。1日3回のパタカラで口唇の閉鎖のトレーニングを行い、それに続いて一連の運動を行った結果、目元、口元だけでなく姿勢も著しく改善し、流嚥(ヨダレ)も改善し、日常生活も非常に改善しています。プライバシーの関係で目を隠していますが、先ず最初に目の輝きが変わってくるので、非常に印象的です。

パタカラ開始時

2週間後

1ヵ月後

 

症例

 常習的口呼吸習慣のある小学2年生です。上顎前突、下顎劣成長の患者さんです。口唇閉鎖不全で口呼吸特有の姿勢をしています。パタカラストレッチを1日4〜5回欠かさず行っていくことにより、口唇の閉鎖が無理なく自然にできるようになり、口腔周囲筋、顔面筋、舌骨上筋群もしまってきています。体の左右差は噛み癖の矯正と、構造医学のWB体操を行って改善しています。

開始時
 
四週間後
 
八週間後
 
十二週間後
 
十五週間後
 
           

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