咬合誘導の効果

目次 口腔と健康の関わり なぜ咬み合わせが悪いと良くないの? 赤ちゃんからの咬合誘導 歯並びが悪いと抜歯するの? 健康のために何をすべきか 顎関節症 たばこについてもっと知ってみませんか 作者紹介 リンク

 歯が舌側(内側)に倒れて歯列が狭くなると、歯の並ぶスペースがなくなって、歯列不正になるだけでなく、咬み合わせが低くなり歯並びの幅も狭くなって、舌の納まるスペースも足りなくなり、呼吸が苦しくなったり、正しい咀嚼(そしゃく・かみくだく)、嚥下(えんげ・飲み込む)運動が出来にくくなります。また、早期に成長発育をコントロールして、よい咬み合わせに誘導していくことは、健康のためにも大変有効です。

いつから積極的な咬合誘導を始めるか?

 反対咬合(受け口)の場合、早期(4〜5歳位)からチンキャップ(頭に帽子のようなものをつけ、下アゴをゴムで引っ張る装置)で、上の前歯が下の前歯にかぶさるような形にして反対を治します。そして、スペース不足については、上下の前歯と6歳臼歯が生えたころから行ないます。私が多用しているウイルソンの3Dシステムでは歯列弓長の保隙とともに、拡大や舌側傾斜の修正を行い、歯の生えるスペースを確保していきます。症例2の術前と誘導後を見ていただいても分かると思いますが、下顎の前から5番めの第二乳臼歯(乳歯)と第二小臼歯(永久歯)の大きさ(幅)を比べてみて下さい。データでは第二乳臼歯の方が2mm程度大きいため、歯列弓長(歯列の入る長さ)の保隙を行なうことによって永久歯の生えるスペースが確保できます。あまり遅く始めると、第二大臼歯(12歳臼歯)も萌出し、前述のスペースの差を利用できなくなるため、抜歯しなければならないケースが増えてきます。

 

[症例1]

術前

 7歳

    正 面

     上

     下

拡大後

9歳

 この患者さんは、乳歯列から歯並びが悪く、前歯に叢生(八重歯)があり、交換期(7歳)には上の写真のようになりました。下顎の乳犬歯(乳歯の糸切り歯)の間には4本の永久歯が生えるはずですが、3本分のスペースがなく、1本は歯と歯の間にはさまって出ることができません。そこで3D装置により拡大とともに、スペースの獲得を行なうことにより、このようなスペースが確保できました。このことにより、舌のスペースが確保され、呼吸も大変楽になっています。この状態にあわせた、舌のトレーニングを行なって安定した咬み合わせを育成していきます。

 

[症例2]

術前

10歳

    正 面

     上

     下

誘導後

12歳

 この患者さんは、咬み合わせが深く酸素交換が悪いため、朝起きたときに偏頭痛を起こすことがありました。また、笑った時に上の歯ぐきが見えるのが気になっていたとのことですが、上下に3Dリンガルアーチという、外から見えない装置を入れて誘導することで、このように咬み合わせも改善し、偏頭痛もなくなり、笑った時に歯ぐきが見えることもなくなりました。歯の捻転(ねじれ)や歯の隙間については、必要に応じてブラケット(歯につける金具)を使用して、簡単な仕上げで終了することができます。


赤ちゃんからの咬合誘導indexへ歯並びが悪いと抜歯するの?