路地から見たまちづくりの作法
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自己生成的な空間が生成される街、

されない街

プリミティブな集落

画像uenl015 改行マーク以上が、 ケーススタディ的に見たものです。

改行マーク次に、 今までお話ししてきたような自己生成的な空間、 例えば非整形的な空間というのは、 どういう街にあり、 どういう街にないのかということを見ていきたいと思います。

改行マーク左はチェンマイの郊外の、 標高1,000m近い山の中にあるミャオ族の集落の一つです。 ご覧のように少し観光化されていますが、 日本の山村集落でもちょっと前まではこういったものに近い景色があったと思います。 道というよりも空き地に近いような空間を介して建物が建っていて、 しかもその公私の領域は非常に曖昧になっています。 こういういわゆるプリミティブな集落に、 非整形的な空間が見られます。

改行マーク右側のスライドは、 やはりプリミティブな集落の一つといってもいいかもしれません。 ギリシャのサントリーニ(Santorini)島にあるカルテラドス(Karterados)という街です。 サントリーニ島の北側というのは火山灰がつもった緩い斜面になっていて、 そこにかなり多くの浸食谷があります。 そんなに大きな谷ではないのですが、 その浸食谷の中腹をくりぬいて横穴住居が作られています。 その一番底の部分に通路が、 まわりの建物の余白みたいな形で作られています。

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スプロールエリア

画像uenl016 改行マークこれまでがプリミティブな集落に見られる非整形な空間でしたが、 もう一つの非整形な空間としては、 いわゆるスプロールエリアがあげられます。 スプロールエリアも整形的な空間が作られにくいところです。

改行マーク左は東京の稲城市です。 ここはナシ畑があったところですが、 そこがだんだん市街化して、 農地と市街地のエッジが複雑な形になっています。 建物の方向もばらばらで、 エッジの形態が非常に複雑です。 こういったところがだんだん埋まっていくと、 全体として非整形的な街が生成されていきます。

改行マーク右は尾道の西土堂で、 スプロールエリアの典型的な形だと思います。 道があって家が建つということではなくて、 それぞれ家を造るという必要があって、 だんだん道が山へ向かって延びていったということがはっきりと読みとることができます。

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スクウォッターエリア

画像uenl017 改行マーク次のグループはスクウォッターエリア(不法占拠エリア)です。 プリミティブな集落と不法占拠エリアの違いは、 制度的に合法であるのか非合法であるのかという違いだけで、 形成の基本原理はほとんど同じですす。

改行マーク左は香港のシャオキー湾という所の山際にあったスクウォッターエリアです。 複雑な空間を作り上げています。 こういったものが作られながら、 だんだん道が延びていったのだろうと思います。

改行マーク右は香港のスクウォッターエリアの一つの鑚石山というところです。 これは、 カイタック空港のちょっと山側に行ったところにありました。 かなり大規模なスクウォッターエリアだったのですが、 今はほとんどないと思います。

改行マークシャオキー湾は傾斜地ですから複雑な形の道になるのは分かるのですが、 鑚石山の場合にはほとんど平坦地です。 平坦地でもやはり、 こういった街の生成過程では、 まっすぐにはできないということです。

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外挿的な要素で規定される街

画像uenl018 改行マーク以上のように、 非整形的な街はプリミティブな集落をはじめ、 スプロールエリア、 スクウォッターエリアといった街の生成過程で見られる現象だということです。

改行マークそれでは、 整形的な街は、 どういうところで見られるのか。 一つは外挿的な要素によって規定されている街があります。

改行マーク左は福島県の大内宿という街道筋の街で、 集落の内部構造とは関係のない街道という外の要素によって街のあり方が決まっています。

改行マーク右は、 デベロッパーが介在してできた街の例でサンフランシスコです。 もともと生活者のニーズとは関係なく道を通して街の基盤をつくり、 入居者はできあいの基盤を買うという形でここに入ってきます。 こういう場合には、 地形がどんなに複雑であろうと明解な形の街並みが作られる可能性があります。

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計画的に造られた非整形の街

画像uenl019 改行マークそれでは、 計画的な開発が常に先ほどのスライドように明解な形になるのかというと、 必ずしもそうではありません。 先ほど江川さんもおっしゃられていましたが、 いかに非整形の空間を作るかということで、 がんばっておられる場合もあります。

改行マーク左は、 東京の町田市にある埴の丘という、 かなり急な傾斜地にある一種のコーポラティブ団地です。 ここではハウジングメーカーのミサワのユニットをそのまま使っていますので、 建物自体は割合とそろってできています。

改行マーク右は、 住都公団の西宮名塩ニュータウンの西山五番街で、 ここでも意図的に複雑な空間を作ろうとしています。 建築家の遠藤剛生さんの仕事です。

改行マークこういった街がこれまでの自己生成的な街と違うのは、 まず全体的な意図として複雑なものを作っていこうという意図があることです。 ここに住む人がこうありたいから屋根はこの角度になるんだとか、 この大きさになるんだということではありません。

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自然発生的にできた整形の街

画像uenl020 改行マーク自己発生的な集落や街が、 常にゴチャゴチャになるのかというと、 必ずしもそうではありません。

改行マーク左はバリ島のトゥンガナンという集落です。 バリ島の集落は非常に明解なコスモロジーに支配されていて、 建物の方位、 街のあり方、 集落の形態というものがコスモロジーによって決められています。 そういった強いルールを持っている社会は、 自己生成的な街でも整形的な空間を作りだしています。

改行マーク右は先ほどの鑚石山ですが、 強いルールがない場合には、 平坦地でも非常に複雑な住まいの形態を作り出すということになります。

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