1600年(慶長5年)頃、鴻池家の酒蔵で金を使い込んだ使用人が蔵を追い出された事への腹いせに酒に灰を入れて逃げました。
その酒を確認すると酒は澄んで、味がきれいでまろやかになったことから、鴻池新六という鴻池家の当主が酒に灰を入れると酒がよくなると知り研究を重ねました。その結果、他と全く違う酒質を得ることができ、鴻池家の酒がたくさん売れ、その資金を基に鴻池家は莫大な富を得ることとなり財閥を形成したとされています。
この件が及ぼした技術的な内容としては大きく、現在もこの手法が基礎となっています。
お酒を搾ると酒は最初濁った状態で出てきます。この濁りを除くため現在では滓(かす)下げ、ろ過という工程を経ます。
滓下げとは簡単に言うと酒造り用語では、搾りたての酒の濁り部分を滓と呼んでいます。
この滓をそのままにしていると酒に雑味が出たり、色がついたりしてきます。
なのでこの滓の部分を残して、上部のきれいな部分だけ取ることを滓引きといいます。
滓引きを終えると貯蔵前の「ろ過」を行うのですが、当社では精米度の低い、あまり削っていない米で造った酒に対してはこの時点で活性炭を使用します。この活性炭が鴻池家で使われた灰と同じような効果があります。活性炭は悪い香りを取ったり、色を取ったりできるものが多様にありますので酒の状態によって種類や、量を変化させて使用しています。
このように酒造りにおいて非常に効果的な活性炭ですが、使いすぎると酒本来の風味や味を損う原因にもなりますので当社では活性炭の使用を極力控えて酒造りをおこなっています。
鴻池家のあった兵庫県伊丹市鴻池には「清酒発祥の地」の石碑があります。