京都三大葬送地

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京都三大葬送地ーー鳥辺野・化野・蓮台野


 平安時代、京都には葬送の地があった。その代表的な地と言えるのが鳥辺野、化野、蓮台野だ。
「鳥辺野、船岡、さらぬ野山にも、送る数多かる日はあれど、送らぬ日はなし」
 徒然草にて吉田兼好が野辺送りをしない日、つまり人の死なない日はないと記した通り、鳥辺野から火葬の煙が立ちこめない日は一日たりともなかった。

 この鳥辺野界隈、東山三十六峰のひとつである阿弥陀ケ峰の南麓に位置し、今では清水寺への参詣者で賑わいを見せているが、平安時代は葬送地であり、冥土への入口をなしていることから人が容易に近づける場所とは言い難かった。周辺では現在でも多くの墓地を見ることができる。

 さて、鳥辺山の麓にて、こんな伝説が残されている。
 六道珍皇寺から東大路へ向けて坂道を上ったところに一軒の飴屋がある。ある日の夕暮れ、店の主人が店終いをしようと思ったところ、若い女が飴を買いに来た。以来、女は毎晩飴を買いに来るようになった。その様子が尋常ではなかったため、主人は女の後をつけてみた。女は鳥辺野の墓地へ姿を消したという。
 そこで主人は寺の住職とともに最近埋葬された女の墓を掘り起こしてみることにした。すると、墓の中から生きた赤ん坊が見つかり、脇には女が買い求めた飴が散らばっていた…。


 やはり葬送地であった嵯峨野化野は、化野念仏寺で知られている。このあたりも風葬の地であり、後年は土葬の地となった。遺棄され野ざらしにされた死体を哀れに思った弘法大師が、化野念仏寺の礎となる如来寺を平安時代初期に建立したことから供養が始ったと言われている。およそ八千体の無縁仏が祀られており、毎年八月二十三日、二十四日には無縁仏の精霊にロウソクを灯す千灯供養が行われている。

 船岡山の西側一帯を指す蓮台野も平安時代の始めは風葬の地であった。とりわけ枝垂れ桜で有名な上品蓮台寺は、蓮台野墓地の墓守として建立された。皇族の火葬も行われるようになり、後白河天皇の第一皇子である後の二条天皇も蓮台野の地で荼毘に付された。

 また、上品蓮台寺の墓地には源頼光の墓がある。この周辺、かって妖怪土蜘蛛が棲んでいたという。そこで頼光が土蜘蛛を退治したという言い伝えが残されている。ある夜、原因不明の熱病に冒されていた頼光のもとに僧の姿をした土蜘蛛の妖怪が現れた。頼光が名刀で斬り付けたところ、土蜘蛛は上品蓮台寺内の古塚に逃げ込んだそうだ。

 ところで、上品蓮台寺の上品は、極楽浄土での位が高いことを意味している。ただし、この地位につくには、上品蓮台寺より南にある引接寺にて閻魔大王に会い、そこで裁きを受ける必要があったという。引接寺は別名「千本閻魔堂」の名で親しまれており、閻魔の庁を模した本堂には巨大な閻魔大王の像が安置されている。