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ポプラ(白ポプラ leuvkh 黒ポプラ ai[geiroV)

Populus_alba.jpegギリシア・神話〕 ギリシアの伝説によると、ポプラは、へーラクレースに捧げられた。〈冥界〉へとへーラクレースが下りていったとき、彼は、ポプラの枝で冠を作ってもらった。彼の方に向いた葉は、明るい色のままであったが、もう1つの面は、煙のように暗色となった。ポプラの葉が2つの色を持つようになったいわれである。ポプラのシンボル体系の根本は、この異なった2色にある。

 おもしろいことであるが、このポプラの木は、湿った土地に育つのに、今日ではマッチの製造に使われる。つまり水と火の取り合わせが見られる。

 パエトーンの姉妹へーリアデスは、兄の許可なく父である太陽神へーリオスに太陽の戦車の運転をまかせていた罰でポプラに変えられてしまった。

 へスペリスたち(夕べの娘たち)の1人は、聖なる〈楽園〉のリンゴを失ったために、ポプラに変えられた。ゼウスへの供犠としては、白いポプラの木のみが使われた。冥界の神ハーデスは、レウケーをポプラに変えて、地獄の入り口の門に置いた。恋人を自分のそばにおいておきたいためである。

象徴〕 ポプラの木は、また〈地獄〉、苦悩、犠牲、涙と関連があるようだ。葬儀に用いられる木であり、自然の退化する力を象徴する。希望よりは追憶、未来の再生よりは過ぎ去った過去を象徴する。
 (『世界シンボル大事典』)



Populus_nigra.jpeg

ギリシア語では、白ポプラ(Populus alba)と黒ポプラ(Populus nigra)は別物と考える。
 黒いポプラはへカテーの神木だが、これに反して白いポプラは復活を約束する木である。したがってパエトーンの姉妹が白いポプラに化したことは、そこで一団の巫女たちが部族の王の予言をとりついでいるあの黄泉の島のことを暗示しているのである。彼女たちはまたはんの木(klhvqra 学名Alnus glutinosa)にもなったというが、そうだとすればますますこの考えかたの正しいことがわかろう。なぜかというと、このはんの木は、アドリア海の湾頭、ポー河の河口から遠くないところにある黄泉の島キルケーのアイアイエー(「嘆き」)をふちどって生えていたからである(ホメーロス『オデュッセイア』第五書・64および239)。はんの木は、きわめて賢い英雄で火の発明者とされているポローネウスの神木でもあった。ポー河の流減は、青銅期に太陽神にゆかりのある琥珀がバルト海から地中海へと運ばれるルートの最南端にあたっていた。(グレイヴズ、p.229-230)


[画像出典]
上(白ポプラ)Hobi Bahçemiz
下(黒ポプラ)Kew