バビロニア語で「天の山」の意で、ピラミッド形をしており、メソポタミアの諸都市において寺院や宮殿の役割を果たした。この最上段で王は女神との床入りを済まして聖婚を完了したが、それはこの場所が天と地の接点であったからである。ネブカドネザルのジッグラトは7段からなり、7つの惑星球層を表していた。ジッグラトの最下段には7つの穴が掘られ、天界の7惑星球層に相当する冥界の7球層に至る下降口を表していた。これらの穴は、祭司の通過儀礼のうちの死と再生の儀式の際に用いられた。 Mountain.
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
メソポタミアの各都市の守護神の聖域には、人工の小山のような煉瓦造りの聖塔が設けられるのが一般的であった。ジッグラトと称されるが、なぜこのような聖塔が造られるようになったのだろうか。
各都市間の勢力争いが繰り返される中で、上下関係が次第に形成されてくると、各都市の守護神同士の関係も体系づけられる。シュメールの大いなる神々アン、エンリル、エンキ、イナンナ、ウトゥ、ナンナ、ニンフルサグのために、それぞれが守護する都市の聖域中央には聖塔が建設されたが、初めの段階では、たかだか数十センチメートルの高さの神殿土台にすぎなかった。この「土台」の高まりが、シュメールの人々と大いなる神々との隔絶の状況を示すのである。
古代人の考えでは国政は神意に従うものであったから、少数の権力者階級は神意を掌握して、大いなる神と国民との間をとりなす役目を確保するために神を庶民から隔離し、神域を何重もの周壁で囲って、聖所を高みへと押し上げていった。水神エンキの都エリドゥの神殿土台の発展と同じように、天空神アンと大女神イナンナの都ウルクでもそうであった。
もしこれが神に捧げられたもので、「死と復活」を象徴する建造物であれば、ドゥムジとイナンナとの豊穣祈願の聖婚儀礼との関わりが浮上してくるのであるが、現在のところ確証はない。(『古代メソポタミアの神々』p.71)
Hieros Gamos.
シュメール語では、ジッグラトは「ウニル」と記すが、一つ一つのジッグラトにはそれぞれ固有の名前がつけられている。例えば、バビロンのマルドゥク神のジッグラトの名前が「エテメンアンキ(「天と地の礎の家」の意)」であるように、ニップルのエンリル神のそれは「エドゥルアンキ(「天と地の結び目の家」の意)であり、ボルシッパのは「エウルメイミンアンキ(「天と地の七賢聖の家」の意)、キシュのは「エフルサグカラマ〔「国土の高き所の家」の意)」アッシュルのは「エクルキシャルラ(「宇宙の山の家」の意〕など。
アッカド語の文字としては、発音どおりに「ジ・グ/ク・ラ・アトゥ」と綴られる場合もあれば、「ウニル」とシュメール語で記して、それを「ジッグラト」と読ませる場合もあるが、この語は動詞ザカル〔「高くする」の意〕に由来する。個々のジッグラトの名前は、シュメール語をそのまま借用していたようである。(『古代メソポタミアの神々』p.100-101)
バベルの塔は、バビロン市に建立されたジッグラトをさすが、時の流れのとともに、バベルの塔は別の意味を持つ語として一人歩きし、人々に語り伝えられていった。
Babel.