京都の美しさは、都市の美しさ、人工美だといわれています。確かに、家並みの美しさでは他の都市に追随を許しません。その大きな要素が町家の表構え、ファサードであることは言うまでもないことでしょう。
パリやフィレンツェのように、町並みを見ればそれがどこの都市か分かる・・・それが京都洛中なのです。この伝統に培われた街をまもり、次の世代へ着実に継承していくことは我々京都人にとって、重要な課題です。
京町家が現在の形になってきたのは江戸時代のことといわれます。永い歴史の中で、先人の生活の智慧と日々の積み重ねが、京町家を今日の姿へと完成させてきたのではないでしょうか?
例えば通り庭も火袋も、それぞれがそれぞれの目的と利点があってこそのもの、ただ単に美的価値があるからといって残されてきたものではないはずです。
京町家が現在もなおその輝きを失わず、かつ我々現代人の生活に十分寄与するものをもっているということを、我々は今、改めて再認識していかなければならないのではないでしょうか?
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もちろん当店にとって、以前、マンションや店舗を仲介させていただいた方も町家をお探しになる方と同様に、大切なお客さまであることは言うまでもありません。今後ともよろしくお付き合いいただきたいですし、その後のあれこれにつきましては、誠心誠意、お役に立ちたいと考えております。
「京町家」にご入居いただいた場合は、末永くご近所・お町内のみなさまや家主さま・管理会社(賃貸の場合)と快くお付き合いいただきたいと願っております。当店というよりも、私たちにはこの思いが特に強く、また、お客さまにもよくご理解いただきたいと切に願ってやみません。なぜなら、私たちも現在、町家の住人であり、小さいころからこの町家で大きくなってきたからです。ご近所の方々との関わりのなかで初めての社会生活を学び、地域行事のなかで伝統をまもり伝えることの重要さを感じてきました。
「京町家」をお探しのみなさま、京都での暮らしについてご質問があれば、何なりとお訊ねください。私たちでお答えできることは、何でも。
その後の暮らしの中でお困りのこと・・・いっぺん相談してみてください。何か、お手伝いできるかもしれません。職住一致、店の奥に住んでおりますので、留守でない限り、夜中でも何となれば出かけられます。 |
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「京町家の保存・再生」について…
京町家の保存と再生については、市の方も「京都市景観まちづくりセンター」などをつくって前向きには考えておられるようですが、景観という部分では、行政が先頭に立って進めていかないと…と考えます。イタリアのフィレンツェのように、屋根代を全額市がもって整備をするというのはお手本になると思います。
当店は京町家の保存を目的にしているわけではありません。杉本家などのように文化財になってしまったものは別ですが(ただ、当店としては京都洛中を明治村にするつもりは毛頭ございません)、京町家というのは築80年、100年というのは普通ですし(うちでも築70年以上)、保存するのではなく、ごく普通に商売をし生活するための家です。
木の家の寿命は、300年ともいわれています(今の新築は20〜30年)。京町家というのは、旧いからとか建築物(ハコ)としての造形美から価値があるのではなく、今日現在も我々の職住一致の生活に寄与するものが多々あることが京町家としての存在理由であり、すごいところだと考えています。町家と着物、茶わんというのは似ているとつねづね思っています。使ってなんぼのもん、「用の美」です。いくら高級な品でも、お茶がおいしくのめなければ、茶わんとしては一級品とはいえないはずです。
個々の問題としてみると、町家一軒一軒に暮らす居住者が意識を高め、価値を再認識する必要があるはずです。そういう観点からも当店は、京町家・古民家専門の不動産屋として町家の保存・再生を声高に叫ぶよりも、暮らす人をつくっていくことを主眼にしたいと思っています。特に、伝統産業の後継者・職住一致の方を応援しています。
また、何がなんでも旧い家で古い生活スタイルを維持していかなければならないのではなく、個人の好みや居住者の状態によって、家の内部は改装したらよいのではないかと考えています。足腰の悪いおじいちゃんおばあちゃんもいない、子どももいない、もしくはもう大きい…という世代なら、元のままの旧い町家でも住むことは易しいですが、介護が必要な人が居るとか乳幼児がいる家庭では何らかの工夫が必要だと思います。また、以前にはなかった形態のお商売(デイケアセンターとか、多量のPCを使うとか…)の方であれば、それなりに環境を整えることも不可欠でしょう。
改装(リフォーム)の計画・設計については、家の中の改修はやはり生活感のある方でないと、なかなか使い勝手よく…とはいかないものです。「風の会」の方にもお智慧をいただいたりして、どうすればみなが元気に町家に暮らせるか…、今後はそんなことも考えていきたいと思っています。
この、美しい京都洛中を大切にし、孫子の代へとつないでいくことは、京都人みんなの責務です。
私たちは、不動産業を営む企業人としてだけでなく、この街に住み暮らしている京都人として、みなさまに「京町家」を愛していただき、日々の褻(ケ)の暮らしを豊かなものにしていっていただきたい・・・、そんな思いでいっぱいなのです。 |
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