間歇日記

世界Aの始末書


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2002年8月中旬

【8月20日(火)】
▼テレビ通販で「布団圧縮袋」を売ってるガラガラ声の兄ちゃんをひさしぶりに画面で見かける。「逆止弁」とやらで特許を取ったとやたらアピールするやつだ。それにしても、この兄ちゃん、以前と比べてかなり肥ったな。たぶん、儲かってるんだろうなあ。こういうののプレゼンテーターって、実力が認められ名が売れれば、けっこう儲かりそうな気もする。誰にでもできる藝じゃないしね。それに、ただプレゼンが巧いだけではだめだ。そんな人はそこいらじゅうにいる。持って生まれたキャラクターが相当重要だろう。努力だけではどうにもならないはずだ。作家の文体みたいなもんである。いくら話が面白くても文学的に優れていても、キライなもんはキライと言われたらどうしようもない。あの「穴あき包丁」とか売ってるおっさんなんて、顔見ただけで買ってしまいそうになるもんな。あれは才能ですよ、やはり。妙な魅力のあるプレゼンテーターは、観てるだけで面白いもんな。ジャパネットたかたの社長さんとかさ、どこにでもいそうなおっさんなんだが、キャラに天性の“惹き”があるよね。テレビの画ってのは必ずしも真実を伝えないが、そのあたりの妙な魅力はよく伝えるところがある。『ツーハンマン』(テレビ朝日系)なんてドラマができるのもむべなるかなだ。いや、べつにわざわざ観てはいないんだが、最近、金曜日の深夜に帰宅して飯食うころによくやってるもんだから、しばしば観てしまうのである。中村俊介とかいうサッカー選手みたいな名前の男優や、川原亜矢子とかいうオバQみたいな顔のモデル出身らしい女優や、ベッキーとかいうメールソフトみたいな名前の女優などが出ている。ああ、しかし、草刈正雄って、いつのまにかすっかり“怪優”と分類される域に達してしまったなあ。『復活の日』の吉住が、テレビ通販会社の社長になって毎週脱力駄洒落を言っておる。あれから二十年以上経ってるもんなあ。ま、近年の草刈正雄のほうが、なにやら不思議な境地に到達していて好きだけどね。

【8月19日(月)】
▼会社の帰りにソフマップに寄り、「Pocket LOOX」用のシリアルケーブルを買う。聞いて驚け、おれの“母艦”ノートパソコン「カーリー・ドゥルガー」には、USB端子などという気の利いたものは付いていないのだ。それくらい古い。犬的には二十八年以上前のパソコンだからな(“通常のカレンダー”では四年前だが)。とはいえ、Pocket PC 機というやつは、母艦のパソコンがなくてはソフトのインストールすら満足にできない仕様であるから、繋がないわけにはいかないのだ。まあ、本体は“当てもの”でもらえたことだし、ケーブルくらいは買おう。
 シリアルケーブルは買ったものの、まだ問題はある。母艦のOSは、いまだに Windows 95 なのである。でも、OSをアップグレードしたのではまた余計に高くつくし、そもそもカーリー・ドゥルガーのスペックでは Windows 95 くらいが最も快適で安定しており、昨今のバカでかいOSなど入れたところで、OSを走らせるのが精一杯になってしまいかねない。そもそもハードディスクが足らん。で、問題というのは、Microsoft ActiveSync(PDAと通信をしたり内容の同期を取るためのソフト)の最新版が、Windows 95 では使えない点である。そこで、Windows 95 時代の ActiveSync 3.1 を入手し(一応、マイクロソフトはまだ無償で配っている)、強引に Pocket PC 2002 と繋いでみた。おお、繋がるじゃん。Pocket PC 側で「バージョンが合わない」といったエラーは出るが、PCはちゃんと Pocket LOOX の半導体メモリ類をディスクドライブとして認識する。ファイル転送も可能だし、Pocket LOOX にソフトのインストールもできた。ActiveSync 3.1 が Pocket PC 2002 を相手にできないのは、要するに、Microsoft Outlook と Pocket Outlook の同期を取ることなのである。ふつうなら大いに困ると思うところだが、おれはべつに困らない。Outlook などという世界中のウィルス開発者にとてもとても愛されている物騒なソフトは、そもそもカーリー・ドゥルガーには入れてないからだ。買ったときには Outlook Express が入っていたが、アンインストールした。
 じゃあ、バックアップはどうするのだということになるが、Pocket LOOX 上でSDにバックアップするからいいのだ。Pocket LOOX をまるごと落としたときのために、定期的にSDの内容をPCにバックアップすることにしよう。
 なんにせよ、ActiveSync 3.1 でもとりあえず Pocket PC 2002 が使える(言っとくが、正式サポート対象ではないよ。同じことをやってみる人は、自己責任でね)ことがわかったので、ひと安心である。繋がらなかったら、タダでPDAを手に入れたためにPCを買い替えねばならないというケッタイなことになりかねなかったところだ。それにしても、四年でここまで古びてしまうとは、いつもながらパソコンとケータイってのはとんでもない商品だと思うねえ。

【8月18日(日)】
「Pocket LOOX」をいじくりたおす。さしあたり、メールの送受信ができ、ウェブページが閲覧できるようにはする。はっきり言って、Pocket PC 機にはネット端末としての機能しか、あんまり期待してない。文字どおり、小さいPCを扱っている感覚である。オーガナイザとしての洗練度は、Palm OS 機やザウルスの敵ではあるまい。
 それにしても、現時点で最高の性能を持つ機種のひとつでありながら、動作が妙に遅くていらいらする。いま使ってる骨董品のザウルス・アイゲッティよりはいくらかましだけどね。まあ、パソコンなんだから、工場出荷時の状態がベストであるはずがない。正規の、あるいは裏技のチューニング方法はいろいろあるにちがいない。そこいらはぼちぼち情報収集するとしよう。
▼なんてことだ。先週に引き続き、またもや冷製パスタを作る。先週食ったばっかりではあるのだが、母が熱烈に食いたいのだそうだ。先週の手抜き冷製パスタでもあれだけうまかったのだから、ちゃんとした材料で作ればもっとうまいにちがいないと、母は近所の少し大きな食材店でバルサミコ酢を買ってきている。モッツァレラチーズもある(母はいまだに「モッツァレラチーズ」という名前が覚えられないが、実物は知っているから、店ではなんの支障もなく買えるらしい)。トマトもとびきりうまそうなやつを選り分けて買ってきたという。生憎、カッペリーニに分類されるような細いスパゲッティはなかったそうで、近所で売ってる中では精一杯細いのを買ってきたそうだ。うーむ、まあ、おれもパスタならいくらでも食えるから、今週もやるとするか。
 で、作った。う、うまい。バルサミコ酢を入れると、全然風味がちがうではないか。パスタの小麦の風味がふわあといっそう引き立つ。やっぱり、正統レシピにはそれなりの理由があるものであるな。なんでもかんでも省略してはいけない。とはいえ、あいかわらずバジルの葉は使わず、またもや粉末のブーケ・ガルニで代用する。こんなフランス料理みたいなものを使っている冷製パスタがあるかどうか知らないが、これは怪我の功名でたいへんうまいので、もはや代用品ではなく、おれ流のレシピとして正式に認定することとする。「トマトの冷製パスタ Scarborough Fair 風」とでも名づけよう。ブーケ・ガルニの内容物のラベルを読んでいると、思わず Scarborough Fair を唄ってしまうからである。読者諸氏も、騙されたと思って、一度使ってみられたし。ちなみに、こういうまともな料理は、「マダム・フユキの宇宙お料理教室」の対象としては分類しない。
 しかし、こんなにパスタばっかり食ってたら肥りそうだよなあ。なんでも、昨今流行りの低インシュリン・ダイエットとやらでは、炭水化物でもパスタは肥りにくいらしいのだが、やっぱり程度問題ではなかろうか。でも、うまいなあ。

【8月17日(土)】
▼夜、「Pocket LOOX」がようやく届く。昨日、「えろう遅うなってすんませんでした。やっとこさで発送しました」という内容の標準語のメールが懸賞主催者から届いていたので今日来ることは知っていたが、ほんまに、やっとこさ来たわい。
 ふむ、おれの手にはホールド感がちょうどよい。おれの手は指が細長くて比較的大きいから、これはちょっと平均的な女性にはつらい大きさだと思う。とりあえずは、まず満タンに充電することとする。本体のデザインは曲線を活かした欧風のイメージでなかなか面白いのだが、クレードルのデザインはひどいね。美的にも実用的にもだ。クレードルが本体をがっちりくわえこむようになっていて、片手でクレードルをしっかり押さえておかないと本体の着脱が難しい。これはちと不便だよなあ。H"端末の「KX-HV200」みたいに、本体にも充電器にも剥き出しの金属端子がない仕掛けにできないものか。どうなってるのか詳しくは知らんが、おそらく電磁誘導を利用しているのだろう。九州松下電器はむかしからこれがお得意で、初代のH"端末から金属端子はなかった。初めて店頭で見たとき、「へええ、手品みたい」と感心したものだ。この点が気に入っているファンも少なくないと聞く。KX-HV200 の充電器なんて、コードがなかったらただのプラスチックの台にしか見えない。そこに電話器を乗せるだけで、あら不思議、充電ができてしまうのである。なにしろ乗せてあるだけ、充電器が電話器本体をまったく拘束しないため、横着をするときなど、ストラップをつまんでしゃくりあげるだけで電話器が手の中に飛んでくる(よい子のみんなは真似しちゃだめだよ)。それくらい使いやすい。それに比べると、Pocket LOOX のクレードルはなってない。本体に精一杯で、こういうところのユーザビリティーにまで気がまわらなかったのだろうか。いちいち充電器を押さえて本体を取り外す(そう、まさに“取り外す”という感じだ)のは、かなりのストレスである。まあ、クレードルは充電のためだけにあるわけではないから、端子をなくすことはできないだろうが、もう少し手軽に着脱できるようにはできなかったのか。まあ、これだけ本体をしっかりくわえこんでいれば、端子の傷みが少ないという利点はあるんだろうけどねえ。

【8月16日(金)】
『スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃』のテレビCMに遭遇。映画を観終えた人が劇場ロビーで嬉々として感想を語るという、最近よくあるタイプのやつだ。若い女性が興奮も醒めやらぬようすで、「あんなにすばやいヨーダを見たのは初めてです!」などと言っている。おれは反射的にテレビのほうの空中に向けてバックハンドで右手の甲を叩きつけていた――「みな、初めてじゃ」
 いやまあ、『スター・ウォーズ』のこっちゃから、六度めくらいの人もざらにおるやろうけどな。

【8月14日(水)】
▼電車に乗りドアの横の空間に立つと、目の前に車内広告。サラダ油かなにかの宣伝だ――という書き出しの日記が過去にあったが、今回もまったく同じシチュエーションである。ただし、サラダ油の広告は文句が変わっている。「超油っこくない。コレステロール0」
 はて、「超油っこくない」とはいったいどういう意味か? 「かなり油っこくはあるが、超油っこくはない」ということだとふつう思うよなあ。強調と否定とを同時に使うときは、論理構造に気をつけなくてはいけない。まあ、作家でもこの手の意味不明瞭な文章を書いているケースにときおり遭遇するから、寝不足のときなどはとくに注意が必要だ。そのまま市場に出たとしたら、これは編集者も悪い。編集者も寝不足だったのだろう。そういえば、論理積の否定と論理和の否定とがゴチャゴチャになっている人もたまにいるよな。不幸にもプログラマになっている人がいたりするくらいだ。そういう人を相手にするとなぜか小林泰三さんはとても喜ぶので、見つけたらぜひ教えてあげよう。
 まあ、このコピーは、そこを話題にしてもらうことを狙ってるんだろうけどねー。ちゃんと話題にしてあげたよ。ところが、狙ってなかったりして。

【8月11日(日)】
▼暑いうちに一度、冷製パスタを食わねばならんなと、珍しくまともな料理に取りかかる。といっても、おれは冷製パスタなど作ったことがない。熱いやつはしばしば発作的に夜中に茹でて食ったりしているが、具は出来合いの缶詰だの粉末だのを使う。まあ、おれは基本的にパスタが好きであるから、作って作れんことはあるまい。なにごとも基本は対象への愛情である。なあに、結局、化学の実験みたいなものだろう?
 まずはレシピを探さねばならない。こういうときにインターネットは便利である。便利すぎて、いろんな流派のものが次々と出てくる。最終的に、やはり対象への異様な愛情が感じられる「男は黙ってパスタを食う」のレシピをベースにする。いやしかし、このサイトを運営してる人はパスタの鬼だね。いっそ狂っていると言ってもいいほどのパスタ・マニアだ。思わず、「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」(かまやつひろし。ま、ムッシュかまやつでもいいけどさ)を口ずさんでしまう。「♪そうさ、なにかに凝らなくてはダメだー、狂ったようにー凝れば凝るーほど、君はひとりの人間としてしあわせな道を、歩いているだろう〜」 話は逸れるが、これ名曲だよねえ。かっちょいい。大好きなのだ。たしか小学六年か中学一年くらいのころだったかと思うが、「我が良き友よ」のシングルを買ったらB面にこいつが入っていて、こっちのほうがすっかり気に入ってしまい繰り返し聴いていた。子供のころに憶えたことというのは怖ろしいもので、いまでもソラで唄える。そういえば、よく考えたら、おれ、ゴロワーズ吸ったことないな。いっぺん吸ってみなくては。もちろん、短くなるまでだ。
 それはともかく冷製パスタである。トマトやらモッツァレラチーズ(こいつは近所で売っていた)やらでいそいそと具(って言うのか?)を作る。バルサミコ酢? そんなもんうちにあるもんか。省略する。まさか日本の酢を入れるわけにもいかん。次回やるときまでには買っておくとしよう。バジルの葉? そんなもんうちにあるもんか。しかたがないので、手近にあったブーケ・ガルニをふりかけて代用する。むちゃくちゃだが、一応バジルも入ってはいるだろう。具を冷やしているあいだにパスタを茹でる。カッペリーニ? そんなもんうちにあるもんか。買い置きの太いパスタをそのまま使う。パスタを茹でるのは得意だが、冷製でしかも横着して太いやつを使うわけだから、いつもより一分二、三十秒ほど長めに茹でる。
 できあがったので、食ってみる。じつは、今日はこれが晩飯なのだ。量も並の一・五倍はある。おおお。う、うまい。嘘のようだ。ブーケ・ガルニが怪我の功名である。驚いたことに、チーズが食えない母が、これなら食えるうまいうまいと、おれと同じくらいの分量を平らげてしまった。パスタだけでも百五十グラムずつはあるのに大丈夫か。どうやらおれは冷製パスタの天才であるらしい。具の味つけはともかく、一応、パスタだけは茹で慣れているからな。そうやっておだてておいて、しばしば晩飯をおれに作らせる気だな。こんな手のかかるまともな料理をそうそうしょっちゅうやってたまるものかと思いつつ、マジでうまかったので、たぶん涼しくなるまでに二、三度はやるだろう。やらんかもしれん。ま、パスタはパスタの風が吹くってこのネタ使ったの二度めだよな。


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