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2002年8月下旬 |
【8月30日(金)】
▼ザウルスのブンコビューアに Pocket PC 版が出たというので、さっそくダウンロードして「Pocket LOOX」にインストールしてみる。「ブンコビューア」というのは、ザウルス用の電子書籍「ザウルス文庫」を読むためのソフトで、無料で配布されている。以前は「ザウルス文庫」などといってもただのテキストファイルで、べつにパソコンのエディタでだって読めたものなのだが、いつのまにかハイパーリンクやら画像やらマルチメディア的な機能が増えてきて、ほんとにザウルスのブンコビューアじゃないと読めなくなったのである。
説明書きでは Pocket LOOX は対応機種に入っていないのだが、他社のARM系CPU機に対応しているのだから、まず大丈夫だろう。案の定、ちゃんと動いた。
すでに出ている《ハヤカワSFシリーズ Jコレクション》の立ち読み版を全部ダウンロードし、Pocket LOOX で読んでみる。おおお、読める読める。試読版には、本文はほんのちょこっとしか入っていないのだが、だいたい感覚は掴める。これならPDAでも丸一冊読めるだろう。とはいうものの、紙版が手元にあるんだから紙版を読みますけどね。「どうしてもザウルス文庫でも欲しい」、つまり、データでも手元に置いておきたい、データで持つ必要があると思ったら、そのときは買うかもしれない。単語を検索しながら、あっちへ跳んだりこっちへ跳んだりと、徹底解剖するにはデータのほうが便利だからだ。検索しながら読まれるなんてことは、過去の作家は想像だにしなかっただろう。まあ、いまでもそんな読まれかたを考慮に入れて書いている作家があるとは、あまり思えないが……。ミステリなんかだと、検索しながら読めるというのは、革命的な出来事だと思うんだよな。「謎解き場面の前に、この“有野倍太郎”という名前が出てくるシーンだけ、もう一度、ざっとチェックしておこう」なんてことが容易にできてしまうのだ。読者が推理をより楽しみやすくなるのではなかろうか。文字遣いの不統一がばれやすいなんてこともあるが。
【8月29日(木)】
▼いわゆる“ハードSF”ジャンルの代表的作家であり、SFに適用されるサイエンスに関して最も信頼できるアイディアマンまたはアドバイザとしてもその名を知られるロバート・L・フォワード氏が危篤状態だと、野尻抱介さんのところの掲示板で知る。脳腫瘍だというから、突然奇跡が起こって良くなるなんてことはありそうになく、また科学者であるご本人がそんなことを信じているはずもない。科学者というのは、こういうときにどのような気持ちになるものなのであろうか。やはり最後の瞬間までおのれを観察し続けるのだろうか。科学者として最も興味深い瞬間を他人に伝えることができないのは、さぞやつらいだろうなと思う。それがいちばん辛いのではないかと思う。
▼帰宅してテレビを点けると、『中高年のためのパソコン講座』ってのをNHKでやっていた。おれの役には立たないけれども、なかなか面白い。これを観てパソコンを勉強しているであろう人々の「ああ、こんなことができるようになったのだ。すごいなあ」という素朴な感動が共有できる。パソコンがほとんど身体の一部のようになっている人も、こういうのをたまに観るのは精神のバランスを取るのによいのではないか。すっかり空気のようにあたりまえになっているものを新鮮な視点で見直させてくれるわけだから、ある意味、SFに近いものがあるかもしれない。
▼コナミの『サンダーバード』食玩、コンビニに寄ると『VOL.2』が出ていた。このラインナップだったら、ペネロープ(というのはじつは“誤音訳”で、Penelope は“ペネロピー”とでもするのがほんとは正しい。原語ではそう言っている)のロールスロイスが欲しいなあと、売り場の真ん中あたりからひとつ引き抜いて買う。帰って開けてみたら、はたしてピンク色のロールスロイスが出てきた! ちゃんとパーカーも乗っている(あたりまえだ。乗ってなかったら誰が運転するのだ)。「しゃる・うぃ・ていく・あ・りとぅー・どら〜いヴ、ぱーか」「いぇす、ま・らいでぃ」などと一人芝居をしながら、しばし車内を覗きこむ。よぉーできとるのぉー。
いやいやそれにしても、最近おれのくじ運はどうなっているのだ。とうとう、貯まりに貯まったくじ運の大放出がはじまったのか。
【8月28日(水)】
▼『ショムニ ファイナル2』というテレビドラマ名を突然思いつく。いいなあ。人を食っている。これが終わったら、もちろん『ショムニ ファイナル#』『もーっとショムニ ファイナル』、以下、お約束である。『ショムニ ファイナル・ブラックRX』ってのもアリか。
▼会社の帰りにジュンク堂大阪本店に寄る。レジで金を払っていると、「トンパ文字の本ありますか?」と店員に尋ねている青年がいた。最近、流行ってるのかね? そういえば、どこかの缶入り茶にアレが書いてあるやつがあるな。でも、トンパ文字の普及(?)には、やはり坂村健氏が大きく貢献しているだろう。以前、講演を聴きにいったときにも、TRON上で走る「超漢字」のデモで、「坂村健」という名を嬉々としてトンパ文字で表示して見せていた。聴衆の大半を占めていた年配のおじさんたちは、「だから、なに?」といった感じで面食らっていたみたいだ。そんなことができたとて、いったいなんの役に立つのかわからんのだが、役に立ちそうにないことを嬉々としてやっているところに、非常に好感を覚える。まず面白いことが重要である。また、それがなんであっても、できないよりはできたほうが楽しいではないか。こういうメンタリティーの人は、一歩道を踏み誤まると、「では、次にクリンゴン語で……」てな具合になるのだろう。もう踏み誤まってたりして。
【8月27日(火)】
▼以前にこの日記でも取り上げたが、なにかと話題の風邪薬の成分、PPA(塩酸フェニルプロパノールアミン)に関して、ようやく「厚生労働省は安全とされる代替薬に切り替えるよう製薬各社に要請した」(毎日新聞)とのこと。その理由というのが、「各国で中止が相次いだため」らしい。なんだか、アレですな、日本の薬事行政というのは、勲章みたいですな。ほれ、誰かが外国の勲章をもらったりノーベル賞をもらったりしたとたん、日本のいろんな賞やら勲章やらが堰を切ったように揉み手をしながら押し寄せるのとそっくりだ。大江健三郎でなくたって、情けねえと思うよな。
上述の毎日新聞の記事でコメントを取られているお医者さんが、こんな指摘をなさっている――「米国で問題になった時にすぐに切り替えを進めるべきだった」
そういえば、四十年前にも西ドイツで問題になったときにすぐに回収すべきだった薬がありましたなあ。おれは忘れないぞ。若い読者の方々にも覚えておいてほしい。まだ、厚生労働省の体質はちっとも変わってないのだ。一九六二年生まれの人間の使命として、おれはサリドマイド禍のことは一生語り継いでやるぜ、厚生労働省殿、大日本製薬殿。
【8月25日(日)】
▼またまた晩飯にトマトの冷製パスタを作る。どうもまんまと料理をさせられているだけのような気もするが、まあ、うまいからいいか。パスタ好きのおれが飽きないのはわかるが、母もよく飽きんものである。
▼『発掘!あるある大事典』(フジテレビ系)をひさびさに観ていると、「DHAは天然のサプリメント」などととんでもない言葉遣いをしている。天然やったら、サプリメントやないやないか。しょっちゅう観るわけではないが、どうもこの番組は胡散臭い。ちょっとした言葉遣いの端々からも、えもいわれぬ胡散臭さが漂ってくる。おれとしては、「発掘あるある大事典(教養ドキュメントファンクラブ)」のほうが、本家よりもはるかに面白いんだけど。
【8月24日(土)】
▼なんだか最近、テレビではコンピレーション・アルバムのCMばかりやっている。要するにみんな金がなくて、品質の保証されたお得感のあるものがウケるんだろうなあ。
そこでおれは思うのだが、むかし筒井康隆が編んでいた《日本SFベスト集成》シリーズ(徳間文庫)みたいなものが、不況のうちに(?)出るとウケるのではあるまいか。「SFセミナー'98」の夜の部の企画に、「日本SF全集を出そう!」ってのがあったけど、べつに全集でなくたっていい。そりゃあ、日下三蔵・星敬編で全集が出るに越したことはないけれども、もう少しこぢんまりとしたものを最初から文庫版で出すのはどうか。いわば、中村融・山岸真編の《20世紀SF》シリーズ(河出文庫)の日本版みたいなやつだ。あるいは、《20世紀SF》の日本版だとどうしても網羅的なものにしようという色気が出てしまうかもしれないから、ここはひとつ、筒井ベスト集成の平成版のようなノリで、当代の人気作家が独断と偏見で「私の20世紀日本SF短篇ベスト集成」を一冊ずつ編んでゆくなんてのはどうだろう? 井上雅彦がすでに《異形アンソロジータロット・ボックス》シリーズ(角川ホラー文庫)で似たようなことをやっているけれども、あれをいろんな作家を編者にして日本SF短篇を対象にやるわけである。そういう企画なら、評論家や編集者を編者にしないほうがいいと思うな。習性として“独断と偏見”度が落ちるだろうし、編者名で一般読者を惹けないからだ。しかし、いま思えば、筒井ベスト集成は、独断と偏見で選んでいるかのように思わせつつ、結果的にずいぶんとバランスの取れたものになっていたのだから、やはり筒井康隆の眼力は怖ろしい。「ああいうものを考えてまして……」などと依頼されたら、たいていの作家は尻込みしてしまうだろう。うーむ、難しいなあ。
【8月23日(金)】
▼《ご恵贈御礼》まことにありがとうございます。
「Treva」で撮影 |
おなじみ“日本の椋鳩十”((C)北野勇作)が今回繰り出してきたのは、イカである。北野勇作の小説は、しばしば言われるように、また、おれも言ってきたように、北野勇作がこの世界を見たまんま、感じたまんまに書いているようなところがあって、ふつうの人がフィクションにするつもりでそれをやると、ウェブ上にいくらでも例が転がっているとおり、面白くもなんともない身辺雑記になるか狂人のたわごとになるかのどちらかであると決まっているのだが、北野勇作の場合は不思議なことにちゃんとしたSFになるのである。北野勇作はまぎれもなく、「あらかじめ自らの人生に刻印されたサイエンス・フィクションの模倣的反復を、あたかも荒唐無稽な創作であるかのように誤読せざるをえなかった人々」と巽孝之が『現代SFのレトリック』(岩波書店)で定義してみせた「本質的なSF作家」の一人に該当する。作風はまったくちがうが、“創作する存在としての構え”はフィリップ・K・ディックなんである。本書ではとうとう、売れないSF作家「K」が主人公として登場。北野勇作がこういうことをやってもちっとも自虐的な感じがせず、ギャグですらない。ひたすら、のほほんとしていながらも冷徹に客観的な、いつもの“強靭な日常描写”以外のなにものでもないのである。なあに、SFが売れないと言われているらしいのは誰のせいでもなく、イカ星人の陰謀なんだから、おれたちが気にかける必要はまったくないのだ。どうだ、まいったか。
というわけで、むかしは神林長平が“日本のフィリップ・K・ディック”と呼ばれていたものだけれども、おれとしては、二代目・日本のフィリップ・K・ディックは、北野勇作に襲名してもらいたいと思っている。なにを書いても同じ世界の話のような気がするとか、主人公がいつも客観的にはやたら情けないやつだとか、表面的な類似点も非常に多いが、なによりもその本質を“のほほんディック”とでも捉えるのがしっくりくると思いませんか、北野作品って? 最近おれには、北野勇作がディックの光学異性体のような感じがしてきてならないのだが、イカなものであろうか。
【8月22日(木)】
▼「Pocket LOOX」の手書き入力にバグがある。というか、これは Pocket PC 2002 のよく知られたバグらしいのだ。他のハードウェアメーカの Pocket PC 機でも、軒並み同じ現象が生じているそうだ。メインメモリがやや窮屈になってくると、キーボードタイプ入力から手書きタイプ入力に切り替えることができなくなる。こんなバグを残したまま商品として売っているなんて、いかにもマイクロソフトらしい。もちろん日本語版だけにあるバグなんだろうけどねえ。
とはいえ、こいつの手書き入力は、少なくともおれの筆跡に関するかぎりは、前に使っていたザウルスより賢いし、ハードの性能上当然のことだが、変換も速い。さほどストレスを感じることなく、ほんとうに手書きで入力ができる。せっかく“使える”手書き入力なのに、バグが惜しいことだ。
満天の星をいただく果てしなき流れの果に
豊かに流れ行く太陽風交点に心を開けば
きらめく星座の物語も聞こえてくる
千億の夜のしじまのなんと饒舌なことでしょうか
光と影の境に消えていった事象の地平線も
目蓋に浮かんでまいります
というわけで、唄う経済学者マイソフさんがあなたにお送りする音楽の定期便、ジェット――じゃない、第六回『アニソン縛り紅白歌合戦』である。もはやこれがないと年が明けない恒例企画だ。毎年十一月中旬から十二月初旬にかけてやっているこの企画だが、今年はなぜかマイソフさんは八月だというのにに送ってきてくださったのであった。「現在間歇日記はおよそ3カ月遅れているので、いま送っておくと11月下旬ごろに公表されてちょうどいいのではないかと思います」というのだが、ははは、いくらなんでもそんなに遅れはしないだろう。あは、あははははは、は、はは。
ときどきウェブを流していると、思わぬところで、マイソフさんのこの企画を楽しみにしている人に遭遇したりして感心する。やはり、“スジ者”には、けっこうウケている企画のようだ。毎年毎年この日記にネタを提供してくださるマイソフさんには、改めてお礼を申し上げます。よくネタが尽きないものである。今回も「鑑賞の手引き」付きだ。それどころか、今年はとうとう、『アニソン縛り紅白歌合戦』鑑賞の手引きのメニューまで作ってくださった。
それでは、さっそく行ってみよう。みなさまの夜間飛行のお供をするパイロットは、私、冬樹蛉です――。
第六回「アニソン縛り紅白歌合戦」(出場順) | |||
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ZARD | I wish [デジモンアドベンチャー] | ポケッターリ・モンスターリ [ポケットモンスター] | タケカワユキヒデ |
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大黒摩季 | 愛はブーメラン [うる星やつら2 ビューティフルドリーマー] | Dream City Neo Tokio [未来警察ウラシマン] | チャーリー・コーセィ |
岩崎宏美 | ロックリバーへ [あらいぐまラスカル] | Let's GO いいことあるさ [ポンキッキーズ] | JAM Project |
OSK日本歌劇団 | 御旗のもとに [サクラ大戦3] | 恐竜戦隊ジュウレンジャー [恐竜戦隊 ジュウレンジャー] | 尾崎紀世彦 |
松任谷由実 | 夜の歌 [カードキャプターさくら] | 妖怪にご用心 [ドロロンえん魔くん] | 吉幾三 |
和田アキ子 | ありがとう [ありがとう] | 男はつらいよ [男はつらいよ] | 細川たかし |
宇多田ヒカル | ヘミソフィア [ラーゼフォン] | 時代が泣いている [機動戦士ZZガンダム] | 松崎しげる |
岩男潤子 | ミスター・アンデルセン [アンデルセン物語)] | にんげんっていいな [まんが日本昔ばなし] | 氷川きよし |
ANGEL | わたしのつばさ [おジャ魔女どれみ ドッカ〜ン!] | ダンバインとぶ [聖戦士ダンバイン] | 西城秀樹 |
田中真弓 | ワイワイワールド [Dr.スランプアラレちゃん] | ロボタンの歌 [ロボタン] | 山寺宏一 |
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globe | THE REAL FOLK BLUES [COWBOY BEBOP] | スターダストボーイズ [宇宙船サジタリウス] | SMAP |
宝塚歌劇団宙組 | 70年代われらの世界 [70年代 われらの世界] | この星に生まれて [生きもの地球紀行] | 東京混声合唱団 |
黒木瞳 | すみれチャチャチャ [サクラ大戦 CDドラマシリーズ] | 仮面ライダークウガ! [仮面ライダークウガ] | アリス |
天童よしみ | I am... [犬夜叉] | 今がその時だ [真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日] | 北島三郎 |
安田祥子・由紀さおり | いつも何度でも [千と千尋の神隠し] | ウルトラマンコスモス〜 君にできるなにか [ウルトラマンコスモス] | 槙原敬之 |
いやあ、すごいすごい。回を追うごとにマニアックになってくるのだが、今年はまた一段と磨きがかかっている。えー、みなさ〜ん、ついてきてますかー? おれには、とても全部はわからない。誰ですか、そこで片っ端から全曲歌っているのは!? ビョーキやな、あんた。
いや、それにしても、マジで聴いてみたいのは、西城秀樹の「ダンバインとぶ」と、葛城ユキの「PLANET DANCE」だな。頭の中で、ピッタシ声がハマる。安田祥子・由紀さおりの「いつも何度でも」なんて、どっかの歌番組でほんとにやってそうだ。
全部人にネタを作らせて日記を一日稼ぐのもなんだから、今年はおれも、応援のための“特別出演”ということで、趣味に走ってひと組入れてみよう――。
特別出演 | |||
---|---|---|---|
Gackt | ガラスのダンス [加山雄三のブラック・ジャック] | リボンのマーチ [リボンの騎士] | 松浦亜弥 |
「ガラスのダンス」(ヒカシュー)は絶対 Gackt 向きだと思うけどな。ほんとに聴いてみたいんだよ。Gackt さん、アルバムに入れませんか?
さて、恒例の締めだ。今年もプリントアウトして、あるいは、PDAに保存して、年末年始のカラオケ・パーティーに活用していただきたい。だけど、これがみんな入ってたら、すごいカラオケだな。
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