間歇日記

世界Aの始末書


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2004年10月上旬

【10月10日(日)】
『英雄 〜 HERO 〜』(監督:チャン・イーモウ/公式サイト[amazon])が、もう地上波テレビ(テレビ朝日系)で放映されるというので、ビデオをセットしてじっくり観る。最近、ほんとにテレビでやるのが早いねえ。DVDになるのは、もっと早い。まあ、八割くらいは、チャン・ツィイーが観たいという不純な動機である。そういえば、「今月の言葉」用に、「世界がじとっとする髪へ」ってのを作ったのだが、いまひとつインパクトに欠けるのでボツにした。ここで日記ネタにしておこう。あの「ASIENCE」のCM、チャン・ツィイーもいいが、“嫉妬してる”金髪ねーちゃんたちの投げやりなさまがなかなかいい味を出していて、新しいバージョンが出るたび、おれは金髪ねーちゃんたちが今回はどういうふてくされかたをするのかと妙に楽しみである。それにしても、このCMのシリーズ、金かかってるんだろうなあ。仲間由紀恵くらいにしておけばいいのに……と思わないでもないけど、仲間由紀恵は「BEAUTY VOLTAGE」資生堂)だしな。
 で、『英雄 〜 HERO 〜』なんだが、まあもう、ひたすら映像美に徹した映画ですなあ。おれは中国語がわからないから吹き替えで観ざるを得なかったのだが、これは字幕で放映してほしかった。最近の韓国ドラマの端々をなにかの拍子に見かける際にも感じるのだけれど、髪が黒くて目が黒くて日本人と同じような顔をしている人々がしゃべっている映像に、口の動きと合っていない日本語の声が当てられていると、なんというか、そこはかとない違和感があるのよな。紅毛碧眼の人たちが流暢に日本語をしゃべっている以上に違和感がある。いっこく堂の腹話術でも観ているかのようだ。たぶん、日本で生まれて日本で育ったおれの脳の認知システムが、そういう状況に混乱するのだろう。ソフトウェアのレベルでの乗りもの酔いみたいなもんだ。だからまあ、慣れで緩和されるんだろうけどね。
 映像美に比してストーリーがいまいちという意見もあるようだが、単純な話だからあれだけ映像で好き勝手ができるわけで、歌舞伎みたいなもんだと思って観ればいいのだろう。なんとなくシェイクスピアっぽい感じがするのは、おれが深読みしすぎてるのかなあ。ま、環境映像としてエンドレスで流しっぱなしにしておくと、意外と飽きないんじゃなかろうか。どこをどう切り取ってぼーっと眺めていてもそれなりに絵になるから、“壁紙”みたいな使いかたができそうである。劇場公開時には相当ヒットした映画だという印象があるのだが、それにしてはDVDが高くないかい? 特典映像とかそういうのは要らんから、三千円以下の普及版希望。

【10月7日(木)】
▼アメリカのIT系リポーター、Mike Wendland のブログ「Tech:Knowledge」ってのをよく読んでいる(たいていは、京ぽんで)。ITの知識が豊富なのに、ごくあたりまえのユーザ視点から大仰な製品やら新奇なサービスやら大企業のヘンテコな戦略やらを叩っ斬ったりするあたりがなかなか愉快だ。専門家の知識と健全な一般人感覚を併せ持つ才人のようである。
 そのブログの10月6日分を読んで大笑いした。チェイニー副大統領エドワーズ上院議員のテレビ討論で、エドワーズが不正確な(と、チェイニーには思えた)ことを言ったのを捉えて、チェイニーは、中立なウェブサイトで事実関係をチェックせえと、www.factcheck.com に言及したのだそうな。じつはこれはチェイニーの言いまちがいで、彼は www.factcheck.org のつもりで言ったのだった。ところが、チェイニーが誤って口にした www.factcheck.com のほうにアクセスしてみると、このドメインからリダイレクトされて、有名な投資家、ジョージ・ソロスのサイトに跳ぶようになっていた――という、なんとも痛快かつ不可解な事件である。ソロスは反ブッシュ派で鳴る人であり、チェイニーの案内に従ってテレビ討論の視聴者が「中立なサイト」にアクセスしてみると、なぜか跳ばされた先のソロスのサイトで、反ブッシュの一大キャンペーンが展開されているという寸法なのだ。これが笑わずにおれようか。
 へぇ、そりゃおもろいと思って、おれもすぐ www.factcheck.com にアクセスしてみたら、なるほどソロスのところへ跳ばされた。ブッシュをけちょんけちょんに書いている。わははははは。でも、おれがアクセスしたときには、すでに今回の怪事件について「うちは関係ない」と注意書きが出ていたけどね。なんだかわからんが、www.factcheck.com のサーバを管理している人は、なかなか洒落のわかる人物らしい。

【10月3日(日)】
▼お気に入りのCDを次々とハードディスクにぶち込んでいたら、残り9GBくらいになってしまった。おれのパソコンのハードディスクは、80GBだ。おかしいな、つい先日まで50GBくらい空いていたのだが……。おれって、もしかすると、なにかの幸運で大金を手にしても、湯水のように使っちゃうクチかも。
▼以前からこの日記でも何度かお名前を出させていただいている(仮面ライダースナックの話とか、カレーライスの対称性の破れの話とか)気鋭の社会学者、加藤秀一さんからメールを頂戴する。東京都教育委員会ジェンダーフリーに関する愚行をおちょくりたおした8月14日の日記をたいへん気に入ってくださったそうで、加藤さんのサイト(明治学院大学社会学部・加藤秀一研究室)でご紹介くださったとのこと。行ってみると、トップページでえらく褒めてくださっている。加藤さんのご専門は性現象論であるからして、プロに面白がってもらえたとはたいへん光栄である。こういうヒネた文章の書きかたが教育的かどうかはともかく、明日の日本を創る学生さんたちにも面白がってもらえれば嬉しい。誰も他人に“らしさ”を強要されることなく“自分らしく”生きられる社会の到来は、あなたがたの手にかかっている――って若者にばかり押しつけちゃいかんな。ヒネた文章を書くくらいしか能がないおっさんだが、おれもできるところからできる範囲でがんばるよ。

【10月2日(土)】
シアトル・マリナーズイチロー選手が米大リーグのシーズン最多安打記録の257本を更新、一気に259本まで記録を伸ばす。おれは大リーグのことなどほとんど知らんが、八十四年間も破られなかった記録を塗り替えるとは、さぞやどえらいことなのだろう。四十二年弱しか生きていないおれですら、「百年に一人の逸材」なんて言葉が使われるのを何度も聞いたことがあり、確率的におかしいじゃないかと長年思っていたのだが、そうか、こういうのをほんとうの「百年の一人の逸材」というのか。おれも軽々しく「百年に一人の逸材」なんてことをほざかないように気をつけよう。よほどの作家が出現しても、せいぜい「十年に一人の逸材」くらいに留めておかないと恥をかく。
 まあ、それにしても、このところ日本の野球界がくだらないことで擦った揉んだしているだけに、海外で活躍している日本人選手がこういうことをやると、いっそう日本の球界のダメダメぶりが引き立つ。なんとなく、利根川進氏がノーベル賞を取ったときと同じような心持ちである。日本の球界だって、個々の選手には世界レベルの人が何人もいることは、もはや証明済みなんだがなあ。日本で野球をやっていることが、すなわち“不遇をかこっている”と選手が感じるような業界では、ちと情けないと思うぞ。耄碌オーナーども、しっかりせい。


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