三月書房HOME販売速報総目次三月書房販売速報[096]


e-mail 版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第10冊[91〜100号]
通巻091号 2007.01.23発行 通巻096号 2007.12.14発行
通巻092号 2007.04.10発行 通巻097号  2008.02.13発行
通巻093号 2007.06.05発行 通巻098号 2008.04.16発行
通巻094号 2007.08.14発行 通巻099号  2008.06.18発行
通巻095号 2007.10.18発行 通巻100号 2008.08.19発行
※各号の最終版を一部修正して掲載しました
  ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報[096]
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2007/12/14[09-06-96]  (c)SISIDO,Tatuo     

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 096号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「(歌集)空の空」竹山広 砂子屋書房 
  ◆「(歌集)後の日々」永田和宏 角川書店
  ◆「(歌集)竹とヴィーナス」大滝和子 砂子屋書房
  ◆「(歌集)パースペクティヴ」香川ヒサ 柊書房
  ◆「名歌集探訪」栗木京子 ながらみ書房 
  ◆「岡井隆と初期未来」大辻隆弘 六花書林
  ◆「物狂ほしけれ」車谷長吉 平凡社
  ◆「荒地の恋」ねじめ正一 文藝春秋
  ◆「Yaso#ヴァンパイア」ステュディオ・パラボリカ

   売れてるのは歌集ばかりのような感じです。歌集は例年秋から冬にか
   けてがシーズンですが、その他の本がどうもさっぱりです。「yaso#
   ヴァンパイア」も「ゴス」、「ドール」、「耽美」に比べると出足が
   さえません。
   
   
[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「(歌集)ぼんやりしているうちに」永田紅 角川書店
  ◆「(歌集)微笑の空」伊藤一彦 角川書店※入荷済み
  ◆「刑務所の前(3)」花輪和一 小学館※入荷済み
  ◆「現代思想 増刊:総特集=戦後民衆精神史』 青土社※入荷済み
  ◆「言語芸術論」吉本隆明 光文社
  ◆「『情況への発言』全集成(全3巻)」吉本隆明 洋泉社


[#03] 小田光雄著「出版業界の危機と社会構造」について

   この本は1999年に出た「出版社と書店はいかにして消えていくか:近代
   出版流通システムの終焉」と2000年に出た「ブックオフと出版業界」に
   続く、「出版情況論三部作」の3冊目です。この3冊目の本文中には、
   先の2冊についての“自画自賛”的な言及が多くみられますが、先の2
   冊は今読んでもその大部分は当たっているようですから、自慢されるの
   も当然でしょう。

   どの本にも他では読めない面白い?話題が満載ですが、それはさておき、
   再販制を廃止しない限り、出版業界も書店業界も崩壊するというのがこ
   の著者の持論です。1冊目が出た直後に柳原書店や駸々堂書店などが倒
   産し、日販の経営危機が表面化しました。その1年あまりの情況は、2
   冊目の本に詳しくのってますが、著者によれば、この時期が再販制を廃
   止する最後のチャンスだったそうです。しかし、公取委が当面存続を決
   定してしまったために、その芽も消えてしまいました。そして、その直
   後の鈴木書店の倒産から今年までの、惨憺たる情況がこの3冊目に詳し
   くのっているわけです。
   
   この7年間の書籍と雑誌の売上げは減少の一途であり、1冊目で指摘さ
   れていた書店業界の潜在的不良債権は、おそらくどこかに飛ばされて、
   さらに増加しつつ先送りされているに違いありません。とくに雑誌の売
   上が本格的に低下しつつあることは、出版業界の流通インフラが、雑誌
   主体に成り立っているために、今後致命的な影響があると思われます。
   
   この業界はとっくに崩壊していても不思議ではないのに、意外にしぶと
   く持ちこたえているのは、やはり再販制のおかげなのでしょう。再販制
   はもはや出版文化などとは関係がなく、出版物が業界の「地域通貨」と
   して流通するのを「保証」しているに過ぎません。そして、それゆえに、
   もはや再販制を廃止できなくなってしまっていることが、小田氏の本を
   読めばよくわかります。

   小田氏の本には、近代出版流通システムの終焉と同時に、近代読者の終
   焉も指摘されていて、現在の書店のお客は「読者」ではなく「消費者」
   ばかりということです。「読者」や「読書人」の大多数は高齢者のよう
   で、これはうちの常連客を思い浮かべても間違なさそうです。それ以下
   の世代の大多数を占める「消費者」のニーズに適合した、「ブックオフ」、
   「アマゾン」、「TUTAYA」、「ゲオ」などは好調のようですが、これら
   も、じつは再販制をうまく利用して、既存の書店業界を食い荒らしてい
   るらしいという、まことにばからしい実情も小田氏の3冊目にて、詳し
   く紹介されています。
   
   まことにひどい情況ですが、出版業界の全面崩壊が避けられないのなら、
   ここ1、2年の間にさっさと潰れてほしいものです。いまなら、まだうち
   の店は業界の再出発に参加可能であろうと思われます。蛇足ながら、再
   出発の際には、本と雑誌の流通を切り離し、本の販売は非再販、低正味
   買切としていただきたいと希望しておきます。
   
   
[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その58)

  ○河原町四条角に10月19日オープンした「ブックファースト京都店」が、
   繁盛しているらしいとのうわさはぜんぜん聞こえてきません。ビルの
   3階から6階という中途半端な位置にあるにもかかわらず、1階や地
   下に目立つショーウインドウなどが見あたらないので、通行人には書
   店があることがわからないのではないでしょうか。これはBALビル
   のジュンク堂河原町店も似たようなことですが…。
   売場は各階100坪というわりには狭苦しい感じなのは、角地の三角ビル
   のために、使えない半端な部分が多く、さらにはエスカレーターやエ
   レベーターなどにも食われているためでしょう。実効売場面積は各階
   50坪程度ではないでしょうか。詳しくは「三月記(仮題)」でどうぞ。  
   
  ○今年の1月に送信した「91号」に、みすず書房と東大出版会が公表して
   いる、書店別売上げランキングを載せたところ、出版社の営業の方々
   に好評でした。別にマル秘とは記されていなので、当然のようにコピー
   が出回っているものだと想像してましたが、これはちょっと意外という
   か、のんびりしているものだなと思いました。みんなとぼけたふりをし
   て、実はちゃんと何年分もファイルしているのかもしれませんが。

   先日届いた筑摩書房の新刊案内にも同様のランキングが100位まで掲載
   されていましたが、この社のデータがこのスタイルで公表されるのは
   今回が初めてのような気がします。人文系の出版社の方は、日頃の人脈
   を駆使して、コピーを入手されたほうがよろしかろうかと思います。
   下記は京都関係のみ。期間は2006/10〜2007/09。
   
   27位(前期27位)ジュンク堂京都店  前期比103%
   32位(  83位)ジュンク堂河原町店    181%
   43位(  38位)京大生協BCルネ       91%
   52位(  88位)アヴァンティBC      138%
   
   ジュンク堂河原町店は2006年2月下旬開店でしたから、前期はほぼ半年
   分だったわけです。したがって、今期は丸々1年分ですから、前期比
   200%でトントンということになりますから、実質20%減ということで
   しょう。この店はまだいまいち調子が上がっていないらしいというの
   が、世間のうわさですが、これは売り場面積が半分以下の、京都店に
   負けていることを見てもあきらかでしょう。アヴァンティが4割近く
   伸びたのは、間違いなく今年春に近鉄百貨店の旭屋書店が消えたおか
   げでしょう。旭屋は今年2月まで営業していたわけですから、4割の
   伸びは3月からの実質7ヶ月で稼いだと思われます。それゆえ、次期
   はあと数割は伸びる余地があるでしょう。うちのような極小店ですと、
   駸々堂がつぶれようが丸善が撤退しようがぜんぜん目立った増減はあ
   りませんが、さすがに大型店同士だともろに響くらしいことがよくわ
   かります。このあたりのことは、今年も公表されるであろう、みすず
   書房と東大出版会のデータが入手できればもっとはっきりわかるはず
   です。なお、立命大生協、同大生協、大垣烏丸店などは101位以下だっ
   たようです。もちろん売上データを提供していない可能性もありますが。


[#00]雑、雑、雑、…

  ○「広辞苑」の第6版が1月に出ます。何も販促活動はしていませんが、
   ぼちぼち予約が集まりつつあります。とはいえまだわずか5冊ですが、
   第5版も予約は10冊以下だったような気がしますから、紙の辞書の人
   気がじり貧以下であることを考えれば、これでもよいほうでしょう。
   うちの店の常連客は、わざわざ遠い所から来てくださる方々が大部分
   なので、どこでも買える重たい本は昔からたいして売れないのです。
   わずか5冊なので、統計上の意味はほとんどないとは思いますが、こ
   の予約者5名の推定平均年齢は70歳強です。したがって、その予約も
   机上版が4冊、普通版が1冊となってますが、第5版まではこの比率
   はたぶん逆だったと思います。世間もおそらく同様かと想像しますが、
   「広辞苑」愛用客がかなり高齢化しているのは間違いないでしょう。
   
  ○京都市営地下鉄の東西線の延長工事がほぼ終わり、1月16日に二条〜
   太秦天神川が開業します。JR二条駅から西へ2駅の延長で、天神川
   では京福嵐山線の駅も3月に開業の予定です。伸びないよりは伸びた
   方がよいことはたしかですが、いまのところこの2駅の周辺には、わ
   ざわざ出かけていくほどの名所や有名店などはほとんどないような感
   じです。観光客にとっては少しは便利になるかもしれませんが、広隆
   寺にしろ映画村にしろ天神川で嵐電に乗り換えなくてはならないので、
   電車賃を考えるとさほどでもないでしょう。もちろん地下鉄の延長は
   ここで終点ではなく、西京極から桂方面へ伸びる予定にはなってます
   が、まだ何十年もかかるでしょう。今回の延長で東西線の利用客や市
   役所前駅の乗降客が大幅に増えるとは思えませんから、うちの店の周
   辺の商店街やゼスト御池商店街には、なんら影響がないと思われます。
   
  ○今年の秋も「中央公論」ほかいろいろな雑誌の京都案内に三月書房を
   載せていただきましたが、ちょっと珍しかったのは「京都を包む紙」
   という本に、うちの店のブック・カバーが紹介されたことでした。う
   ちの店のカバーはグレーに濃青で線を印刷しただけの地味なものです。
   開店の数年後に常連客がボランティアでデザインしてくれたとか聞い
   てますから、55年ほど使い続けていることになりますが、格別ほめら
   れたこともけなされたこともなかったようです。この本にとりあげら
   れているのは、お菓子屋さんなどの包装紙や袋や箱がほとんどで、他
   の書店のカバーは一枚も載ってませんでした。

   「京都を包む紙」井上由季子/村松美賀子 アノニマ・スタジオ
  
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜94号)」はHPにて公開中です。
     
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