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タラッサ(Qavlassa)

 ロドス島とミーレートスの女神で、テルキーネス Telci:neVの母であった。セックスと結婚の守護者として、タラッサはアプロディーテー・マリナの古い形態であった。ローマ人の結婚式の際、彼女は「タラッシオ」Talassioという呼び声で呼び出された。この言葉の意味はすでに忘れられてはいたが、「結婚式の席でこの名を叫ぶのは伝統にかなっている」ということは誰もが知っていた[1]


[1]Rose, 192.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



タラッサ(Qavlassa)

 アッティカ方言では"s"音が"t"音になる。「海」の意。
 キュロスに雇われたギリシアの傭兵約1万が、大将のキュロスがはやばやと戦死したため、ペルシア帝国のまっただ中に取り残され、敵中6000キロの逃避行を余儀なくされた。この部隊が、疲弊しきってテケス山〔現在のいずれの山かは、異論がある〕にたどり着いたときの大歓声「θαλαττα, θαλαττα(海だ、海だ)」(『アナバシス』第4巻7_24)は印象深い。

テルキーネスTelci:neV

 ロドス島の種々の術に通じた精。……ポセイドーン養育をレアーに命ぜられ、カペイラKapheiraとともにこれに当たった。その後彼らはクレータよりキュプロスを経て、ロドスに来た。ロドスは彼らの名によってテルキーニスTelchinisと呼ばれたが、〔デウカリオーンの〕大洪水の到来を予見し、島を棄てて四散し、そのなかの一人リュコスLykosはリュキアに来て、クサントス河岸にアポッローン・リュキオスLykiosの神殿を建立した。彼らは冶金の術に通じ、クロノスの鎌、ポセイドーンの三叉の戟を鋳造、神像を造り、雨、雪、霰をもたらす力をもち、その眼は災いをもたらし、欲する姿に身を変じ、動植物をステュクスの河水硫黄とを混じて害した。彼らは半人半魚の、あるいは半人半蛇の姿で表されている。アポロ−ンが彼らを矢で殺したとも、あるいはゼウスが雷霆で撃って殺したともいう。(高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』)

「タラッシオ」Talassio

 ローマの結婚式の時に、花嫁に対して発せられる祝いの言葉。結婚の神の名とも、サビーニー人の女の掠奪のおりに、人々はとくに美しい乙女をロームルスの部下のタラッシウスTalassius(Talassio)に選んだ故事に由来する、あるいはこの際にサビーニー人とローマ人は女たちに召使いの仕事はさせず、毛糸を紡ぐこと(ギリシア語の"talasia")のみにすると約束したことに由来するともいわれる。(高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』)