サイマ(マナーズサウンドセラピー)とは

サイマは物理学分野の原理をもとに、作られてから半世紀以上たつ歴史あるセラピーです。
その歴史を見てみましょう。

音を見る―二人のパイオニア

ドイツの物理学者であり、音楽家で音響学の父ともいわれるエルンスト・クラドニ(1756~1827)は、音が物質に対し影響を与えることを実験で証明しました。
 エルンスト・クラドニ肖像  クラドニのパターン作成方法

細かい砂を敷いた金属板やガラスの板にバイオリンの弓で振動を与えると、砂はさまざまな幾何学模様を作り上げました。

それらの図形は彼の名前をとって「クラドニ図形」と呼ばれます。
1809年にはナポレオンや科学者たちの前で実験を行い、「音波が物体を動かす」という自説を証明しました。

映画『ダ・ヴィンチ・コード』でも登場するスコットランド・エディンバラ郊外にあるロスリン礼拝堂は、1440年に建てられました。
見事な装飾の中に、幾何学模様が彫刻されたキューブ(立方体)が13種類、213個あります。
それが、薄い板の上に粉をのせて音の振動を与えたときにできる模様、すなわちクラドニ図形と一致するのです。
以上のことをイギリスのミッチェル・トーマス氏(元英空軍暗号解析班に勤務)とその息子のスチュアート・トーマス氏(作曲家、ピアニスト)が解読し、以下のYou Tubeで見ることができます。
The Rosslyn Stave Angel - Music Cipher

スイスの医師で物理学者のハンス・ジェニー(イェニー)(1904~1972)は、金属板にさまざまな粉末や液体、また水銀やグリセリンゲルなどの半固体をおき、自作のトノスコープを使用してそれらに音を当て、複雑で美しい立体パターンを作りました。
下の写真のような映像はYou Tubeで数多く見ることができます。
自然がつくる曼荼羅のようです。

 サイマティックによるパターン2

私たちがかんたんに家でつくる方法を紹介しているサイトもあります。
http://kuteken.hatenablog.com/entry/2014/03/11/155550

話を戻しますが、ジェニー博士は音が造形を行い、また音を組み合わせると平面から立体となり、さらに振動を与え続けるとリズムを持った一定の運動を行うことを実験で示しました。
周波数が低いとシンプルなパターン、高いとより複雑な造形となりました。
興味深いのは、生命を持たない物質に音を当てているにもかかわらず、まるで生物(または生物の一部)のような形と動きが表現されるということです。

   ハンス・ジェニー実験の様子

彼は「波動、音」を意味するギリシャ語の「kyma」から、cymatics(サイマティクス)と名付けました。
これは推測ですが、mathematics(数学)やphysics(物理学)のように、一つの学問分野としての「サイマティクス学」を研究していたのではないでしょうか。

 サイマティックによるパターン

彼は科学者であると同時に哲学者であり、歴史家であり、また芸術家でもありました。
そしてアントロポゾーフ(人智学徒;人智学とはルドルフ・シュタイナーが提唱した思想)でもありました。
優れた観察力により、あらゆる現象――季節、鳥の羽毛、雨滴、気象パターン、山脈、波、・・・は「周期性」から説明できると考えました。

以上ように、エルンスト・クラドニとハンス・ジェニーの二人はそのままでは見えない音を視覚化し、音による造形と自然界に存在する形との類似性を示しました。
自然界にある形はまた、私たちの体内にも存在します。

Cymatics Therapyの誕生―マナーズ博士

医学博士でオステオパシー医でもあるサー・ピーター・ガイ・マナーズ(1916~2009)は、ジェニー博士の「サイマティクス」の原理を医療に応用できるのではないかと考え、ジェニー博士や後述のハロルド・サクストン・バー博士と共同研究を行いました。
長い年月をついやして各臓器・器官・組織等ごとに固有の周波数の組み合わせを発見し、それらの音をクリニックにおいて臨床で用いました。
マナーズ博士は、病気を細胞の固有振動数の乱れとして説明し、健康な状態にもどすには、適切な周波数を与え、生体の自然治癒力を促進することが必要と考えました。
最初の機械が作られたのは今から50年以上前、音が発見されたのはさらにその10年以上前になります。

初期研究では、科学者、医師、他の医療従事者たちが協力して、さまざまな病気を持つ人たちにいろいろな周波数音や光照射を試み、効果のあった周波数を記録していきました。
正確な治療的周波数の特定のために、血圧計、心電図計や他の計測機器も用いられ、また得られた周波数は同じ状態の他の患者たちにも試されました。
こうして、特定の病気が軽減したり、身体的/精神的健康状態をもたらすような多くの周波数が得られました。
さまざまな実験結果により、100~1600Hzの可聴域音のうちのおよそ5種類を組み合わせた場合に、もっとも効果的であることがわかりました。

マナーズ博士たちの研究が開始されてまもなく、第二次世界大戦が勃発し、多くの研究者たちは徴兵されたり、他の研究にかかわるよう強制されました。
そして、多くの研究記録が戦災や強制持ち出しにより失われてしまいました。
残された資料と周波数リストをもとに、1960年代になってマナーズ博士は周波数リストをより完全なものにし、エンジニアたちと最初のセラピーマシーンを完成させました。

マナーズ博士は、音を治療的に用いるその技術を当初ソニック・レゾナンス・セラピーやアコースティック・セラピーなどとよんでいましたが、 「cymatics」という言葉を作ったジェニー博士に敬意を表して、「Cymatics Therapy」、のちに「Cymatherapy(サイマセラピー)」と名づけました。
彼が開発したCyma1000という機器には、500以上の音のメニューがプログラムされています。
その後、周波数の発生方法や機器のデザインなどの変更はありましたが、可聴域音の組み合わせという点においては変わらず、現在、世界各地で用いられているセラピーのすべての機器において同じです。
また、初期に研究された音と青色光や赤色光などのカラーライト照射との組み合わせについては、現在も各地で研究が行われています。

マナーズ博士は、2005年までイギリスのBretforton Hall Clinicで治療研究と治療家養成を行いました。
彼はまた、新生児黄疸に青色の光線を当てる光線療法(人工紫外線を当てビリルビンを分解する。標準治療)を開発し、WHOで講演も行っています。
科学へのさまざまな貢献により、英国女王よりナイト爵に叙されています。