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カリスたち(CavriVpl.CavriteV)

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 「美の女神たち」の古代ギリシア名。母神アプロディーテーの慈愛 charis(ラテン語ではcaritas)を分け与える天界の女神である。この charis は、聖書では、「愛」、あるいは、「寛容」と訳されている(『コリント人への第一の手紙』13)。カリスたちとは三相一体の女神が太古の時代に現れたものであった。パウサニアースによると、カリスたちはオルコメノスにおいても崇拝されていたが、そこでは3個の石を立ててカリスたちとしていた、という[1]。ギリシア・ローマ神話では、カリスたちはニンフであるとなっているが、それは的確な描写ではなかった。また、キリスト教では聖チャリティとなっているが、この聖人は実在しなかった聖人であり、これも的確にカリスたちを描いたものではなかった。
point.gifGrace.
point.gifSophia, Saint.


[1]Dumézil, 166.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 カリスCavriV(「優雅」)というのは、巫女の長が聖王を女神の恋人に選んだときに、やわらいだ表情をうかべる女神のことである。ホメ−ロスは、パーシテアーとカレーという二人のカリスについて述べているが、これはPasi thea cale — 「すべての男性たちに美しく見える女神」という三つの単語を無理矢理に引き離したものらしい。アテーナイ人たちがあがめうやまっていたアウクソー(「生長」)とヘーゲモネー(「支配権」)という二人のカリスたちは、タローとカルポーという二つの季節に対応している。後に、このカリスたちは三人となって信仰されたが、それは強情きわまりない三相の女神 — 運命の三姉妹と対抗させるためだった。彼らがゼウスを父として天地創造の女神エウリュノメーから生まれたというのは、ヘレーネスの君主が婚期に達したあらゆる乙女たちを支配する実権を握ったという意味である。(グレイヴズ、p.83-84)


 パーシテアーというカリスは、『イーリアス』XIV_276に出てくるが、グレイヴズの議論は牽強付会の譏りをまぬがれない。


[画像出典]
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