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Henna(ヘンナ染料) 〔Gr. kuvproV

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 女性の手のひらや足のうらを女神の聖なる色に染めるために、インドやエジプトで広く使用され、ギリシアではへカテーの崇拝者たちの間で用いられた。へンナ染料は、女神への供犠の儀式において重要視された。を与える女神アナテ Anathの像は、人間が生贄として捧げられる前に、へンナ染料で赤く塗られた[1]。ジプシー伝説では、へンナ染料とマリ-アナテのための供犠儀礼との間に、一定の関連があることが示されていた。それによると、マリアがへンナ染料で髪を赤く染める準備をしていたちょうどそのとき、彼女の息子が十字架にかけられた。そのためマリアは、以前は神聖とされていたこの赤い染料に今度は呪いをかけたという[2]。ユダヤ人の聖典には、「カインの娘たち」(すなわち、ヤハウェを崇めなかった女たち)についての記述があるが、彼女たちの手足は東洋の流儀にならって「赤く染められていた」[3]

 母権制宗教で用いられた装飾用品の例にもれず、へンナ染料も中世には魔術に関連づけられた。スペインの異端審問官が、女たちを異端の罪で逮捕したときの罪状の1つは、彼女らが皮膚や爪を赤く染めるのにへンナ染料を使ったということだった[4]。ヴィクトリア女王の時代になってもエセックス州のある女性は、自宅から「赤いオークル(絵の具の原料)」、すなわちへンナ染料が発見されたというそれだけの理由で、魔女にされ、告発された[5]


[1]Hooke, M. E. M., 83.
[2]Esty, 17.
[3]Forgotten Books, 78.
[4]H. Smith, 259.
[5]Maple, 132.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 ヘンナは、3-4メートルに達する潅木で、学名はLausonia ienmis〔画像〕。その白い花房からは、バラのような香りが匂う。葉からは爪や髪を染めるためのオレンジ色の染料が採れる。古代エジプト以来、中東世界で化粧品として広く用いられている。
 旧約聖書では、『雅歌』に2度、ヘブライ語「コーフェル」で出てくる。

愛する人は、私にとって、
エン・ゲゲディの葡萄園のヘンナの花房。(1, 14)

私の愛する人よ、さあ、野原に出て行きましょう。
ヘンナの中で夜を過ごしましょう。(7, 12)

 ギリシア語ではキュプロス(kuvproV)〔Dsc. I-124〕。和名「指甲花(シコウカ)」。


[画像出典]
Wikipedia"Henna"