第四章
今回の破綻は、マネーゲーム的な資本主義、投資銀行の破綻ですから、これまで数年のアメリカ経済のあり方の崩壊を意味します。アメリカはこのマネーゲームで世界から資金を集めていましたが、その終焉です。私たちはおそらく戦後60年間続いてきたアメリカ中心の世界経済のあり方の崩壊に直面しているのでしょう。そういう意味ではまさに百年に一度のドラマのさなかに証人として存在しているのかも知れません。世界の経済秩序がアメリカ経済も含めて更新され抜本的な新しいあり方−健全な資本主義−が見られるようになるまでには数年を要するでしょうから、日本の株価もまだまだ見通しのつかない時代が続くでしょう。さらに今回のギリシャの破綻は今後日本でも放漫な財政支出が続くと、国債の国内消化の余裕がなくなった現在日本の財政破綻が現実化する危険を予想させます。
基調としては石油の需要は増える一方で、現在も石油埋蔵が新しく発見されているとはいうものの、いずれは枯渇の時期を迎えることは明らかです。むやみに原油の消費を増やすことはできないのです。化学産業では現在石油は不可欠ですが、そのためにも少なくとも燃料としての石油消費は抑えられなければなりません。バイオエタノールの自動車燃料化がある時期クローズアップされましたが、他方食料資源との相克が語られました。この潮流を変えるには燃料電池の一日も早い実用化が待たれます。全体としてのエネルギーは電気で、問題が多いとはいえ究極的には化石燃料には頼らず、質量をエネルギーに変換する原子力によって作られた電力の利用しかありませんが、原子力利用に携わる人々の意識の変革がないと先般明らかになった原子力発電所での臨界状態や今回の福島騒動で露呈した杜撰な原子力の扱いには将来への危惧を抱かざるを得ません。手放しで原子力歓迎とはいきません。
しかし未来を眺望すると、核融合も含めて原子力利用の研究の進展と安全化、一般への啓蒙が進むことが欠かせません。いま考えていること 330(2008年08月;2009年6月)―地球温暖化と原子力発電―もご覧下さい。
高速増殖炉もんじゅの再開は、液体ナトリウムを使うので原子炉の危険に加えてナトリウム事故の心配があります。化学的にはナトリウムは活性が高く水とも激しく反応しますから、いったん事故が起こるとその処理が非常に難しいと思います。わたしはむしろTWRの実用化研究の方が良いのではないかと思っています。
やっと気付いたことですが、一般論としてはデフレやリストラが進行しているとき株式や投資信託は値が下がるものだと思って間違いありません。株式はインフレに強いといわれますが、それはインフレに順応して値が上がるということで、裏返せばデフレに対しても同様の反応を示し、企業の収益が落ちますから株価の低下が起こるのが当然です。
個々の会社・個人の力量ではどうにもならないもっと大きな歴史の流れが大きい意味を持ちます。その意味では資産運用もすべて個人の責任にするのは誤りで、個人の努力には限度があるというべきでしょう。
結論としては、会社はそれぞれが、なかなか個性的に動いています。おそらく株価の二極化、つまり上がる会社と止めどもなく下がる会社は今後も出てくるでしょう。
投資には今までになく先行きの研究と持ち株については辛抱が必要です。こういう厳しい時期ほど、よい製品を持つことがまず前提ではありますが、それだけでは駄目で、21世紀に入って変わっていく産業構造・世界情勢を睨む経営者の力量が試されている時代だとも言えそうです。しっかりした経営者がいてしっかりした将来展望が出来、独創的な製品を開発する力を持つところは今日の株価の変動に杞憂するよりも、むしろ業績がいずれは伸びるだろうと期待しましょう。住友特殊金属時代から NEOMAXに変わってからの株価の躍進に、この例が見られます。日本はこれまでの横並びで別段独創的な経営者を必要としないようになっていた社会の崩壊を迎えています。投資にあたってもその会社がどういう特徴ある製品を持ち、経営者がどういう実績を作ってきたか、どういう方針を持っているかを検討し、特にこれからの新しい成長の芽を持っているか、育てているかが重要なポイントだと思います。その上で納得がいったら気長に投資する時代に入ったというのが私の見解です。業界共通の見通しとして私は燃料電池が次第に現実化していく過程に入りつつあると感じています。燃料電池には水素ガスが必要ですから、その時に備えてガス会社は水素供給を計りつつあるようですし、クラレなどはメタノール電解膜で効率のよいものを重点目標の一つにしているように見えます。
正直に言うと私の頭のどこかにも再び大幅な経済の伸張を描いているかも知れないのです。しかし地球環境の問題からもエネルギーの消費を減らす方向ですし、エネルギーの使用を減らすと言うことは、もはや、かっての経済的伸張ではなくて現在のような抑圧された経済を正常と考えて舵取りせざるを得ないということではないでしょうか?まして日本では実際に人口減少が始まりました。これは日本社会のあり方の根本的変革を迫ります。デフレの原因の一つは少子高齢化です。21世紀の日本はこの少子高齢化が国のあり方を決定するでしょう。いま考えていること 62(2001年01月)−−21世紀を迎えて−これからの日本−−もご覧下さい。歴史的にも私はもはや日本は成熟社会に入り、後は次第に衰退する段階(運命)にあるとみています。これを克服するには世界に類のない新しい技術の開発と成長するアジアに歩調を合わせて同調し、成長のおこぼれを享受するしかありません。2009年の総選挙で民主党が財源もないのに児童手当の大幅な増額を提示したのも少子化対策の現れでしょう。アメリカで始まった金融資本主義の崩壊が解決するまで日本の経済も苦難の時代に入りました。唯一の希望は中国・インドをはじめアジア諸国の今後の発展が期待できることで、これにわが国がどう関与していくかが将来を握ります。
厚労省は現在の確定給付企業年金制度(掛け金は企業が原則として負担する)や確定拠出年金制度への移行を推進しています。アメリカの401Kに類する確定拠出型年金法が、2001年10月から導入されていますが、厚労省によると、2014年6月末現在企業型(企業が毎月の社員の掛け金を負担する)18675社、加入者数は497.1万人といいます。このほか個人型加入者が18万7766人です。団塊世代の大量退職に伴って投資信託を通じてかなりの資金が市場に継続的に投入され、実体を伴わない不安定要素を抱えながら、平均的には株価に多少の刺激にはなっているのでしょう。401K導入企業に情報や商品を提供する各種運営管理機関設立の動きも強まりましたが、現在登録運営管理機関は198社で当初の1/3に減っています。積極的なのは証券会社で、永年護送船団方式で過ごしてきた個々の銀行・保険も参入していますが、日本の証券会社・銀行・保険の運営管理能力については「脚下照顧」と言いたいところです。 この経済収縮期に失敗すると委託した庶民はとんでもない事態に直面するでしょう。収入のところにも書きましたように、401Kは決して老後に備えた年金制度として好ましいものではないと思うのですが、これからの少子高齢化では、現行の公的年金制度の維持は困難で、個人として別の老後設計がどうしても必要で、他人任せでない株式運用も考えなければならないのです。
大前研一氏はニュースの視点ブログ「「年金制度の改革」のロジック」で年金制度の抜本的運用見直しを提言し「国家による福祉を放棄し、401k(確定拠出年金)に類似する個人退職勘定に移行し、これに税制上の優遇措置を与え、運用は自己責任で行うというスタイルを提唱しています。
これは年金を「二階建て」とする考え方です。一階部分は生活保障として税金でカバーし、2階部分は401kと同じく個々人が自分の計画に沿って拠出し、運用します。」と述べています。現在の年金問題の諸問題を踏まえて今後はこのアメリカ方式しかないだろうと提言しています。年金の現状を見ると、掛け金の拠出率も低く、政府の財政行き詰まりから考えると実際に1階は少額ながら税負担の一律年金、2階は401Kに準ずる個人運用による年金に実際変わるかも知れません。株価の暗雲を経験したアメリカ国民も貯蓄性向を強めています。2008年8月以後アメリカ人の貯蓄率は3%を回復し2009年10月は4.4%です。現在は4.8%前後です。クレジット社会から貯蓄社会へ転換しつつあります。401Kなどでアメリカ家庭の4割が直接間接に株式を持つといわれます。401Kを採用する場合、社会の動きとそれなりの金融商品の学習が必要で、運営管理機関任せでは泣きを見ます。最近のAIJ投資顧問による企業年金消失問題もこの例でしょう。運営管理機関はまず自社の利益確保が目的なのです。株価の下落と低利息の昨今安全な運用を計っていた人も手数料を差し引くと運用実績がマイナスのケースも多いのです。
2012年春、投資顧問会社「AIJ投資顧問」が企業年金(厚生年金基金)の運用に失敗し約2,000億円の運用資産の大半を失って業務停止を命じられたと報じられました。おそらくここ数年の株価下落の影響でほかの投資顧問各社で同じような事態が発生していると私はみています。現在は常識はずれの高利はあるはずがなく、利殖の専門家でも過ちを起こしたという意味で警鐘となりました。
2004年4月の法改正で日興コーディアルグループは投資顧問子会社をスタートさせ、証券会社の投資顧問業兼務が始まっています。その契約残高の75%はラップ口座が占めています。ラップ口座では投資一任契約の上資産運用を完全に委ねるもので、手数料は資産の残高に応じて支払うのがふつうです。従って投資運用の成果に応じて手数料が高下する点では合理的なのですが、契約高が大和証券SMAの場合1億円以上500万円単位、みずほ証券資産運用ラップ(LONG AP)が2,000万円以上100万円単位、日興コーディアルSMAグローバルポートが1000万円以上1円単位、野村もファンドラップで最低500万円あるいは1000万円とSMAが3億円からになっています。このほか信託銀行でもラップ口座を開く傾向があり、三井住友信託ではファンドラップ500万円以上SMA3,000万円以上となっています。また手数料は資産残高に応じているので資産運用上の損失が出ても手数料は取られるのです。今後5年間の団塊世代退職金は85兆円に上ると見られ、ラップ口座の更新率はほぼ100%なので証券会社にとっても魅力です。私は手数料は資産運用利益に比例していわば成功報酬を求める方式優先にならないとおかしいと思っています。この点みずほ証券資産運用ラップBタイプの報酬体系が年間残高の約2.10%の固定報酬+元本超過分の21%の成功報酬になっているのは肯けます。詳しくは各社のラップ口座(SMA)の案内を見てください。ラップ口座/SMAも参考にしてください。
いずれにせよ取扱機関に委せ切りは危険です。常に金融機関の利益という立場があり、資産運用者がサブプライムローン証券などとんでもないものに投資する危険があるのです。委せきりは危険です。
敢えていえば個人も資産運用に習熟・研究を要する時代(注に日商岩井の例)に入ってきています。しかし株式との付き合いには骨董の購入と同じような所があります。つまらない骨董を買って痛い目に遭い、発憤してこの失敗を糧にして、工夫し、眼を養って次に備えなくてはならない点が似ています。ただしよほど頭の切り替えの巧みな人以外は、私の考えでは、55歳までは自分の本業に頭をフルに使うために株式にのめり込むことは止めておくのがよいと思います。株式は関係する情報を集め分析するのにかなり頭がいり、エネルギ−を使う作業だからです。最後は決断の問題で、その決断の責めは自分が負うしかありません。楽なものではありません。経済評論家のいうことも決してそのまま信じてはなりません。参考にしてもよろしいが最後は自分の判断と実行です。
私は投資のために借り越し(空売り)はしない主義で、すべて自分の裁量で生み出した手持ち資金の範囲で、投資は生活費とは別勘定でいわば預貯金の分野で独立させて運営しています。株にはばくち的要素はつきものですが、ばくち的要素のより高いFX、先物取引や証券会社からの借り越しで信用取引することはしません。思いも掛けぬ大きな儲けもしないし現実には資金繰りで苦労はしないということになります。先物取引では時には大きい儲けもあるでしょうが証拠金がいりますから、追い証を迫られないかビクビクしていなければならないこともあるでしょう。空売りも一時は儲かるかも知れませんが、買い戻しのタイミングがこないかも知れません。そうなれば大損です。素人には場を読むことは非常に難しいのでわたしは手持ち金だけで小さい取引をしています。追い証でビクビクすることはありません。何しろ我が一族は祖父の代に米の先物取引で破産し苦労した経験があるので慎重なのです。昔は株でも"値上がりよりも配当"それが元々の発想だったといいます。金融の基本は金利と配当です。
わたしの場合2013年は株式配当は税込みで約30万円あり、買値に対し約1%になりました。一般の銀行の預金利子よりも高く回っていますから敢えてキャピタルゲインがなくてもよいのです。私の特殊事情としては株式の売却益があった結果医療費負担が3割になったり、私と家内の受けている公的サービスが削減されたりと、あまり収入が増えるとマイナス面も増えるのです。あまり儲けてはかえってマイナスになるのです。幸いなことに日常の経費は私の年金と家内の障害基礎年金(これは無税)とでなんとか賄えていますから、株の売却益を当てにする必要はないのです。
庶民生活の二極化も避けられないでしょう。かといって所得の再配分を社会主義的手法に委ねることは、神様ばかりでないこの社会では、野心的な支配層の官僚的な独善支配や汚職の温床を作り、庶民の自由を制約し社会の不活性問題を引き起こすことを、あまりにも多くわれわれの世代は歴史で見てきました。世界が現在、どの国も苦境にありますが、それでもどこからも社会主義経済にその活路を拓こうとする動きは見られません。
株についての私の考えは、私個人としては空売りはしませんので、いわゆる「株をやる人」の部類には入りません。もうけの手段としての株式運用はしていないのです。ですから帳簿の上で下がったからと言って含み損が大きくなりこそすれ、現実にどうということはありません。追い証で悩むことはありません。世界的に基準金利引き下げの動きはあるのですが資金は債券に向かい株安の流れはまだ止まらないのです。全般に景気は停滞し、基準金利引き下げの傾向が見られますが、資源インフレも考えると基準金利引き上げの底流はすでに登場してきています。基準金利の引き上げはいずれは避けられず、その上で正常な株価の形成もみられるでしょう。しかし当面は株価は低迷すると思います。私は当分現金の必要もなさそうなので、ここ数ヶ月株価の変動を利用してポートフォリオの再構築を計りました。村上ファンドやさらには旧日銀福井総裁のように直接間接に株価に影響を及ぼしうる人が株に投資して運用したり、インサイダー取引をして不正に利益を得るようなファンドに投資するのと、我々が株を買うのとは本質的に違うのです。株で儲けることは容易ではありませんが、自分の考えに従って資産保有手段として、また、たとえば脱原発後のエネルギー、エネルギーの化石燃料依存からの転換、医療の革新など未来への展望の試金石としてポートフォリオの見直しを行うのはそれなりに楽しいことです。自分のしっかりした株哲学を持たないで株に乗り出しては危険です。
第五章
繰り返しますが、心理的に1円たりとも損はしたくない人は絶対に株式に手を染めてはなりません。いくら預金利息が低いといってもマイナスではありません。私の経験した含み資産損失約1,100万円は株を手がけたためです。それでも相変わらず私が株式を保有するのは、株価の動きが経済の動きの生きた指標になるので、経済の動きを、損得の懸かった体感的な味わい方が出きるのと、資産保有の形としての面白みからです。没後の財産分配にも不動産より簡単です。ですから少し値が上がったから、下がったからといって売ったり買ったりはしません(こういう姿勢ですからかなりの含み損をそのまま抱えることになったりするのですが。尤もケインズの株投資の結論は“割安な優良株を、数を搾って長期保有する”ことだったそうですし、現在世界で最も有名な投資家、バークシャー・ハザウェイ社の最高責任者、ウォーレン・バフェット氏の投資の特徴は、“究極はファンダメンタルズに基づいた高収益企業だけに投資すること、また一度買ったら基本的には売らず長期投資を心がけること”だったそうです。またジーン・シモンズはインタビューの中で「ウォーレン・バフェット氏を研究してみると分かるが、彼は自分の知っているものにしか投資していない。つまり、自分が何を知らないかを理解しているのだ。自分の知らないものには投資すべきでない。」、これらの人の考えに同感です。
自分が知っているものだけに投資をするということだ。
投資については勉強を続けていくしかないし、私も日々勉強している。
ジム・ロジャーズ
未来を創り出すのは、事業家と投資家だ。社会に貢献する夢を実現するために、
事業を興して挑戦するのが事業家で、その夢を応援するのが投資家だ。
だから「自分がどんな社会に住みたいのか」ということを実現してくれる企業を
応援することが肝要。この不安定な経済環境のなかで短期的に株式が上がるか
どうかを心配するより、心から応援できる企業を見つけて、株が売られて値が下がっていれば、
チャンスと見て買い続けるのが長期投資家である。
澤上 篤人(さわかみ投信株式会社 代表取締役)
|
現在のバフェット氏の言葉も引用しておきましょう。「株を買い入れるルールは単純だ。他の人々が強欲になっているときに恐れ、皆が恐れを抱いているときに欲を出すことだ」「これから先5年、10年、20年後には主要な企業は記録的な業績を上げるだろう」「市場が今後1ヶ月や1年の間に上がるのか下がるのかは私にも分からないが、市場心理や経済が上向く前に、おそらく市場は上昇に向かい、しかも大幅に上昇するだろう。コマドリを待っていたら、春は過ぎ去ってしまう。」(The New york Times Opinion:2008.Oct.16)現在株を保有する会社は何らかのユニークな特徴を保つもので、それを見極めて長期に亘り結果を待つという姿勢、つまり株式投資には振るわないときは「じっと待つ」ことが大事なように思います。結局会社の業績が長期投資ではもっとも大事な指標になります。現在盛んな端金稼ぎのデイ・トレーダー的短期の株取引をするつもりは私にはありません。あるファイナンシャルプラナーは「株式投資は恋人選び。信じられる相手と長く付き合い、その結果、お互いが大きく成長するもの」といっていますが一つの見識でしょう。私は日本の現状に必ずしも悲観的ではないのです。サブプライムローン問題で明らかになったような金融資本主義に必ずしもまだ日本は偏っていないからです。日本の企業にはまだ物の生産でユニークな技術を持ち、それで世界と勝負しているところがみられるからです。儲けだけにうつつを抜かして資金を金融面でだけ運用し投機に走り回る資本主義にはなっていないところに日本の救いが見られます。アメリカで発した金融不安は日本の株価にも大きな影響を及ぼしていますが、私の投資している会社は会社自体が経営を誤っているわけではありませんから、このまま静観するつもりです。私はこれからの社会のあり方や投資先の情報に絶えず気を配り、情報を分析して総合的に判断し、将来性に投資する事を原則としています。以前アメリカの株価、特にIT関連のナスダックの暴落に伴って日本の株価も暴落しましたが、基本的には株価はその会社の業績を反映するものだという自明のことを改めて思い起こさせてくれました。特に投機家でないわれわれは、一時的に評判になった、業績の裏付けのないバブル株に、タイミング悪く、というのは何によらず評判になっているときはもはやピークを過ぎているのです。(いま考えていること 134(2003年05月)もご覧ください。)後手に回った形で手を出せば、いずれは痛い目に遭うことを見せてもらい、良い経験をしました。少なくとも3年後に眼を向けてその会社がどのようになるかを検討することはそれ自体が楽しいことです。これまで10年も無配の続いた神戸製鋼など駄目だと思われたこともありましたが、見通しをたてた以上迷うことなく持ち続けたおかげでポートフォリオ再編のため売却した神戸製鋼株式からはかなりの利益を得ました。私は投資はしますが投機はしません。私の経験からすると、個々の会社の特色を詳しく分析し、これといった特色を持った会社は長い目で見れば必ず発展します。近頃はその会社がアジアに関心と布石を行っているか(例:DOWA・ヤマトホールディングス)?またシステムを販売しようとしているか(例:シスメックス)?の2点も会社選択の視点です。
わたしのような素人は株式売買のいろいろなテクニックは持ち合わせないので、あくまで正攻法です。個人の判断よりも世界の政治や経済の状況が株価に支配的な影響をもたらしますが、ダウや海外の株価の動きを見ていますと、世界の政治や経済の動きが凝縮されて映し出されているのです。現在の円高も所詮ドル安であり、これまでの資本主義のあり方の否定と再建が進行中なのですから、とても日本がアタフタしたってどうなる物でもありません。経済は生き物です。ドル安もアメリカにおける経済再建の一条件だとすれば受け入れなければならないのでしょう。アメリカ経済が持ち直さない限り日本経済の持ち直しも期待できないことは、現在株価の推移予測がほぼダウの動きを見ておれば出来ることが証明しています。当分円高になって株価の低迷が続いても、そこはドル換算の持ち株評価がむしろ高まっていくのだくらいに考えて静観したいものです。
投資姿勢の結果がリターンに変化をもたらし、格差をもたらしたとしても自分の洞察の当否の結果だとする心境でなければ投資に手を出してはなりません。
株も村上事件に見られるようなインサイダー取引、政府の意向を汲んだ公的資金(社会保障審議会年金資金運用分科会の年金資産配分計画や公的保険などの資産運営計画による)の投入があり、必ずしも正直とはいえないのですが、不振時も含め経済の動きを反映する指標性は好きです。また、流動性が高く、上場会社の株なら、原則的には、いつでも成約当日も含めて4日後には市価で現金化できるのも魅力です。
税制改正でこれまでの投資優遇税制は無くなり、その代わり英国で1999年に導入された「個人貯蓄口座(ISA)」の日本版非課税口座NISAが始まります。これは満20歳以上の希望者が非課税口座を開設すると口座開設の年に取得した上場株式や株式投資信託に限り、年間取得価格100万円まで10年間非課税にすることが出来るというモノです。口座は1金融機関に限り開設できます。5年間の間毎年非課税口座が開設でき計500万円まで非課税に出来ます。年越しの繰り越しは出来ずまた途中売却して生じる空き枠は再利用できません。
平成22年の大きい変更は損益通算の範囲を広げ株式譲渡損と株式配当の損益通算が可能としたことです。適用条件は配当所得の「申告分離課税」を選んでいることです。「総合課税」を選んだ場合は通算できません。「申告分離課税」を選ぶと確定申告で「配当控除」は使えなくなります。平成22年1月1日以降には、証券会社等のシステム開発の準備が終わり、特定口座源泉徴収有りの口座への配当等の受け入れが可能となっています。源泉徴収ありの特定口座を持ち、かつ、配当受け取りを「株式数比例配分方式」にしていると特別の手続きをしなくても、2010年からは配当金を特定口座に受け入れて証券会社で株式売却損と損益通算をしてくれて、年末には特定口座の報告を送ってくれます。確定申告することが必要で配当も分離課税になるので「配当控除」は使えなくなります。
ともあれ個人の資産についても流動性の乏しい不動産から、現金や換金性の高い資産(キャッシュフロー)の運用を、考慮に入れなければならない時代に入ったのですね。不動産の証券化も進んでいます。一面、株は運用を誤ると、無価値な一片の紙切れになることも考えて置かねばなりません。短期の株価の上下に一喜一憂する人も、株はやめておいた方が良いのです。株は儲かるときは儲かりますが、究極的には損をする人が9割です。公開された主婦3人の方の経験談も参考になります。
第六章
原子力発電が今、世間での当面の関心です。この問題についての私の見解は次の通りです。投資もこの見解から立案しています。基本的に原子力は現在の技術では否定せざるを得ません。しかし長い目で見て将来化石燃料が枯渇した時には原子力が見直されることになるでしょう。その時までにより研究を重ねて安全な原子力発電を人類は手に入れておかなくてはなりません。再生可能エネルギーも開発する必要は考えますが、ますます増大していくエネルギー需要から見るととても必要なだけの電力を供給することは不可能だと思います。それでは当面原子力発電に代わるものは何かといいますと、非在来型天然ガスをはじめとする天然ガスと新型の石炭火力発電ではないでしょうか。私の投資の主力はこの方面に向けています。天然ガス発電と石炭火力発電ではコンバインドガスタービンが主要な役割を演じます。電源開発は石炭火力発電に長じた会社であり、川崎重工はコンバインドタービンで実績を持っています。日揮は新しいエネルギーの開発全般に特徴があり、日立は発電全域に対し技術を持っています。また東芝は傘下にウエスチングハウスを持ち原子力発電に可能性をみられ、新しい原子力発電所建設が不可能でも現在ある原子力発電所の解体処理にその能力が必要になるでしょう。国際石油開発帝石は我が国トップの石油開発能力を持ちその他天然ガス・再生可能エネルギー分野でも期待できます。
このほか現在楽天証券に口座を開いて、中国株の購入もしています。私の見るところ中国は着実に発展していますし、人口13億の広大な市場は無視できません。中国株についての情報もネットを使えばいろいろと知ることが可能です。現状では中国の株式は比較的安く手に入れることができますし、中国の政治的なナショナルリスクは大きいのですが、近ごろの日本の政治の結果から中国との経済交流が危機に陥っていることも私には刺激になっているのでしょう。政治形態に不安はあるのですが、反面経済の波にどのように政府が手を打っていくのか、この頃の日本政府の対策はないのに等しいですから関心があります。現在保有しているのは、チャイナ・ユニコム(4000株)、恒安国際(1500株)、昆明機床(12000株)、配当金の上でも、株価の上(114%)でも思った以上に成果を納めています。
アメリカ株としてはこれからの発展も考えられる3Dプリンター関係でDDD systemsを少し(290株)持っていますが、最近も一度大きく値上がりしたので
利益を確定するため売却をして過去の赤字の補填にあて、その後株価が下がる局面を迎えましたが将来性に賭けて買い戻し買い増しました。DDDシステムズは現在のところ配当がありませんが、株価の方でも損失(現況購入価格の55.9%)が見られています。しかし3Dプリンターはまだ伸びるとみて少し買い増しました。アメリカ株はトータルで現在価格は55.9%です。
現在2014年11月4 日現在は国内株式で111万、中国株で39万の含み益、、米国株で59万の含み損、投資信託(除MMF)で30万円の含み益となっています。全体としては20年間で通算186万の含み損です。
ここからしばらく投資信託について書きましょう。
資産としては株式と比べると投資信託はおもしろくありませんが、経済の大勢の指標として少し持っています。
家内の名義のものは被後見人として家庭裁判所が株式の保有を認めませんので、フィデリティ欧州中小型株オープンとフィデリティ・グローバルエクイティを家内の分として保有しています。幸い多少分配金がありますから,後見人としてはまずまずのところでしょう.私名義ではJPモルガンの「JFアジア成長株」、キャピタルアセットマネージメントの「世界シェールガスファンド」、「野村原油先物投資」、中国関係の投資信託「ノムラ中国株ファンドB」を保有していますが,これらは世界の経済のある種の指標としているのです。財産の保有手段としても最近は目立って良くなってきました。
現状で財産は投入額の100.6%になりますが、これまで20年間の過去の分まで考えますと過去の確定損失が303万円に上りますから現在の黒字分を加えても総額272.7万円まだ損失したことになります。
|
第七章
投資信託は取扱者(たとえば銀行)が手数料稼ぎに利用しており、その値段のうごきや内容構成には自分の手が届きませんから、私は株の方がポートフォリオ構成に自分で責任をとれるので好きです。投資信託も短期の上下に一喜一憂する人はやめておいた方がよいと思います。
わたしは特定口座を開設しています。これまで源泉徴収ではなかったのですが、特定非課税分の処理も終わったので、確定申告に必要な売却時の書類を送ってもらえるのを「良し」としたからです。この点では野村證券に保管を託していたのはラッキーでした。具体的に書きましょう。私の古い神戸2007年6月7日消費者団体訴訟制度が発足しました。詳しくは消費者庁の情報を御覧下されば手がかりが得られると思いますが、要点を申しますと「消費者が不当な契約条項、例えば@業者の賠償責任を免除する条項A消費者に過大な違約金を設定する条項B信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項による被害を被ったり、不当な勧誘行為、例えば@不実告知・断定的な判断の供与A不利益事実の告知をしないB不退去や監禁などの不法行為の下での契約」による被害を受けた時に内閣府が認定した「適格消費者団体」が個人に代わって「今後その様な不当行為を差し止める請求」ができるようになりました。現段階では差し止め請求までで賠償請求はできない不十分なものです。
これまで少しドルに慣れるためにUSMMFにドル投信を設定していたのですが、ドルの将来に不安を感じて、また信託銀行のBIGも現状あまりにも低金利なので、外貨MMFに投資したこともあります。私の見るところ、トルコ・ブラジル・メキシコなど金利のさらに高い国はありますが、あまり金利が高いと国情が不安定の場合もあります。外貨MMFは毎日付く利息は1ヶ月ごとにまとめて分配され、買い増していくので1ヶ月複利となります。これは運用上大きいです。外貨MMFはホームトレードで売却してMRFに移し郵便局を使って簡単に引き出しもできます。一面円高になると元本評価損も大きく出ます。
シティ・バンクなどへの直接的外貨預金は、口座維持経費など考えて今のところ見合わせています。
7月と12月には株式配当が合計約30万ありますから、余裕資金にあてます。
資産運用を勧める電話がときたま飛び込んできます。低金利時代に入ったいま、いよいよ異常に高い利息を払うというものは用心しなければなりません。外国の債券もこの手のものは先々債務不履行のことがあります。まして詐欺師の金儲け商法の甘い口に乗ってはなりません。乗るなら後で痛い目にあっても、それは自分の"欲"の結果ですから、人のせいにしたり監督責任があるからといって国や行政機関の責任にはできません。豊田商事事件の裁判結果からもこれは分かることです。だいたい国の監督といっても国は本来そんなに個人の味方として信用のおけるしろものでは無いのです。高利回りのPrinston Economics International発行の「プリンストン債」という外国の私募債を買っていた多くの一流会社が、債務不履行を被り多額の損失を出しました(1999年9月20日)。これなどは会計処理が原価主義から時価主義に移行するのを控えて、発生する損失を隠すために、欲に目が眩んで怪しげな私募債を買った付けのようです。(その上担当者への闇リベートがあったことも魅力だったのでしょう)。一流会社でさえがこれです。最近では、個人を対象に投資信託の装いをしたインチキ商品さえ出始めているようです。高収率で危険のない商品など絶対にありません。EB債なども怪しげなものです。
最近の例では、元手をつぎ込んでくれれば低利でその7倍まで融資し、株を底値で買って儲けましょうと言って、全国約200人から資金を集め、運転資金や遊興費に使っていたケースがあります。ご用心、ご用心!!
「隣は詐欺師」・・・夏原武もご覧ください。
子供達にはよく「子孫のために美田を残さず」と西郷隆盛はいったそうな、と話しました。独立独歩こそがまず原点であり、財について親を当てにするようなことではろくなことになりません。この言葉を挙げたのは財産ではなくて、人づくりが親にとって大事な仕事だと言いたいからです。お金を借りて返すということも学ばせておくという知人もいますが、私は「借金せず」のやり方です。参考までに書いておきますが、2013年の金融広報中央委員会の調査によりますと、借入金のある家庭が39.8です。万一読者の中に貸金業者からお金を借りておられて法定利息以上に利息を支払われた方があればみなし弁済規定についての知識を持たれることも必要でしょう。やはり利子を付けて返すお金と多少とも利息が入ってくるお金では、上下大変な違いです。デフレは過去の借金の重みを増幅させるのですが、私にとってはデフレは完全な手持ち資金の価値の増幅です。ローンなど借金がありますと、その返済のスケジュールが引っかかって勤めを辞められないということも、起こり得ます。それが無かったおかげで、家内の病気で勤めを急に辞めることになった時も自由に、即座に実行できました。人の一生、いろいろな事情で借金もしなければならないこともあるでしょうが、無理のないようにベースになる資金は常々自分で用意して置かねばならないと思います。昔の人も「恒産なければ恒心なし」といっていますし、チャップリンも「人生に必要なものは勇気と想像力、そしてほんの少しのお金」といっています。私のような精神修養の足らない凡人には、それが自分の心の自由を保障してくれるのです。人それぞれ心の自由というものほど、かけがえのないものはありません。
私は自分で“支払い魔”だと思っています。物を買ったり請求書を受け取ると即刻支払うのを原則にしています。こうすれば支払いが溜まって一度に多額のお金を準備する必要もありませんし、後で支払った方が安くなるのならともかく、払えばもうその支払いのことは忘れてしまえます。受け取る人も支払の速いことを喜んでくれます。
それぞれに事情のあることでしょうから、一般論として読んで下さればと思うことがあります。それは近頃銀行の貸し渋りが大きい問題になっていますが、バブル期といわずこれまでは右肩上がりのインフレ経済でしたから、借金してもその重荷は年月が経つに連れて自然に解消していったものです。企業も個人もこの傾向が当たり前のことになっていましたから、いわば“借金経済”が当然になっていたのです。銀行も土地を担保とした安易な融資に溺れて、その企業の将来性、企画・運営能力を審査することなく、また審査能力さえ不要という状態で融資をしてきました。その結果が焦げ付き−−不良債権化−−だと思います。銀行は貸さないと採算がとれないのですから、本来貸し渋りはあり得ないのです。
ところで日本の銀行は依然として担保主義で貸し付けをしています。このため不良化するかも知れない貸付を回避し、日銀が金融を緩和してもお金は銀行止まりで中小企業にはお金が回らないのです。企業の事業力を診断できないバンクマンの体質が変わっていないところに最大の問題があります。
ゆうちょ銀行は総資産の80%以上を国債に投入し一般の銀行でも15%程度は国債に投入しています。銀行は現在70兆円以上(108兆円とも)の国債を保有して預金利息との差を稼いでいます。
国も国債のよい買い手として利用していると見るべきでしょう。こうして間接的にわれわれ預金者の資金を国債購入に回しているのです。貸出先の選別能力を持たないので、本当にお金の要る企業への貸し出しはせず、中小企業への貸し渋りも起こしているのです。優秀な企業はこれから銀行からの借り入れではなくて、社債や新株を発行して市場で直接資金調達する方向を強めるでしょう。ビッグの役割が終わったのもこの現れです。金持ち優遇と云われようが、制度的にも株式投資の優遇策を取り入れざるを得ません。現状ではお金の循環が死に体に陥っているからです。個人も、デフレ基調の現在は銀行やクレジットからの借り入れ経済から、基本的には自立しないと利払い地獄状態に追い込まれて行くことは明かです。英語のことわざにも“Out of debt, out of danger"(借金がなければ、危険はない)というのがあります。今後いずれはまたインフレへの動きが国債の大量発行の裏返しに顕在化して来るでしょう。そうなれば、日銀の基準金利引き上げも現実のものとなり、間違いなく借り入れローン金利は上昇します。
日本でも2003年の個人自己破産申し立て件数は24万2377件に上りました。グラフではどんどん増えてきていることがわかります。この年をピークとして一応減ってきています。2008年は12万9508件でした。
東京弁護士会法律相談センター運営委員会によると最近はリストラや給料減によって住宅ローン返済ができなくなっている人が増え、負債額が1,000万円以上というケースも少なくないということです。何千万円も借りて手に入れた家のローンはそのまま残っていますが、家の価格は半値になって儲かるどころか資産としての価値も下がり、破産に追い込まれるのです。家が資産の時代は終わりました。借金を重ねていわゆる多重債務に苦しむ人も増えています。この苦しんでいる多重債務者を食い物にする悪い人もいるのです。世の中万事うまい話にはご用心。悪質な一例
強盗・殺人事件の多くに借金返済の困難が理由になっている例が増えてきました。(安易に借金をして最後に自己破産すればよいとお考えの方は、ぜひこれで納得!自己破産手続&自己破産のデメリット でも一読されるとよいと思います。かなりの費用を出して弁護士に依頼をせねばなりませんし、弁護士のバッジを付けていても整理屋と結託した悪徳弁護士も多いのです。裁判所が自己破産をすべて認めるわけでもありません。その後数年間はブラックリストに載せられますのでローンもクレジットカードも組めません。幸い一度破産免責を受けても、その後また借金をすると今度は破産法では10年間は免責を受けられないことになっています(第366条ノ9 裁判所ハ左ノ場合ニ限リ免責不許可ノ決定ヲ為スコトヲ得。4.%破産者ガ免責ノ申立前10年内ニ免責ヲ得タルコトアルトキ)から、ヤミ金業者はよいカモと誘いの手を伸ばしてくるといいます。なお特定調停という制度も2000年2月にスタートしています。この場合も書類作成には弁護士か司法書士の資格が必要です。『返済がいったん止まる』という甘言で迫ってくる無資格悪徳業者も横行していますから注意が必要です。特定調停Q&Aも参考になりましょう。私の家も大正時代に米相場で破産を経験しています。その影響は祖父一代に止まらず、その後の世代にも及びました。
なお、2001年4月からは個人版民事再生法(個人債務者の民事再生手続に関する特則)も施行されています。
−−−今一番大事なことは生活運営の基本的な考え方を切り替えなければならないということでしょう。私はそう思います。竹下首相の各自治体への1億円ばらまき、公明党発案の地域振興券に乗っかった7000億円の小渕・森両内閣の施策は従来の考え方からすると当然の政策だったのでしょうが、私たちの将来への不安が何も解消されなかったと言う意味では、壮大な浪費でした。國の莫大な赤字は施政の手詰まりを招き「小さな政府」を余儀なくさされています。少子化の進行で今世紀は国民の数も減ります(いま考えていること 62(2001年01月)―21世紀を迎えて−これからの日本―もご覧下さい)。将来への不安をなくする政策、例えば経済構造を変革し、新しい分野への投資を大胆に展開して、新しい利便を創生し、雇用の機会も増やすとかして、舵を切り替えることが必要なのです。従来型の公共投資の限界は政策シンクタンク「構想日本」の論文でも指摘されたことでした。国民としては、やはり基本的には自己防衛のためすべての分野に亘って縮小、堅実化を大原則にした生活に切り替えざるを得ないと思います。今のステージで、「かっての繁栄を追い求めるのは幻想だ」と言っておきましょう。
漱石の「こころ」上 先生と私 28節「君のうちに財産があるなら、今のうちによく能く始末をつけて貰って置かないといけないと思うがね、余計な御世話だけれども、君の御父さんが達者なうちに、貰うものはちゃんと貰っておくようにしたらどうですか。万一の事があったあとで、一番面倒の起こるのは財産の問題だから」。尊敬する「先生」の口からあまりにも生々しい言葉が出たので「私」は驚かされたのでした。遺産を巡ってのトラブルは絶えません。遺産を残すことを考えるよりも資金の投入によってその対象が活きてくるならば、思い切って生きているうちに使いましょう。子供たちにしても親が死んで転がり込んできたお金は本当の有り難みがわかりませんから、大抵は詰まらぬことに使ってアッという間に霧散してしまうものなのです。残さないで子ども自身の力で道を切り開かせる方が大事だと思います。
所詮自分のものなど何もありません。命をはじめ、すべては借り物、いつかは返して空(クウ)に帰るのです。私たちは不思議の国からの旅人なのです。
|
| | |