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ネイト(Neith)

neith.JPG サイス〔エジプト北部に位置する下エジプトの古代都市〕の三相一体の女神で、アナタAnathaアト-エンナAth-ennaアテナAthenaメドゥーサMedusaとも呼ばれた。

 エジプト人は、彼女の名は「私は私自身から来た」を意味すると言った。彼女は「世界の身体」、そこから太陽が最初に昇った「原初の深淵」、ラーRaに生命を与えた雌牛」であった[1]。彼女は死すべき運命の者が面と向かって見ることのできない「ヴェールの奥の精」であった。女神はみずからを「昔いまし、今いまし、やがてきたるべき者すべて」と述べたが、この言葉はキリスト教の福音書に模倣された(『ヨヘネの黙示録』第1章 8節)。ネイトは王朝時代のエジプトより以前から存在していた女神であった。先史時代の氏族は彼女の象徴を保持しており、第1王朝の2人の王妃が彼女の名前を持っていた。ギリシア人は彼女をNeteとして知っており、Neteはデルポイムーサたちのもととなった三相一体の女神の一人であった[2]

 聖書の中では、彼女はアセナテ(イーシスIsis-ネート)と呼ばれ、ユダヤ人が「オン」と表したアヌの都市の「太女神」であった。女神の大祭司ポテペラが女神の「父親」とされたが(『創世記』第41章 45節)、これはテイレシアース女神マントの「父親」とされ、ヒンズー教の創造神ブラフマンBrahman(梵天)がサラスヴァティSarasvati(弁財天)の「父親」とされたのと同じである。女神自身はヨセフの妻である。ヨセフのエジプト名は「女神(neter)の言葉によって生まれた者」を意味した[3]


画像出典:Egyptian Mythological Deiti

[1]Budge, G. E., 1, 451, 459, 2, 299.
[2]Larousse, 37, 118.
[3]Budge, D. N., 34-35.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)


『創世記』第41章 45節
 「パロはヨセフの名をザフナテ・パネアと呼び、オンの妻子ポテペラの娘アセナテを妻として彼に与えた。……[50節]ききんの来る前にヨセフにふたりの子が生まれた。これらはオンの祭司ポテペラの娘アセナテが産んだのである。[51節]ヨセフは長子の名をマナセと名づけて言った、「神がわたしにすべての苦難と父の家のすべての事を忘れさせられた」。[52節]また次の子の名をエフライムと名づけて言った、「神がわたしの悩みの地で豊かにせられた」。