ギリシア・ローマ神話では、メドゥーサはその視線で人を石に変える恐ろしいゴルゴーンになっている。メドゥーサは先祖の英雄ペルセウスによって首を切られたリビアの女王だったとアルゴスは言った。ペルセウスはメドゥーサの頭(あるいは儀式用仮面)をアテーナイに持って戻ってきた[1]。
実際には、メドゥーサは「女性の知恵」(サンスクリット語ではmedha、ギリシア語ではmetis 、エジプト語ではmetあるいはMaatと言う)を表すリビアのアマゾーン女人族のヘビ-女神であった。メドゥーサはエジプトでネイト、北アフリカでアト・エンナあるいはアテーナーと呼ばれる三相一体の太女神の破壊者の側面であった。サイスにある碑文では「出産が存在する以前に生んだ、万神の母」とメドゥーサが呼ばれていた。メドゥーサは過去であり、現在であり、未来であった。つまり「今いまし、昔いまし、やがてきたるべき者」であった[2]。メドゥーサに関するこの碑文があまりに有名だったため、キリスト教徒はのちにエホヴァのためにこれをまねした(『ヨハネの黙示録』 1 :8 )。
「私を覆うヴェールを持ち上げられた人間はなかった」とメドゥーサは言ったが、それはメドゥーサが死であって、メドゥーサの顔を面と向かつて見ることは死ぬことを意味し、すなわち葬式の彫像のように「石に変えられる」ことであった。メドゥーサは未来であったので、ヴェールをかぶっていた。未来はつねにヴェールをかぶるものだ。メドゥーサの隠されている危険な顔のもう1つの意味は、月経のタブーであった。原始的民族は、しばしば月経中の女の視線は人を石に変えることができると信じた[3]。メドゥーサは生命を造ることも、破壊することもできる魔法の血を持っていた。このようにメドゥーサは、恐ろしい生と死を与える女の月-血を表した[4]。Menstrual Blood.
ペルセウスの話は、アテーナーのアイギス(盾)の上にメドゥーサの顔が登場する理由を説明するために発明された。この話はアテーナーが現実に同ーの女神であった、前ギリシア時代から受け継がれた(アテーナーの母であると申し立てるメーティスとしても神話化されている)。アテーナイ人は自分たちの都市の女神はゼウスの頭から生まれた、ゼウスの「知恵」であると装った。しかし、さらに古い神話によれば、アテーナーはリビアの3人の女王、つまり三相一体の太女神から生まれ、メーティス-メドゥーサはその破壊者の側面である[5]。 1本1本がヘビである毛に囲まれた女の顔は、昔から広く認められた神聖な女性の知恵のシンボルであり、同じく女性に神聖なカを与えたと思われる「知恵の血」のシンボルでもあった。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
詳しくはAlicial Le Vanの論考を参照。