U


ウーラニアー(Oujraniva)

urania.jpg

 「天上界のもの」の意で、天の女王としてのアプロディーテーの添え名。彼女の以前のウーラノスは古典時代の神話では、男根を切断された彼女の「父親」に変えられてしまった。ウーラノスを殺害した息子が、切断した父親の性器を海に投げ入れると、海-子宮アプロディーテーを生んだ。実際は、天のアプロディーテーと海-子宮とは同じものであった。つまり、三相一体の女神が処女と母との2相に化身したのであった。男根を切断され生贄として死んでいく神は、女神の遍在する息子-恋人であり、神は死んで、その死によって女神を豊穣にし、再び女神の胎内に子として宿った。

 ウーラノスは、性別があいまいな神ヴァルナの西洋版であった。このヴァルナは、ときには、ヘルメーステイレシアースのように男から女に変わる神であった。ペルシア人にとってヴァルナは、ヴァラン varan つまりヒンズー教のカーマのような、性交を司る霊であった。彼の名前は、女の機能である、「包む」を意味する語根 vr に由来しており、彼は、水を血に変えたり、太陽を生んだり、大地を測ったりというような、本来は女の行う奇跡を彼も真似して行った[1]。アジアにおける先例に鑑みて、ウーラニアーとウーラノスは、ヤナ-ヤヌス、ディアーナ-ディアヌスなどと同じ原初の両性具有神であったと考えてもよかろう。


[1]Campbell, Or. M., 177.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 アプロディーテーの別名。
 ウーラノスを家長とする家父長制的な神話は、オリュムポスの宗教体制のもとで初めて公に承認されたものであった。ウーラノスは、いつしか「天」を意味するようになった名前だが、後にアーリア系の三位一体の男神の1柱である農牧の神ヴァルナと同じものとみなされて、天地を創造する最初の神としての地位をかちえたものらしい。しかし、そのギリシア名は、ウル=アーナ(Ur-ana「山々の女王」、「夏の女王」、「風の女王」、もしくは「野牛の女王」)— つまり、狂乱の真夏の姿をした女神の男性名詞である。(グレイヴズ、p.51)