今までは全く治療出来ないと思われてきた、難しい、そして不思議な声の病気が手術で治る様になりました。 例えばけいれん性発声障害です。
その為、患者さんが全国、遠方からも本院に来院するようになり、急増して参りました。
このような状態に対応する為、当院としましては新たに院内にボイス サージ センター Voice Surg. Centerを立ちあげ 、難治性音声障害を集中的に精密検査しています。
費用については従来通り保険適用で変わりません。
電子内視鏡、声帯振動を見るストロボスコピー、ビデオキモグラフィー、声を出している時の呼気の流量、声を出している時の呼吸運動、声の能率、声の特長を分析する各種音響分析、周波数分析、声の高さの測定など。
我々は今までにこの病気の方300人以上(2010年8月現在)に入院手術をして、2人を除いて(声を出す筋肉以外にも問題、ジストニアがあった人)、他は全員良くなっています。
このように手術成績(甲状軟骨形成術2型)は極めて良いのですが、予防法は今の所ありません。
殆どは、声を出すのに声帯を強く締め過ぎる内転型というもので、手術でほぼ確実に治ります。 一色クリニックで開発したチタンブリッジを用います。 日本と米国で特許取得(図)
どのくらい強く締めているのか精査します。
ところが逆に、声を出す時に声帯が外転(開く)してしまい、声が出ない外転型に対する治療は今の所ありません。 極めて珍しいのですが。
男性で声変わり後も小児期のような高い声が続く場合(変声障害)
殆どは言語訓練で治るので、先ずそちらを優先します。 どうしても治らない場合は、手術で簡単に大体希望通りの高さの声に低く出来ます。
女性で異常に低い場合 (薬の副作用、ホルモンの影響等により)
手術(甲状軟骨形成術4型)で高くすることが出来ます。
男性ホルモンの内服でも低くなりますが、どの程度低くなるか予測が困難です。
タンパク同化ホルモンの影響で、声が低くなった場合薬を止めても自然に戻る事はまずありません。
GID (gender identity disorder) の場合
肉体的には男性で精神的には女性を希望する方で最後の悩みは声が低い事です。
声帯のケナコルト注射か甲状軟骨形成術4型か或いはその併用で声を高くする事ができます。
ごく軽度の嗄声で、声帯間の隙間も狭い時には、甲状軟骨形成術、声帯注射などでも治りますが、嗄声の程度が高度の時は、披裂軟骨内転術と、甲状軟骨形成の併用手術が最善の結果となります。
但し外科医の経験と技術が重要です。
炎症の後、生まれつき、ホルモンの影響、麻痺の後、ホルモン(老化現象として)その他色々な原因で声帯は萎縮し、細くなります。上から視ると弓状に凹んで見えます。声は空気が抜けるのでかなり掠れ声がひどいです。甲状軟骨形成で治すと、術中調整ができ、また、声帯注入の様に多量入れ過ぎて声が悪くなるとか、段々入れたものが吸収され悪くなる事はありません。声帯瘢痕とか声帯溝を伴っていなければ非常に良くなります。
甲状軟骨形成術 と 声帯注射
声帯注射は、皮膚を切らなくて良いのは利点ですが、欠点としては、声を出しながらやるわけではないので、注射の位置と量の調整が正確には出来ない点、量が多過ぎると声が返って悪くなるかもしれない点、また注射する物によっては(例えば脂肪とかコラーゲン等では)術後徐々に吸収されてしまうかもしれない点が挙げられます。
シリコン(液状)を声帯に注射する事は昔、他施設で行った事もある様ですが、現在は全く行われておりません。
固形シリコンを甲状軟骨形成に使用する場合には、声帯に入っていないので全く心配ありません。 液状シリコンと固形シリコンを混同しない事が大切です。 液状シリコンを声帯から取り除くのは極めて困難です。
また声帯麻痺(反回神経麻痺)で、両方の声帯の隙間が非常に広い場合は、声帯注射で治すのは無理で、披裂軟骨内転術と甲状軟骨形成術1型を併用するのが最善です。