他の声の病気とは違い、客観的には支障が少ないようでも、本人にとって社会生活上の悩みは深刻で、精神的な影響は大きい症状です。
男性として声が異常に高く、音声訓練はしばらくしたものの拒否、手術で声が低くなり、性格も顔つきも劇的に変わった例。
逆に、声はほぼ正常だが、本人がもっと高い声を強く希望した例。
女性で男性ホルモンや蛋白同化ホルモンを投与され、声帯が太くなり異常に声が低くなり、電話でも男に間違えられたりする場合。→男性化音声
GID:gender identity disorder 性同一性障害の場合、など。
ヴァイオリンで高い音を出す時には左指で調節し、弦の振動部分を短くします。同様に短い声帯は高い音(声)を出します。女性の声帯は男性の声帯より短いので、
声は女性の方が男性より高いのです。
a) 輪状甲状軟骨接近術(一色の甲状軟骨形成4型)
実際、高い声を出す時は輪状甲状筋が収縮して、輪状軟骨と甲状軟骨が接近し、その結果、声帯は引っ張られ緊張します。手術でもこの筋の働きをまねて二つの軟骨を糸と人工組織で引き寄せます。 輪状甲状軟骨接近術と言います。
声は確実に高くはなりますが、希望通りとはいかない事も屡あります。その理由は弦が太ければいくら緊張を高めてもそんなに高い音は出ないのと同じで、太い声帯の緊張を高めても声を高くするには限度があると言う事です。また声域は少し狭くなりますガ、会話の抑揚には影響ありません。
b)甲状軟骨拡大術
甲状軟骨の前後経を延長すれば、声帯も緊張します。同じ原理で甲状軟骨翼両側を縦に切り、その間に何か安全な人工物(セラタイト、やや高価)を入れれば声は高くなります。この方法は一側づつやらねばならず、面倒な面もありますが、声域には影響しないという利点もあります。
a)声帯注射
声帯を簡単にメスで削り取ると言う事はやりません。メスで削ると後に瘢痕が出来て、これが原因で声が出なくなってしまう恐れがあるからです。 最も安全に瘢痕を作らず、声帯を薄くする方法は声帯に貯留性のステロイド(ケナコルト)を注射する事です。この薬が組織に長く留まっていると組織は段々萎縮して細くなってきます。ただこの声帯注射は声帯がかなり奥にあるのでそう簡単ではなく、正確に注射するのは容易ではありません。あまり効き過ぎて声帯が萎縮しすぎると声はかすれてしまいます。2ー3回以上に分けて注射し少しずつ経過を見た方が安全です。注射の方法も幾つか有り、咽の反射が強かったり声帯が見え難い人では全身痲酔下にする事もあります。
b)レーザーでの声帯部分焼灼
気化 レーザーを声帯に当て部分的に蒸発気化させる方法ですが、やりすぎない様注意が肝心です。
症例1 声帯を厚くし、声の高さを低くした例 (29歳 男性)声が高くて、話し難い為に受診。 | ||
症例2 声の高さを高くした例 (29歳 GID)女性のような声を獲得したい為に受診。 | ||
症例1 男声化音声輪状甲状軟骨接近術と声帯のケナコルト注射を行った結果 | ||