日本刺繍 森繍

伝統工芸刺繍作家
日本工芸会正会員 森康次 公式ホームページ

日誌という名の記録

下記のリンクをクリックして頂くと各回の講義日誌へジャンプします。

「刺繍実技」授業内容 2010年1~3月

1月18日(月)

1時限
簡単な朝礼 この授業の概略と進行の説明
刺繍台の組み立て 布張り
2時限
刺繍糸の解説 糸のより方 割り方 運針

1月25日(月)

1時限
運針 ぬい始めとぬい終わり
2時限
試しぬい

2月1日(月)

1時限
各自の帯やきものに刺繍をする
2時限
同上

2月8日(月)

1時限
各自の帯やきものに刺繍をする
2時限
よく解らないだろうが、とにかく手を動かす。

2月15日(月)

1時限
各自の帯やきものに刺繍をする
2時限
ひたすら刺繍をする

2月22日(月)

1時限
各自帯やきものに刺繍をする
2時限
もくもくと刺繍をする

3月1日(月)

1時限
各自の帯やきものに刺繍をする
2時限
脇目もふらず刺繍をする

3月8日(月)

1時限
講義 「日本刺繍の歴史」
2時限
無我夢中で刺繍をする

3月15日(月)

1時限
出来ていない人は頑張って刺繍する
2時限
出来た人は見学かもっと沢山する

1月18日月曜日 快晴2重○

伝統文化コース 「刺繍実技」の記念すべき初日、
上賀茂を6時50分に出る。
5月に経験済みだから何の不安もない。
市営地下鉄に乗り竹田で乗り換え、西大寺もう一度乗り換え富雄まで。
自転車で最寄りの駅まで行くのだが、冷たかった、耳も鼻もちぎれそうになった。
お勤めの方は毎日ですか~~と感心しながら電車に乗る。
それでもなんとか無事に学園に到着。
懐かしい顔ぶれ、みんな元気そうで何より。
教室は「教養室」を使わしていただく、炉ががきってある茶室にもなる部屋で、詰めれば15人程は入れそうだ。
「組紐」の授業に使った組台なんかを代用して手元を照らす明かりを確保。
新品の刺繍台を各自が組み立て、染めの授業で完成さした、各自の「友禅の帯やきもの」に刺繍を入れる。
今日は初日でもあるので「あまり裂」を利用して「試しぬい」

講義日誌

刺繍糸を撚らなくてはならない。
左手は布の下に入り見えない。
布の織物としての組織を見なくてはならない。
この様なことは非日常で初体験、はい、苦労の始まりです。

1月25日月曜日 曇り

伝統文化コース 「刺繍実技」の記念すべき2日目
携帯電話のアラームで起こされ、何でこんな時間にと思いながら、我に返る。
さっさと用意して、いつもの時間にいつもの電車。
正確に決められた時間に電車が来ます。
優秀です。
二回目ですから前回の繰り返し、ただし「試しぬい」は今日まで、次回は各自の帯やきものに刺繍をします。
しっかりマスターしなくてはいけません。
この伝統文化コースでは、織り 糸染め 本友禅(糸目友禅)が授業に含まれていて、すでに終わっています。
各自「染め名古屋帯」が完成しています。
(ひとりはきもの小紋)その友禅がしてある所に刺繍を入れていきます。
いわゆる「あしらい刺繍」です。
友禅模様の中に刺繍が入りますから、出来上がりに重量感が出たり趣が増します。
糸を撚ること、刺繍糸を割ること、両手で針を操作すること、慣れない作業で大変ですが、れでもやっていれば少しずつ慣れてきます。あっと言う間に2時限が終わりました。時間が速く経ちます。
12時32分西大寺発国際会館行きに乗車、北大路に1時25分くらいに到着、少し時雨れていました。
また寒くなりそうです。

2月1日月曜日 雨のちみぞれ

伝統文化コース 「刺繍実技」3日目
雨模様の寒い一日が始まろうとしている。
幸運にも朝の出かけ時は雨が降っていなかったので、いつものように自転車で北大路まで。
今日から各自の帯やきものに刺繍を入れる。
友禅で完成されているものに刺繍を施し、アクセントを付けたりより豪華にする手法です。
日本刺繍は全てが手作業でわずかな力加減で上手くいったり、調子が悪かったりする。
何回も繰り返し練習をして身につけて行かなくてはならないのだが、限られた時間内で作業を進めなくてはならないので大変です。
帯の人は「お腹の柄」からきものの人は「袖」から、各自刺繍台にその場所を張り刺繍に取りかかる。
刺繍針をもって二日目、簡単に慣れるものでもなく悪戦苦闘だが、それでもなんとか出来ていく。

講義日誌

2月8日月曜日 曇り

伝統文化コース 「刺繍実技」4日目
刺繍の作業は時間がかかる。と言うよりも一所に要する時間があまりにも長く必要です。
根気と体力がいるのです。
「根気がいるでしょう」とよく言われます。
その時は「はい ダイコン や レンコンを食べるようにしています。と応えるのです。
それはさておき、座り仕事ですからあまり体力がいらないように思われがちですが、同じ体勢を維持するには大変なエネギーが必要です。まして両手を使い、片方の手は生地の下です。
そんな中でもけなげに頑張っています。そして費やした時間分だけ刺繍をした面積が増えていきます。
成果がが目に見えていくのは嬉しいものですが、座って、手を動かしていなければならないのも辛いものです。
夜みんなが寝静まった後に7人の妖精が出てきてこっそりと続きをしてくれる。
そんなことがあればいいのですが・・・・・

2月15日月曜日 雨

伝統文化コース 「刺繍実技」5日目
近畿地方は弱い雨。奈良はみぞれ、雪マーク。寒い一日の始まり。
教室は教養室と言う和室を使っている。ヒーターが入っていて温かいので助かる。
5回目だから皆さんだいぶ慣れてきています。
まだまだおぼつかないけれど、より糸の補充は自分で出来るし、刺繍台の張り替えも要領が分かっているので早い。刺繍の出来映えは上手くいっているところとそうでないところがるが、それは仕方ない。
あと四回で仕上げなくてはならない。
今日のタイトル通り休み時間を返上して、ひたすら刺繍をしていました。
最終の3月15日はもう春だろうか。

講義日誌

乱菊の花びらを「すがぬい」で大きな花びらは1本のより、小さな花びらは半割れのより

菊の花びら「ぬいきり」中心の黄色いところ「変わりぬい」使用いと1本のより

ピンクに桜「目飛ばしのすがぬい」一本のより

2月22日月曜日 晴れ

伝統文化コース 「刺繍実技」6日目
今日は良いお天気でした。
北大路駅から午前7時13分頃の電車に乗るので、そこまで自転車で行きます。
大きな朝日が眩しいくらいでした。
今日で6日目です。「もくもくと刺繍をする」です。
皆さん頑張っています。その分少しずつですが確実に刺繍をした面積が増えていきます。
それから、左上から明かりがいるのですが、用務員のおじさんがいいのを作ってくれました。
これはありがたいです。
刺繍をしているところをピンポイントで照らさなくては針目が見にくいので、少し困っていたのです。
作業がはかどります。
今日は画像がありません。

3月1日月曜日 晴れ

伝統文化コース 「刺繍実技」7日目
今日も良いお天気でした。
大きな朝日が眩しいくらいでした。時刻はいつも午前7時位なのですが、太陽の位置が少しずつ高くなっているように思います。日の出が早くなっているのでしょう。
春がどんどん近づいています。
もう7日目です。「脇目もふらず刺繍をする」です。
今日は病欠もあって4人。

1本の糸を半分に割って細いより糸を作るのだが、なかなか割れない。

3月8日月曜日 晴れ

伝統文化コース 「刺繍実技」8日目
今日も良いお天気でした。
この授業も残すところあと一日。
完成に近づいてはいるのですが、もう少し頑張らなくてはいけません。
作業がはかどらないのは仕方ありませんが、この教室が使えるのも次回15日まで。
大変です。
日本刺繍の変遷と言いましょうか、歴史を少し講義しなくてはなりません。
貴重な時間ですが1時限頂いて飛鳥時代の現存している、「天寿国曼荼羅繍帳」、小袖そして現代までを駆け足で説明。

講義日誌

3月15日月曜日 曇り

伝統文化コース 「刺繍実技」9日目
授業が終わり、来年度の打ち合わせを済ませる頃には小さな雨が降ってきました。

とうとう最終日がやってきました。
今日中に刺繍台から生地を外し、この部屋を出なくてはなりません。
そのつもりで先週から最後の追い込みかけ、全員なんとか完成しました。
たいしたものです。
道具に頼るところがなにもないのが「刺繍」です。
ただモクモクと刺繍台の前で作業をしなくては進むことが出来ません。
「あしらい刺繍」という刺繍の仕方で友禅模様の一部にアクセントとして刺繍を入れるのですが、少し刺繍が入るだけで見違えるほどよくなります。京友禅にはこの手法がよく使われます。
そう言う体験学習でした。
本当は「素ぬい」と言って刺繍だけで文様表現をするのが良いのですが、時間的にも物理的にもそれが出来ません。そのような機会はいずれ体験することにしましょう。

下の画像は名古屋帯
桜に兎がいるのですが、白地に白い兎で地色になじみすぎていましたので、「すがぬいの変形」
で生地との差を付け兎の輪郭をピンクで「まついぬい」
目がくっきりするように濃い赤を入れました。

下の画像は名古屋帯
梅にクロネコが2匹、向こうを向いて仲良く並んでいます。
深紅の蝶ネクタイとピンと張ったヒゲが印象深いです。
梅の輪郭は黒糸で組ぬい雄しべと菱形のの白は「すがぬい」
黒猫の近くの黄色い梅の輪郭は「まついぬい」

講義日誌

下の図は名古屋帯
花半月のゆりかごに兎が一匹
菊模様の花を友禅の差し色で刺繍をして、兎は目だけ刺繍しました。
これだけの刺繍ですが大変良くなりました。

講義日誌

時間的にかなり厳しいものがありましたが、全員がなんとかやり遂げることが出来ました。
糸を撚り、両手を使っての日本刺繍はなかなか大変なものがあったようにおもいます。
それでもこうして出来上がるところに「ものつくり」の良さがあります。
完成した帯やきものは着装できます。皆さんの着姿を見てみたいものです。
そしてこの帯やきものはいつまでも残ります。