いかにして美しく見せるかという
ことを考えながら演出することです。
主役と脇役の関係、その背景をイメージしながら
感情移入するのです。
どこかで見た一場面を再現したのでは、観客から笑われます。
「文様から文様を作らず」はあまりにも有名な言葉です。
「塗り絵」をしてはいけません。
どこかにあった下絵に沿って刺繍をする
それは「塗り絵」です。
こんな刺繍が出来ますといって自慢したところで
どんな意味があるのでしょう。
刺繍に限らず『和』の世界では、伝統的な模様を使います。
今までに何人もの下絵屋さんが使い古した
まるで「だしがら」になったような模様に刺繍をしても
面白くもないし何の感動も与える事は出来ません。
刺繍は加飾の仕事です。
紋様や模様を生地につける仕事です。
木工や陶工のように
「器」や「具」そのものを作る作業ではありません。
着物にしても帯にしても器に当たる部分の「形」
は決まっています。
この決まったキャンパスの中でどのような「絵」を書くかは
「構図」が大変重要な課題と役割を担っています。
本当は写生や色彩構成の勉強をしてから
染色に進むのか、織りに進むのか、刺繍に進むのか
進路を考えればいいのですが
現実問題としてそのようにも行きません。
「ぬう」ことに使う時間を半分割いて
デザインの勉強をしてみてはどうでしょう。
将来きっとやっててよかったと思う時がきます。
誰にも始めはあるものです。
焦らず諦めず
こつこつとつづけた者だけがたどり着ける領域があります。
そこへ向けての第一歩を踏み出すことです。
スケッチやデッサンは形を写すことと同時に
物をよく見る訓練をすること
勢いのあるしっかりした線を引く為の練習も兼ねています。
それは自然美の発見と再認識の連続です。
よく見ることによって
今まで気づかなかったことを確認します。
新しい発見に心がふるえます。
植物のしくみと巧みさに感動します。
この瞬間のきらめきは過去と未来をつなぐ接点です。
命のありようを形象化することが
新鮮なデザインを生み出すのです。
美しさを形にするとき、自然界は多くを教えてくれます。
続ける事です。
そうすると「見る」から「感じる」に変わるときがきます。
「飾るな研け」を信条にしています。
デザインをしているとどうしても付け加えたくなります。
装飾的に陥ってしまうのです。
本質に近づこうとするなら省略する事です。
「単純化しながら進化さす」
難しい事ですが乗り越えなくてはならない壁です。
何枚もスケッチを繰り返し
試行錯誤のうえやっとたどり着く事が出来る峰です。
そうして、はじめに描いたイメージとか主題に
少しづつ、少しづつ近づけていくのです。
刺繍には刺繍のデザインがあると考えています。
刺繍を知らない人が描いたデザインは刺繍には不向きです。
デザインをしながら、構図を考えならがら
思いをめぐらせ配色をまとめ、繍技を決めていきます。
そうなりますとどのような下絵をつけるかが
重要な問題になってくるわけです。
繍技とデザインと下絵は連動しています。
刺繍をする者がデザインをして下絵をつける。
大変でしょうけどこれを目指すことです。
一針一針は伝統を受け継ぎながらも
出来上がった作品は
平成の時代の息吹が感じられるものでありたいものです。