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アナーヒター(Anahîtâ Gr. =Anai?tiV)

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 アナヒドとその変形であるアナーヒター AnahitaとアナイティスAnaitisはペルシアとアルメニアの名前で、ギリシア神話のアプロディーテー、バビロニアとアッシリア神話のイシュタルと、フェニキア神話の アスタルテーに相当する女神である。海と星とを支配し、運命の女神である。ミトラ信仰の秘儀はとても男性中心的なものであったが、創造の女性原理としてアナーヒターをなくてはならない女神とした[1]


[1]Cumont, M. M., 180.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 ペルシアの水の神。アナーヒターはアヴェスター語や古代ペルシア語の形で、後にはアナーヒードAnâhîd。前4世紀に小アジアよりアルメニアに至る広い地域にその崇拝が広がり、リューディアLydia ではキュベレーアルテミスと同一視されている。ギリシア神話のアプロディーテー、バビロニアとアッシリア神話のイシュタル、フェニキア神話のアスタルテーに相当する女神である。海と星とを支配し、運命の女神である。

 イランの宗教はきわめて男性中心主義的であるが、このアナーヒターに限っては、主神アフラ・マズダ、軍神ミトラセと共に、ゾロアスター教(マズダイズム)三神の一つである。図像はいずれも宝冠を戴き、ネックレースをつけ、長い上衣をまとい、両乳をあらわし、手には水瓶や柘榴を持つ。これらはすべて多産、子育ての象徴である。
 ゾロアスターの教典アヴェスタのアーバン・ヤシトによると、彼女は汚れなき処女神で、「男性の種と女性の胎と乳を浄める」とあり、結婚する娘達や妊婦の祈祷するところであったという。その名をアルゾヴィ・スーラ・アナーヒター(Ardvi Sura Anahita)といい、「高く、強く、浄きもの」の意であるが、それは「天の川」をさす。彼女はすべての川と水の源泉たる「天の川」をさす。彼女はすべての川と水の源泉たる「天の川」の女神としてと豊穣を司ったが、実際はむしろ子授けの神として庶民の信仰を集めた(鈴木治「アナーヒター女神」、『オリエント史講座3:渦巻く諸宗教』学生社、所収、p.305-306)。

 日本では、観音菩薩の祖形ではないかとして注目されている。