ペラスゴイ人の創造神話における創造女神エウリュノメーのヘビの姿をした夫。グノーシス派の性のシンボルでは、彼は「世界卵」と結婚した「世界ヘビ」であった。古代プリュギアの伝承に従えば、人類の「父」とされ、原初の楽園の「生命の木」に住む聖なるヘビであった。彼はオピオゲネイス(「ヘビから生まれた人々」)と呼ばれる種族の父となった[1]。グノーシス派キリスト教の一派である拝蛇教Ophitesでは、オピーオーンはキリストに同化され、ユダヤにおける同様の一派「ナアセン派(ヘビを崇拝する人々)」 Naassiansでは、エホヴァと同じであるとされた。「大蛇オピーオーン」は、嫉妬深い神の意志に反してまで、「聖なる神秘」を啓示した天界の王であった。
Serpent.
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
クロノスとレアーの時代以前に、エウリュノメーと世界を支配していたが、クロノスに支配権を奪われて、二人はタルタロスに投入された。
オピーオーンまたの名ボレアースは、ヘブライやエジプト系の神話では、蛇身の造物主ということになっている 現に地中海周辺から出土する古代の絵画彫刻には、かたわらにかならず蛇をしたがえている女神の姿がみられる。土から生れたベラスゴイ人というのは、自分ではオピーオーンの牙からおどりでたと主張していたようだが、おそらくはもと「彩色土器」を用いていた新石器時代の種族であったろう。彼らがパレスティナを出てギリシア本土に達したのは前三五〇〇年ごろであった。それから七〇〇年後に、初期のへラス族が、キュクラデス群島をへて小アジアからギリシアへと移動してきてみると、ベラスゴイ人たちがペロポネーソス半島を占領しているのを発見した。しかし、「ベラスゴイ人」という呼称は、いつのまにかヘレーネスが住みつく以前にギリシア地方にいたすべての先住民族をごく大まかに指すことになった。そこでエウリービデースは(ストラボーン・第五書・二・四が引用しているところによれば)、ダナオスと彼の五十人の娘たちがアルゴスの地に移り住んだのにちなんで、このベラスゴイ人たちがダナオス人と名を改めたと述べている。(ヘ一口ドトス・第六書・一三七にみる)彼らの放縦な行為へのかずかずの非難は、たぶんプレ・ヘレーネスの群婚の慣習を指してのことかもしれない。ストラボーンはまた、おなじ文章のなかで、アテーナイの近くに住んでいた種族の通称がベラルゴイ(「こうのとり」)だったと語っているが、おそらくこの鳥が彼らの信仰するトーテムだったのであろう。(グレイヴズ、p.46-47)