京都の自然

自転車で行けるフィールド 宝ヶ池公園・松ヶ崎周辺でのアリの観察

トゲアリ 以前、京大農学部の方とお話ししたことがあるのですが、「私と同じ虫の研究をしているのが東京にいますが、京都の大学は研究室とフィールドの近さという点で とても恵まれています。」 と仰います。仲間の方が観察に行くときは、電車を乗り継いで数時間かかるのに対し、京都では、ちょっとした空き時間に自転車に乗って見に 行けるので、得られる情報の差は大きいと。
さて、宝ヶ池公園は、ジョギングや子供の遊び場として親しまれていますが、私は、ここへアリを観察しに来ること があります。「えっ〜 何でアリ?」と言わないで下さい。すぐ近くにある京都工芸繊維大学には、アリの研究で有名な山岡亮平教授 がおられ、 松ヶ崎周辺は研究フィールドのひとつとなっています。研究の専門的なことは分かりませんが、フェロモンを利用してアリにサッカーをやらせる様子が テレビ放送されたり、アリに映画のワンシーンを演じさせたこと【黒澤明監督 8月の狂詩曲】などは知っています。 宝ヶ池公園で、私が最初に行く場所は、写真のトゲアリの巣(コロニー)です。トゲアリといっても、刺したりする訳ではありませんので怖がる ことはありません。みなさんは、写真のトゲアリのシルエットに興味をそそられませんか? 町なかでよく見かけるアリとはちょっと違うでしょう。例えるなら、 子供の頃に捕まえたミヤマクワガタのような特別の存在を感じています。そんな憧れにも似たトゲアリの存在は、更に「その女王アリを見てみたい!!」 という想いに至るのですが、数年経った今でもその夢は叶えられていません。

トゲアリの女王が見たい

木の洞での営巣 夢の話の続きです。
普段、アリの採取の方法として、朽木や石を裏返すといったことから始めますが、トゲアリの場合、写真のような木の洞 (うろ:根元にできた空洞部分)で営巣している場合が多いので簡単にはいきません。 ですから、トゲアリの場合は木の枝で巣穴を突付いて、コロニーが危険な状態である環境を作り、女王アリが出てくるのを待つといった方法を採っています。 しばらくすると、危険を感じたアリ全体が慌しい動きとなります。移動するアリの群れの中に、もしかしたら女王アリが紛れて出てくるのではないかと凝視するのですが、 今まで大変な時間を費やしたにも関わらず成功したことはありません。(他のアリでの成功例有り) 過去に『枝で突付く作戦』の翌週にコロニーを見に行ったところ、数千匹いたトゲアリが引っ越して一匹も居なくなっていたことがあり、びっくりしました。

役割分担の上手なアリの世界

さなぎを運び出すトゲアリ 木の枝で突付いた時、ワーカーはさまざまな動きをします。もちろん、敵である私にあごを使って攻撃してくるものもいますし、写真のようにさなぎを安全な場所へと 移動していくものもいます。


一生懸命運び続けるのは、コロニー存続の為の本能なのでしょうか。


もし、さなぎを安全な場所へ運び出しているのだとしたら、その安全な場所はどう判断しているのでしょうか? 


それとも・・・ ただ慌てているだけ? 興味が尽きません。

光沢があって艶やかな女王アリ

迫力ある女王アリの存在
女王アリとワーカー 続いての写真はムネアカオオアリです。クロオオアリと並ぶ国内最大種です。左側が働きアリ(ワーカー)で、右側にひと際大きく写っているのが女王アリです。 観察していますと、ワーカーは女王アリの下よく働きます。


ワーカーに関して知られた話ですが、働きアリの法則というのがあります。それは、2:6:2といった比率で、それぞれ

よく働く2・普通6・あまり働かない2を意味しています。どういうことかと言いますと、よく働くアリばかりを集めて精鋭部隊の10を作っても、 その中で、また2:6:2に分かれます。また、あまり働かない2を集めて10にしたとしても、その中で、2:6:2に分かれるといったことです。


果たして人間社会は如何に・・・


関連サイト 日本産アリ類画像データベース2007年版