日本刺繍 森繍

伝統工芸刺繍作家
日本工芸会正会員 森康次 公式ホームページ

質問や疑問に答えて

質問・疑問に答えて

ホームページを開設して10年以上が経ち
様々な問い合わせを頂いております。
重複する質問などもありますので
このページを設置して、所感のような形になりますが
疑問や質問にお答えいたします。
今後も何なりとお問い合わせください。


戦後生まれで、高度経済成長の中で
着物産業の高揚と衰退を、体験してきた生き残りとして
何がよくて何がダメだったのか
次の世代に伝える責任があると考えています。

ミシン刺繍が台頭して
それに対抗する形で相良刺繍がもてはやされ
その相良刺繍が韓国で大量生産され
韓国が経済発展し工賃が上がり、労働力が都会に集中し
繍子さんがいなくなれば中国に移行し、今はベトナムです。

「勝ち組」と「負け組」なんて
稚拙で何とも気分の悪い言葉もありました。
今日では「格差」と言う意味不明な言葉が一人歩きしています。
数字を動かし、伝票操作で多額の収益を上げられる社会。
「ついて行けない」「適応できない」
そのような人間を大量生産する社会。
それはそれで現実なのですから、存在することも認めます。
でしょうが、やはり物を作らなくては、
人間社会は成り立ちません。
豊にもなれません。
毎日の生活が「消費」の上に成り立っているのですから
「生産」に目を向けることです。

利益の独り占め、一人勝ちは長く続きません。
一人の頭では全ては補えません。
「三人寄れば文殊の知恵」とは本当の真理だと痛感しています。
同じ立場で同じ思いで物作りをする者が手を繋ぐときです。
喜びと利益を共有することです。
手を取り合って仲間と分け合うビジネスモデルが拡大中です。
慌てずじっくり、しっかり前を向いて
みんなに呼びかけようと考えています。

お稽古ごとで始めた日本刺繍でも
真剣に続ければ一人前になれます。
始めは趣味の範囲であっても、数年も続ければ
習作も含めて作品だらけになります。
そうなりますと一つ目の壁が立ちはだかります。
「綺麗ね」とほめてもらって、自己満足している域では
解決しないようになります。

自分の作った物が人に好まれ
多少なりとも収入に繋がる方法を考えるようにと
いつも話しています。
私が生業としてきました日本刺繍は
両親から習い、先達から影響を受けたものです。
私が刺繍をしていたということは、
長い時の流れの中で一瞬だけその技術を、お預かりし、
46年間かけてほんの少し膨らませたにに過ぎません。
日本刺繍を習いたいと思う人に伝えるのも
大事な事と考えています。

上賀茂の工房にたくさんの研究生が集まってきます。
一人一人がプロとして一人前になるようにと
そんな思いで一杯です。
伝統工芸は厳しい時代を迎えています。
日本刺繍も例外ではありません。
日本刺繍のいく末を考えると
一人前のプロを育てなくてはなりません。
そのような思いを強くしています。
日本刺繍で生活が成り立っていくように
その筋道を模索するよう話しています。

上賀茂の工房がそのようなことを考えたり、企画したり
話し合ったりする所として、その機能を充分発揮できるよう
諸条件を充実させたいと思っています。