L


ラミアー(Lamiva)

lamia.jpg

 リビアのヘビ女神のギリシア名。このヘビ女神は、メドゥーサネイトアテーナー、アナタ、あるいはブトーとも呼ばれていた[1]。ラミアーは、デルにおいて人間の女性の首を持つヘビの姿で崇められていた「神々の母」、すなわち、バビロニアの母神ラマシュトゥの異形の1つだったと思われる。ラマシュトゥは、カーリーに似た破壊者として恐れられていたが、他方では、「最高の女神」とか「大いなる女王」とも呼ばれていた[2]。ギリシア神話においては、ラミアーはヘーラーの敵対者の1人に数えられた。

 ラテン語のウルガタ聖書では、へブライ語のリリト(反抗的だったアダムの最初の妻)の訳語に、ラミアーを当てた。欽定訳聖書では、ラミアーは「夜の怪物」と訳された。中世になると。ラミアーは魔女の総称になった。 15世紀のドイツの神学者の1人は、ラミアーとは「老婆の姿をしたデーモンたちのことである」と権威をもって断言したのだった[3]point.gifVagina Dentata.


[1]Graves, G. M. 1, 205.
[2]Budge, A. T., 117.
[3]Robbins, 295-96.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 ベーロスとリビュエーとの娘で、ゼウスに愛され、子を産むたびに、ヘーラーが嫉妬して、殺したので、ラミアーは絶望のはてに他の母親の子どもを奪う怪物になったという。ヘーラーはさらに彼女を苦しめるべく、眠りを奪ったので、ゼウスは彼女に眼を外してしまっておくことができるようにしてやり、この間には危険はないが、眠らずに日夜さまよっているときに子どもを狙うのであると。(高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』)

 のちに彼女はエムプーサたち!Empousaの仲間に入り、若い男たちと交わって、彼らが眠っている間にその血を吸うようになった。

 ラミアーは、リビアにおける愛と戦いの女神ネイトのことで、アナタとアテーナーがその別名であるが、アカイア人はこの信仰を禁じた。アルカディアのアルピトとおなじように、おしまいにはこの女神は子どもをおどすためのお化けになってしまった。彼女の名前のラミアーは、ライモス(「食道」)から派生したラミュロス(「貪欲な」)の類語らしく、したがって、婦人についていうときは「淫奔な」という意味であろう。また、彼女の醜い容貌は、ラミアーにつかえる巫女たちが秘教 — 赤ん坊殺しがそのかなめの部分になっている — を行うあいだかぶっていた予防のためのゴルゴーンの仮面であった。ラミアーがその両眼をはずすことができたというのは、おそらくこの女神が英雄に一眼をあたえて、いましも彼にふしぎな眼力をさずけようとするところをえがいた絵にもとづくものであろう。エムプーサたちとは、夢魔のことである。(グレイヴズ、p.295-296)


[画像出典]
Herbert James Draper(1863-1920)
Lamia(1909)
The Lamia who moodily watches the serpent on her forearm.