工程3 パーティングライン処理 大抵のキャスト整形のガレージキットはニ分割した型で整形しているので、型と型の間に隙間がどうしても出来てしまいます。その隙間は当然整形されたパーツに反映されてしまいます。これがパーティングラインと呼ばれる物です パーツとパーツを合わせた「合わせ目」の事をそう呼ぶ人も居ます。言葉の意味としては間違ってはいないのですが、混同を避ける為、ここではパーツを合わせた部分はパーティングラインと呼ばない事にします。 整形時に型がズレていれば、当然パーツにズレが発生しますが、レジンキャストの性質上止む得ない物ですので、不良品では有りません。そう言う物なので諦めて下さい。 パーティングラインを消す方法は色々有るのですが、私は基本的には、紙ヤスリで消えるまで研く方法を取っています。 形は多少変わってしまうのですが、原型自体が手作りなので、周りもある程度削り落としてやれば、違和感は無くなります。パーティングライン上に有るモールドは消えてしまうので、後で彫り直す事になります。ただ、この方法はあまりにも酷い段差に対しては無謀なので、段差の酷い場合は高い方の段差を予めデザインナイフやリューターで削り落としてからかペーパー掛けするかバテで段差をなだらかにすしか有りません。パテに関しては後述します。 パーティング処理の時点でバリも完全に削り落としてやます。 私かパーティングラインを消す時に使う紙やすりは、 以前は3Mの空研ぎ用(研ぐ面がライトグレー)で、240番か320番の物を使用していたのですが、粉塵があまりにも酷い為、現在は3Mの水研ぎ用(研ぐ面が濃いグレー)の600番か500番を水研ぎで使用しています。段差が酷い時には400番や320版、さらに壮絶な段差の場合は水研ぎでは間に合わないので150番の空研ぎ用の紙ヤスリで磨きます。 水研ぎとは、研磨する際に紙やすりを水で浸してから行う方法で、摩擦熱を抑えると同時に削り粉を撒き散らさないと言う効果があります。「傷や気泡が解り難いから使わない」と言う人も結構居ますが、ティッシュペーパーでパーツの余分な水分を拭き取りながら行えば特に問題ないと思います。 紙ヤスリは色々なメーカーのものが有るのですが、番手が同じでもメーカーによって多少荒さが違う様で、3Mが一番きめが細かい様に思います。又、紙やすりは裏紙の硬さで削れ方が違い、裏紙が硬ければ硬いほど良く削れます。ただ、硬い物は曲面に馴染み難いという欠点も有るので一短一長という所でしょうか。 紙ヤスリとは別に研磨用スポンジと言うのも有り、模型用では3Mの物がVOLKSの造形村ブランドと京商から発売されている事もあり有名です。これは元々スポンジに水分を含ませて使う水研ぎ用なのですが、空研ぎも行え、スポンジが曲面になじみ易いと言う非常にいい物で一時は荒い番手の者でパーティングライン処理から使用していたのですが、スポンジの厚みで入り組んだ所は磨き難いという事情もあり、最近は塗装前の仕上げや、塗装面の研磨にしか使用しなくなりました。 紙ヤスリの使い方は実際に使ってみて自分部の手で覚えるしかないので、私が教えられるのは、出来るだけ高速で研く事くらいです。パーティングラインは中々消えないのでイライラすると思いますが、ガレージキット製作の時間の内、かなりの部分を占めるので、気長に行いましょう。 凹んだ所や、V字の谷間に入っているパーティングラインは紙やすりを折ってピンセットで保持したり、爪楊枝等で当て木をしたり、金属製の非常に目の細かいヤスリをつかったりと色々工夫してください。 パーティングラインやバリの処理にモーターツールを使う方法も有ります。 モーターツールと言えば、回転式のリューターが代表的で、以前の製品では低速回転域が存在しなかった為、有る程度のスキルが無いと失敗により手間が増えるのと、リューター自体が5万円以上もする高価なものだったのでお奨めしませんでしたが、最近は低回転もカバーする上、安い製品が増えてきました。特に、ボークスのビルドマスターEVOは0〜35,000回転と低速から高速までカバーして逆回転可能。2.35mmと3mm軸の先端工具が使用可能。フットペダルとダイヤモンドビットが30本付きで24,800円と大変お買い得です。 回転式以外にもプロクソンから発売されいる往復運動式のペンサンダーが有ります。こちらは、専用の紙ヤスリか市販の紙ヤスリやスポンジヤスリを両面テープで貼り付けた先端工具が左右に振動する事により、手研きに近い作業が楽に行える電動工具です。目が粗いヤスリを使えば、リューター並みの削れますし回転式では無い為、リューターの様に削り粉が舞い散りません。電動歯ブラシのブラシ部分をヤスリに置き換えたり、そのコンセプトを商品化しスピンポリッシャーやコードレスポリッシャーがクレオスから発売されていて、幾つか試してみましたが、何れも性能や使い易さの面でペンサンダーに遠く及びませんでした。 パテの使用 パーティングラインが大きな段差であったり、研いたら浅い溝の様になる場合が有ります。これを消す為に全体を削ると大きく形が変わったり、削るのが大変な場合、パテで埋めてやりましょう。 パテ埋めの前に注意事項。 レジンキャストは硬化後、中の成分が徐々に揮発して少しづつ収縮していくので、キットが新しい物だった場合、 パーツを空気に触れるようにしてキャストの状態が安定するまで、大体一ヶ月くらい置いておく必要があります。もし型抜きしてから時間が経っていないパーツにパテを盛り、塗装をしてしまうと、キャスト素材の経時収縮で後々になってからパテや塗装が割れて来ます。完成してから長く飾りたいのなら購入してから1ヶ月は待ってやりましょう。どうしても急ぐ場合はお湯で茹でて、化学反応を促進させる方法もあります。ただ、熱でパーツが柔らかくなり変形し易いので、取り扱いには十分な注意が必要となります。 パテには、ポリバテ(ボリエステルバテ)やエポキシパテ、ラッカーパテ、瞬間接着剤系のバテ、光硬化式等が有りますが、全てのパテがガレージキット製作に使用可能です。但し、同じ種類のパテでも、銘柄によって性能や物性は全く異なりますし、使用用途も異なってきます。 グレーのサーフェイサーを吹く場合はポリパテ(ポリエステルパテ)やエポキシパテ。最近流行りの、アイボリーのキャスト地を生かした塗装をするなら、ワークの白いポリパテか、瞬間接着剤系のアルテコ SSP-HGのパウダーにシアノンDWの組み合わせの様にキャスト素材に近い色のパテを使う事が一般的です。各パテに関してはこちらを参照して下さい。 私自身は、アルテコ712木工用瞬間接着剤を流し込んでから、スプレー式の硬化促進剤で硬化させてパテ代わりにしています。 パテでパーティングラインを埋める前に、段差は前述のペーパー掛けで出来るだけ無くした後(本当は段差をパテで埋めるのは止めておいた方が良いです)、溝状になったパーティングラインをデザインナイフや彫刻刀の丸刀である程度彫ってやって、バテを盛った時に周りとなじみ易いようにしてやる事が大切です。強い角度の溝をパテで埋めた後、紙やすりで研磨すると、元の素材と充填した素材の削れ易さの違いから相当な研磨のスキルがないと段差が生じてしまうのと、研磨時に段差が無くても経年劣化で段差が浮いてくる可能性が在るのでこの作業は必ず行いましょう。 どのパテも付属の説明書を良く読んで、主剤と硬化剤をよく混ぜて、爪楊枝かヘラで、ペーパー掛けが楽になる様に、パテがパーツに馴染む様に、滑らかに盛ってやりましょう。 SSPは爪楊枝等の木製の混ぜ棒を使うと木材の中に含まれる微量の水分と反応して気泡が出来てしまうので、必ずブラスチックや金属製の爪楊枝や棒、ヘラを使いましょう(ブラスチック製の爪楊枝はオススメ)。 大抵のパテは粘性が低いので、一度に思い通りのラインにパテを盛ると言う事は中々出来る物では無いので、数回に分けて盛り付けてやります。その際は先に盛り付けたバテが完全に硬化する前にデザインナイフで余分に盛ったバテをきり落とし、爪楊枝等で軽く押しても動揺しないくらいパテが硬化したら次のパテを盛り付けると言う事を繰り返します。 パテを希望するラインよりも少し多めに盛り付けられたら、説明書の記述に従って完全硬化を待ちましょう。完全硬化する前に紙やすりで研くとボロボロとパテが崩れ落ちる事があります。 完全硬化後に紙やすりで研いて整形を行います。ポリパテの場合、キャストよりも柔らかいので、前述の様に削り過ぎてしまってバテの部分が凹んでしまう事があるので、削り過ぎない様に、ある程度表面が整う少し前くらいから、力をかけ過ぎない様に注意しましょう。削り過ぎても、またパテ盛りしてやれば済む事なので、それほど神経質になる事は有りません。 |