「万人のディケ−」。運命の母、オルペウスの霊魂を受付取った冥界の女神を表すオルペウス教の名前。ギリシアの著作者たちは、この女神をヘビに噛まれて、死の国へ送られたオルペウスの妻と入れ替え、オルぺウスは妻を追って、死の国へ行ったと言った。しかしこの話は非常に起源が新しい人為的神話であった。エウリュデイケーの死の原型と思われる話が出ているイコンは、オルベウスが冥界に入ってヘビを連れたヘカテーに迎えられるところを表していたようだ。エウリュデイケーの「草の中のヘビ」は冥界の女神の神聖な動物で、つねに変わらぬお伴であった[1]。
中世の詩人たちは、このギリシアの女神をイングランドの女王、エウロディスと考えた。この女王の夫が神から生まれたウインチェスター王、オルフェオ卿であった[2]。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
「広く裁く女」の意。ギリシア神話の系譜や伝説の間隙を埋めるために、多くの女性に与えられている名前であるが、オルペウスの妻としての名前が最も名高い。
オルペウスの妻エウリュディケーが蛇にかまれて死に、その後オルぺウスが彼女を日光のもとにつれもどそうとして失敗した話は、後世の神話にだけ出てくる。どうもこの話はあやまりつたえられたものらしく、オルぺウスがタルタロスで歓迎をうけ、ここで彼の歌の調べに魅せられた蛇の女神へカテーまたはアグリオペー(「兇悪な顔つき」)がオルぺウスの秘教会に加わったすべての死者たちに特権を与えるところを描いたいくつかの絵や、ディオニューソス オルぺウスはこの神に仕える祭司だった が彼の母のセメレーをさがしもとめてタルタロスにくだってゆくところを描いたいくつかの絵などを読みちがえたのであろう。また、蛇にかまれて死んだのはエウリュディケーの生贄たちであって、エウリュディケー自身ではなかった。(グレイヴズ、p.170-171)
月の女神の称号であるエウリュノメー(「ひろい支配」あるいは「ひろい彷徨」)は、彼女が天と地の支配者であることを意味し、エウリュビアーEujrubiva(「ひろい力」)は海の支配者であることを、エウリュディケー(「ひろい裁き」)は蛇を手にした地下の冥府の支配者であることを、それぞれ意味しているように思われる。エウリュディケーとしての月の女神には、たくさんの男性が人身御供にあげられたが、そのとき彼らが蝮の毒で殺されたことはあきらかである。(グレイヴズ、p.188)