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Pentacle(五芒星形)

pentacle.jpg リンゴを輪切りにしたとき、その芯が形造る五荘星形は、女神コレーの象徴であった。この五芒星形(ペンタクル、ペンタグラム)は、ピュタゴラス学派の神秘主義者に崇拝され、彼らはこれをペンタルファ(「5回交錯する生誕-文字」)と呼んだ[1]。五芒星形は「生命」あるいは「健康」を意味するとされた[2]。あるものはこれを「イシュタル(あるいはアセト〔イーシス〕、あるいはアセトの冥界の双子ネベト=ヘウト〔ネフティス〕)の星」と呼んだ。エジプトでは5つの鋭い先端を持つ星は冥界子宮を表した[3]

 守護あるいは治癒の護符として五芒星形を用いることは、バビロンではごく普通に行われ、しばしば中味を保存するため壼に描かれた。「7つの印章」として知られる護符は、聖なるしるしの第1に五芒星形を挙げている。ユダヤ-キリスト教の伝承によると、印章は神の秘密の名を表すと考えられ、五芒星形はそれらの中の主要なもので、ソロモン王の魔法の指輪にも彫られていた[4]。そのため五芒星形は、ときには誤ってソロモンの印章と呼ばれた。

 しかし、五芒星形はユダヤの神よりも、異教の神々とより密接に結びついていた。鋭い先端の1つが真下にある五芒星形は「のある神」を表し、新プラトーン主義の哲学者は、これをペンタモルフ(「5つの姿を持つ神」)と呼んだ[5]。この神は、4種ののある動物、雄ウシ雄ヒツジ、雄ヤギ、雄ジカの姿をとるとともに、人間の姿にもなって現れた。

 異教徒のケルト族は、エジプト人同様、五芒星形を、彼らがモーガンと呼ぶ冥界の女神のしるしとして崇めた。太陽英雄ガーウェインは、女神に敬意を表して、彼の血のような赤い色の盾に五芒星形をつけた[6]

 錬金術の魔術師は、小宇宙である人間の模型として五芒星形を用いた。男性の像は宇宙を表す円の内部に置かれた。手と足と頭は、描かれた五芒星形の示す各先端で円と接し、生殖器はまさに円の中央に位置した[7]。このイメージは、人間は「5つの星」に支配される小宇宙であるというフィルミクス・マテルヌスの見解に関連があった[8]

 他の一筆描きで構成される図形と同様に、五芒星形は悪霊を防ぐ力があると信じられた。霊は線の切れ目である「門」を必要としたからである。したがって五芒星形はしばしぱ呪術的な封じ込めを仕切る際、とくに祈祷のときに用いられた。その結果、中世のキリスト教側の人々は、「悪魔のしるし」、「魔女の十字架」、「魔法使いの星」、「悪鬼の十字架」、「魔女の足」などの名で、五芒星形を呼ぶようになった[9]オオカミ人間は足のかかとやてのひらに五芒星形をつけていると考えられた。この考え方はプッダのてのひらに現れる五弁のハスの花と比較できるかもしれない[10]

 魔術の書物に絶えず記されている五芒星形はおそらくスラヴ民族の魔女にも影響を与えたと思われる。スラヴの魔女は、患者の身体の「五芒星形を測る」ことによって病を治そうとした。病に苦しむ者は立って「小宇宙としての人間」を表す姿勢(大の字型)をとり、1本の糸が足からあごへ、両手の中指から中へ、それぞれの手から反対側の足へ張りめぐらされた。「測定値の差から病気の診断と見通しが行われ、測定したのちにはナイフで麻紐を切断することによって、病が除去された。麻紐の1片は焼かれて、患者はその煙を吸い込んだ。灰は新鮮な水に入れて、患者はそれを薬として飲んだ」[11]

 五芒星形を用いる魔術のまじないは今も存在する。ジプシーは今もなお、リンゴを輪切りにし、コレー、すなわち「処女の五芒星形」を顕現させ、それを「知恵の星」と呼んでいる[12]


[1]Hornung, 212.
[2]Pepper & Wilcock, 23.
[3]Budge, E.L., 75.
[4]budge, A.T., 40.
[5]Wedeck, 121.
[6]Loomis, 342.
[7]Lehner, 77.
[8]Wedeck, 236.
[9]de Lys, 478.
[10]Ross, 104.
[11]Gifford, 87-88.
[12]Derlon, 157.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)