「破壊する者」を意味し、三相一体の女神デーメーテールの「老婆」Croneの相。デーメーテールの他のペルソナは、「処女コレーKore」と「母親(維持者)デーメーテール-プルートーン」である。三相の神々が、回る三角形(デーメーテールを象徴するdelta)の3つの頂点のように、周期的に互いの後を継いだ。そのためコレーとペルセポネーはしばしば混同されて、同ーの女神と考えられるようになった。プルートーンがコレー-ペルセポネーを誘拐する寓話は後世の創作である。ペルセポネーは、もと女性の神であったプルートーンが男性神となるずっと以前から、冥界の女王であった。
オルペウス教の神秘主義者は、彼女を、祝福された死者の女神として崇拝し、定式文句の祈りで女神に呼びかけた。「今、我は来りて、聖なるペルセポネーに哀願す。その恵みをもって女神が、我を、『神聖となりし者』の席に受け容れ給わんことを」。ペルセポネーは答えた。「幸せにして祝福されし者よ。汝は死すべき者ではなく神となるであろう」[1]。彼女は天界と冥界(エーリュシオンとタルタロス)に入る鍵を持っており、したがってミトラ教の「父の中の父」pater patrum、および、キリスト教で彼と対応関係にあるぺテロPeterに先んじる鍵の保持者であった[2]。
ペルセポネーは、ギリシア・ローマ時代に書かれた、ペルセポネーの冥界への下降および春に行われる年ごとの地上への帰還を語るエレウシース神話よりも、かなり以前から存在していた。彼女は実は、ヘカテーあるいはへルの別名であり、冥界の支配者であった。これはプリシュニの名のもとに、「破壊者である母神」カーリーが冥界を支配したのと同じであり、ペルセポネーのエトルリアにおける名前であるペルシプネイの語源は、プリシュニであったとも考えられる。ローマ人は彼女をプロセルピナと呼んだ。彼女はこの名のもとに、「女悪魔の女王」として、キリスト教の伝承の中で伝えられた[3]。「破壊者カーリー」のように、彼女は太古からの根源的な「死の女神」であった。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
ペルセパッサPersevfassaあるいはペルセパッタPersevfattaともいい、一般にコレーKovrh〔乙女〕とも呼ばれていた。
デーメーテールの娘。バーバラ・ウォーカーは、ペルセポネー-デーメーテール-プルートーンPlutonで三相一体の女神だという。
オルペウス教のなかに奇妙な話がある。ゼウスは大蛇の姿となって彼女と交わり、ザグレウスが生まれたというのである。
デーメーテールとペルセポネーはエレウシースをはじめ、ギリシアの地の秘教の二大女神であって、コレーの名で敬い恐れられていた。彼女の名前が上記のごとくにさまざまな形で現れているのは、おそらくギリシア先住民族より借用したことに由来するらしい。(『ギリシア・ローマ神話辞典』)
*画像の魅惑的な女性は、Dante Gabriel Rossetti作の"Proserpine"(1874) である。手にしているザクロ(pomegranate)は死と再生を象徴する。
コレー-ペルセポネーは、冥界で7粒のザクロの実を食べたため、地上界へ完全には復帰することが出来なくなった(オヴィディウス『転身物語』第5巻537以下)。