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Gunas(3色のグナ)

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 「撚り糸」の意で、白・赤・黒の3色の運命の糸を指す。タントラの象徴体系では、この3色は、創造者、維持者、破壊者、あるいは、誕生と生とを与える者という三相で顕現する「女神プラクリティ」(すなわち、カーリー Kali)を表していた[1]。処女-創造者はサットヴァで白、母親-維持者はラジャスで赤、老婆-破壊者はタマスで黒であり、以上の三者が一体になって、「純質、激質、翳(エイ)質」が連続して循環する様相を象徴していた[2]

 『シュヴェーターシュヴァタラ・ウパニシャッド』によると、白・赤・黒は、カーリーの化身の1つである女神マーヤーの色だった。サットヴァは「輝きに満ちている静謐」を意味し、永遠に存在するものの意のサットに由来していた」[3]。ラジャスは王族の血の色、すなわち王(ラジ)の色であると同時に、ドゥルガー・カーリーのように、王妃であり戦闘の女神でもある母親が、「火と燃える激しい動き、荒々しさ、情熱」に駆り立てられているときの色でもあった。カーリーが持っていた数々の名前のうちの1つアルナは、自分の経血で赤く染めた粘土から人類を創造したあのメソポタミアの女神アールールの語源であったとも考えられる[4]。老婆の色タマスは、「身に受ける重みと暗黒」、すなわち、墓場の中の暗闇を表していた[5]

 グナは、東洋だけに限られたものではなかった。同じ白・赤・黒の3色の撚り糸は、ヨーロッパの三相一体の女神とも関連があった。テオクリトス、オウィディウス、ティブルス、ホラティウスなど、ギリシア・ローマの詩人たちは口をそろえて、生命の糸の聖なる色は白・赤・黒であると言った[6]。これらの糸を司ったのが運命の三女神であり、この運命の三女神の原型になったのが、『マハーバーラタ』†に描かれている三体の女神のような東洋的イメージだった。『マハーバーラタ』の三体の女神たちは、冥界の「ヘビの都」で、夜と昼のヴェールを織りあげており、このヴェールでは、光と闇の循環を表す白糸と黒糸が、血のように赤い生命の糸で連結されていた[7]

Mahabharata
 インドの叙事詩で、 4世紀から10世紀にかけて蒐集された歴史・伝説の資料にもとづいている。有名なバガヴアッド・ギーターは、この書の一部である。

 シュメール人の神殿は、白・赤・黒の粘土製円錐形モザイクで飾られていた[8]。また、この3色は、「ミンブレス陶器」の名で知られている新世界(北アメリカ)の焼き物の装飾にも用いられていた。ケルトの神話では、冥界のイヌにあたるアンヌーンの猟犬は身体の色が3色であり、聖杯の城の乙女たちも、まるでカーリーか、あるいはアイルランド流に言えばケレたちと同じように、白・赤・黒の3色を付与されていた。point.gifKelle.

 白・赤・黒の3色のグナは、おとぎ話にもしばしば現れるモチーフである。たとえば、グリム童話の『雪白姫』(白雪姫)の雪白は、母親-王妃、老婆-魔女と三相一体の関係にある処女の相を擬人化したお姫さまであると同時に、彼女自身が、「雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒壇のような黒い髪」を持っていて、女神の三相を表す3つの色を体現していた。雪白は、聖杯英雄ペレドゥールのあの漆黒の髪と白と紅の肌を持った聖なる愛人(女神の化身)の直系の子孫だった。この3つの色(雪の中のカラスの羽と血)を一目見ただけで、ぺレドゥールは、愛人の姿に想いをはせて聖なる悦惚境に陥り、その状態から目覚めることができなかったという[9]。グリム童話の『雪白とバラ紅』も同じ根から発しており、そこでは、ケルト神話に登場する色白のエイトネとバラ色のフェデリムの場合と同じように、「処女」と「母親」の色が、1つに結合されていた。この2つの色の結びつきは、聖母マリアの場合にも、彼女に捧げられたユリバラという形でくり返されていた[10]。処女の色と母親の色は古代エジプトの場合も2人の女王ネヘベト〔ネクベト〕とブトーによって1つに結合されており、前者は白い冠、後者は赤い冠を戴いていた。中東における中世の秘教では、白と赤は「純潔と血の色」として知られていた[11]

 老婆の色である黒は、処女や母親を表す2色とは別々に使われることが多かったが、しかし、クリスマスの朝課(真夜中すぎの祈祷)の際にキリスト教の祭壇の上に掛けられる3枚のヴェールの色は、白・赤・黒の3色で、異教の三相一体の色がそのまま使われていた[12]。ホメーロスの時代から延々と18世紀に至るまで、冥界の女神に捧げる生贄には、黒い色の動物が用いられた[13]。スラヴ人は、ウマの頭を持ったの神ヴォロスに黒いウマを捧げた。ヴォロスは確たる理由もないままキリスト教に取り入れられ、聖ヴラスになった[14]。ジプシーの女たちは葬式には赤と黒の衣装を着用し、母親と老婆の属性を1つに結びつけた[15]。しかし、中国の場合は白が葬式の色で、これは再生を暗示していた。昔から伝えられているヨーロッパのバラッドの中には、3色すべてをに関連づけているものもある。地上から死者が旅立つときは、白・赤・黒の3羽の雄鶏が、ときをつくって先触れするとされていた[16]

 白・赤・黒の聖なる3色は、数百にものぼる神話や民間伝承や、更にはキリスト教の風習の中にまで頻繁に現れていたので、ダンテは、この3つの色を彼が書いた地獄の中心に据え、悪魔の本質を象徴するものとした。すなわち、ルシフェルには頭が3つあり、その色は白と赤と黒だった[17]


[1]Avalon, 328-29.
[2]Silberer, 280.
[3]Mahanirvanatantra, xxxiii.
[4]Avalon, 146.
[5]Rawson, E. A., 160.
[6]Wedeck, 66.
[7]Lethaby, 238.
[8]Whaitehouse, 60.
[9]Goodrich, 63-66.
[10]Spence, 56.
[11]MacKenzie, 117.
[12]Miles, 93.
[13]Omer, Odyssey.
[14]Larousse, 298.
[15]Groome, 144.
[16]Wimberly, 104.
[17]Campbell, C. M., 426.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)


[画像出典]
Jornal Hare Krsna Brasil