そのまま使える 建築英語表現

Ready-to-use Architectural English Expressions

山嵜 一也/著

設計者が海外クライアントに設計のアイデアを効果的かつ正確に伝えるためのテキスト。「デザインの魅力の伝え方」「プレゼンテーション・テクニック」「現場のコミュニケーション」の会話例とコツを伝授。〈例文〉〈キーフレーズ〉〈ボキャブラリー〉〈咄嗟のQ&A〉から成る見開き構成、設計プロセスと場面に沿った全85項目。

A5判・208頁・定価 本体2400円+税
ISBN978-4-7615-2629-0
2016/10/01

 

評 : 吉田 知剛 (光井純&アソシエーツ建築設計事務所)

「設計業務における英語でのコミュニケーションの必要性」

 ビジネスのグローバル化が進み、日本でも企業の英語公用語化が社会的な関心を集めていますが、この建築業界においても英語を使った業務の必然性が高まっていると実感しています。今後の国内需要の伸び悩みと、2020年の東京オリンピックを契機としたインバウンド需要の高まりを考えると、建築英語の必要性はますます高まると推測しています。
 わたしが勤務している光井純&アソシエーツ建築設計事務所においても、外資系企業からの引き合いやアジアを中心とした業務が年々増加しつつあり、外国籍スタッフも多く在籍しています。プロジェクトやチーム編成によっては、英語でのミーティングをおこなうことも日常的になりつつあり、突然、海外のクライアントとのプロジェクトに参加することになったり、国際電話の対応をしなければならなかったりと状況は様々です。

アメリカ事務所でのシーザーペリ(左手前)との打ち合わせ 中央が弊社代表の光井純

 わたしがこの設計事務所で働き始め、3年目の昨年にはじめての海外現場を韓国で経験しました。このプロジェクトでは、デザインの提案から施工に至るまでの時間が極端に短く、レスポンスを素早くおこなう必要があります。しかしその一方で、デザインの意図が正確に伝わらないとそのまま施工されてしまうといったリスクもあり、英語表現でのスケッチや図面の作成には非常に苦労しました。
 このプロジェクトがはじめての海外経験だったわたしは、およそ1ヵ月の滞在の間、英語、韓国語、日本語を駆使して業務をおこないました。連日現場やミーティングで発生するわからない単語や言い回しは、なるべく形とセットで覚えるようにスケッチを残し、業務終了後に繰り返し見返すなどしてなんとか乗り切りました。

韓国での打ち合わせの様子

 自身の海外現場での経験から、英語でのやり取りでは、日本語で発想したことをすべて伝えようとするのではなく、多少稚拙な表現になったとしても、シンプルにコアイメージを伝えることが必要だと感じました。また、日本人同士であっても、専門的な内容を意思疎通させることは難しいですが、海外では施工における正確さの深度が日本とは大きく異なるため、やや過剰と思われるくらいのデザイン確認が施工後の出来につながると実感できました。
 韓国のプロジェクト中には、山嵜一也さんの『そのまま使える 建築英語表現』という書籍の制作にも協力しました。実際に現場で必要性を感じた納まりや素材など、現場で頻出の表現については、図解付きで盛り込んでもらっています。現在実務で建築英語が必要なビジネスパーソンはもちろん、これから海外を目指す学生にも良書であり、著者が現場でのお守りのような本と述べているように、是非、海外現場にも持っていってもらいたい一冊だと思います。


担当編集者より

英会話は現場で身に着けるのが手っ取り早いとはいえ、「なんだそんな簡単に言えたのか!」「この一言が言えれば、うまく伝わったのに!」という、シンプルで役立つフレーズもたくさんあると思います。そんなフレーズを、役立ちそうな場面設定から一つ一つのフレーズ選びまで、著者山嵜さんがご自身の10年以上の海外経験を振り返りながら積み上げてできたのがこの本です。コンペやプレゼンテーション、あるいは交渉や施工の現場で、ぜひご活用ください。

(井口)