北欧の建築

エレメント&ディテール

小泉隆/著

北欧を代表する建築家の作品から、日本では知られていない建築家の名作、話題の現代建築まで、多数のカラー写真と図面で巡るシンプルで美しく機能的なディテール。光、色、構造、素材、窓、階段などのデザイン・エレメントを切り口に、A・アールト、E・G・アスプルンド、A・ヤコブセンなど建築家50人の77作品を紹介。

A5判・240頁・定価 本体3200円+税
ISBN978-4-7615-3232-1
2017/05/01

 

評 : 益子義弘 (建築家・東京藝術大学名誉教授)

「言葉を超えた多くの写真が捉えた、対象の内に潜む芯」

 小泉さんの本を手にするのは今回の著作で三冊目になる。建築に織り込まれた北の風土固有の光をテーマとする「フィンランド 光の旅」、この中の中心的存在である建築家アールトに焦点を絞り、その多様な空間の成り立ちや光の操作のディテールを見届けようとする「アルヴァル・アールト 光と建築」、そして今回の、視野を北欧全体に広げた「北欧の建築 エレメント&ディテール」である。収録された美しいシーンに惹かれてページをたどった。
 添えられた文章は、この世界に通底する特色を小泉視点で束ねた5つの要点を章立てとして、とても簡潔である。収録された個々の事例も、説明的でなく、見るべき方向を示唆するにとどめ、やはりその中心をなす魅力は、言葉を超えた多くの写真にある。
  この「北欧の建築」は、ガイドブックも意図されて編まれているのだが、写し撮られたそれぞれのシーンは、著者の創作的なまなざしが掬い出し対象の内に潜む芯をとらえた「写芯集」だとも言えよう。