場のデザインを仕事にする

建築×不動産×テクノロジーでつくる未来

中村真広×村上浩輝×ツクルバ/著

建築的思考とビジネス的思考、テクノロジー的思考を掛けあわせ、コワーキングスペース、パーティクリエイション、リノベーション住宅のオンラインマーケット等の事業を展開するツクルバ。6年前に2人で起業、建築、不動産、IT、デザイン等多様なメンバーが集い「場の発明」を仕事にしてきた、スピード感溢れるドキュメント。

四六判・208頁・定価 本体1800円+税
ISBN978-4-7615-1366-5
2017/07/05

 

評 : 太刀川瑛弼 (NOSIGNER代表/「デザインと革新」著者)

「建築を越境する挑戦者たち」

この本を書いたツクルバの中村さんは建築家。そして村上さんは不動産事業のプロフェッショナル。 二人がツクルバを創業し、もがきながら事業創出していく姿がこの本には描かれています。

事業創出にはデザインが必要だと、最近よく聞きますよね。もっと言えば独創的な事業創出そのものが「デザイン」と呼ばれているのが現代の経営です。

経営とデザインの間にはくっきりとした線があるように見えるけれど、その線をグッと拡大してみると、その間には無段階のグラデーションがあります。その領域と領域のせめぎ合いこそは、新しい溶岩が噴出する、海溝の火山のようなエネルギーが満ちた場所。領域の間にはデザイナーや経営者にとっての新しいフロンティアがたくさん眠っているということでもあります。イノベーションと越境性は、いつでも表裏一体なのです。

いままで建築家を含めてデザイナーはクオリティの最後の門番でした。しかしムーブメントの最初のツクリテが、これからのデザイナー像と肉薄していくのだと思います。最初か。最後か。プロセスか、結果か。運動する未完成か、純粋たる完成品か。デザインの技術は変わらなくとも、その用法にますます大きな過去のデザインとの違いが出てくるでしょう。
ツクルバは、前者を体現している新しいスタイルの建築家像かもしれません。

ツクルバがこれから実験していく未来を楽しみにしつつ、僕たちもまた新しい運動をツクルぞ!という気持ちを起こさせる、清々しい本でした。