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ユーノー(Juno)

juno.gif  ローマの太母で、この名はサビーニー・エトルリアの女神ウニUniから派生した。ウニは、yoni (「女陰」)や Uni-verse (「字宙」) と同語源の「三相ー体の女神」だった。女神ユーノーは、さまざまな属性とさまざまな発現形態を持っていた。したがって、ときによると、それらは別々の女神であると誤解されている。ユーノー・フォルトゥーナは「運命の女神」、ユーノー・ソスピタは「維持する者」、ユーノー・レギナは「天界の女王」だった。ユーノー・ルキナは「天界の光の女神」、ユーノー・モネタは「助言者にして忠告者」であり、ユーノー・マルティアリスはマルスの処女母(virgin mother)だった。ユーノー・カプロティナあるいはユーノー・フェプルアは、「性愛の女神」、ユーノー・ポプロニアは「民衆の母」だった。以上のほかにも、さまざまなユーノーがいた[1]

 ローマの女たちは、各人が女神の精霊の一部を体現していた。女性の霊魂ユーノーjunoで、男性の霊魂ゲニウスgeniusと対応関係にあった[2]。のちに語彙にまで父権制が浸透すると、ユーノーという語は除かれてゲニウスだりが残り、かくして女性は、その霊魂を奪われてしまった。おそらくそのためと思われるが、中世初期の教会会議では、女性は霊魂を持っていないと主張されることがあった。

 「結婚」と「家族」の守護女神としてユーノーをたたえるために、 6Juneが彼女に捧げられた。したがって今日でも、 6は伝統的に婚礼のとされている。

 ユーノーには恐ろしい側面もあった。戦闘の女神として、彼女は子供たちを守る母親の闘争心を表しており、ローマ人の定義によると、「勇敢」の権化だった。したがって、「維持者にして、母親たちの女王であるユーノー」 Juno Seispitei Matri Reginaeは、戦争の精霊とみなされていた[3]。ユーノーのこの称号は、ヒンズー教の戦争女神ドゥルガーの称号と同じだった。ドゥルガーも「維持者にして、母親たちの首領」と言われていた[4]。インド・ヨーロッパ人の間に見られるさまざまな形態の女神の場合と同じように、ユーノーもまた、潜在的な形で遍在する同ーの「女神」が、各地各様に顕現しているその1つの姿にすぎなかったのである。

 ユーノーの聖なるシンボルの中には、クジャクpeacock、タカラガイ cowrieの貝殻、そして当然のことながら、女陰の普通的なエンブレムであるユリ(すなわち、ハス)があった。自らの聖なるユリを用いて、ユーノーはユピテルの力を全然借りずにマルスをみごもった。したがって、ユーノーは「聖処女ユーノー」と言われたのである[5]。3弁のユリは、かつてはユーノーの単性生殖能力を表していたが、のちに聖母マリアによって継承され、今もなおマリアのものとされている。



[1]Larousse, 203-4.; Rose, 217.
[2]Reinach, 102.; Rose, 193.
[3]Dumézil, 297.
[4]O'Flaherty, 49.
[5]Larousse, 202.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



ローマ・神話〕 ユーノーは、ローマの神、ユピテルの正妻である。ギリシア神話には、正確に彼女に対応するものはない。最も近いのは、ゼウスの正妻ヘーラーである。ジャン・ボージュによれば、このユーノーという名前は、〈生命力〉を意味する、インド・ヨーロッパ語の語源を持っている。体力の頂点にある青年Juvenisと重なり合う。「ローマでは、ユーノーは、豊穣の女神であり、女王でもある。彼女は、結婚と出産とを司る。3朔日の、マトロナリア(妻)Matronaliaの大祭は、彼女に捧げられていた」(BEAG、232)。

 彼女は、軍神の母である。軍神は、収穫の守護者でもある。この女神の特質としては、その他に次のようなものがあげられる。

 ルペルクス(牧神)たちが、細長い布で作った雄ヤギの皮は、「ユーノーのマント」と呼ばれていた。人々は、毎の朔日に、彼女に雌ブタと雌の小羊を生贄として捧げた。女神は、もともとは、の周期を意味していた。元気で、戦闘的であり、生殖力に富んだ〈女性原理〉のシンボルである。

 彼女は、とくに、結婚した婦人と正統な出生の保護者である。人々は、彼の儀式には、「すべて結び目を解いて」出席した。「というのも、出席者の体に、ひも、帯、結び目などがあると、女性の分娩がうまくいかないかもしれないからである」(GRIF、241)。(『世界シンボル大事典』)


画像出典:
  Dr. Vollmer's Woerterbuch der Mythologie aller Voelker. Stuttgart: Hoffmann'sche Verlagsbuchhandlung, 1874.
 <http://www.pantheon.org/areas/gallery/mythology/europe/roman/juno.html>

 右手に持っているのがリンガLingam左手に持っているのがヨーニYoniの象徴であろうか……?